野反湖で出会えたヤマトキソウです。 数はとても少なく、
野反湖の友人・中村一雄さんに自生地を教えていただかなか
ったら、見ることはできなかったと思います。
茎は高さ10〜20cm。茎頂に上を向いた花を1個つけます。
トキソウの仲間ですが、花はほとんど開きません。 とても
控えめな印象を受けるランです。
たくさんいるのであればとにかく... たった1株だけ
が他の植物に埋もれるように咲いていても、なかなか
見つけられないものですね。
彼らが生きる場所は、図鑑にもネット上の多くのサ
イトにも、「山地の日当たりのよい草地に生える」と
あります。 実際、上の写真の株はそんな場所にいま
した。 小さな峠の近くで、日当たりはとてもよく、
どちらかと言えば乾燥した場所。 図鑑の通りです...
ところが!
ところが、野反湖の別の場所で出会えた株は、なんと
湿原の中に咲いていたのです。 上の写真では、左下手
前に蕾の状態の株もいます。 水っけの多い湿原で、歩
くと足が少し沈み込んでしまいます。
乾燥した場所が大雨などで一時的に湿原状態になった
のでは、ありません。 その証拠に、背景に写り込んで
いる赤っぽい植物は、辺り一面にいるモウセンゴケです。
モウセンゴケはミズゴケが生えるような湿地にいて、乾
燥した場所では生きられません。 このことから、この
場所は定常的に湿地であると言えます。
咲き始めのトキソウではないか?とも疑いました。
しかし、花の大きさは1cmを少し上回るほどでトキソウ
より小さく、トキソウのように横向きではなく上を向い
ており、葉はやや厚く肉質な感じであり、全体的な姿か
らも、ヤマトキソウに見えます。 開花時期もトキソウ
の5〜7月とは少し異なり8月中旬近くでした。
花の付け根と先端部にうっすらと紅色が入り、やはり
ヤマトキソウに見えます。 これが正しければ、「ヤマ
トキソウは山地の日当たりのよい草地に多く生えるが、
稀に湿原に生えることもある」となりますね!
開花してもこの程度です。 背萼片と側萼片は線状
披針形で長さ約12mm。 側花弁は萼片と同長ですが
幅が広い。 唇弁は長楕円形で萼片よりやや短い。
3裂しますが、この角度からは見えませんね。 中裂
片には肉質の突起が密生しますが、その一部が垣間
見えます。 どうしても近づけない場所であったので、
この角度の撮影でした。
2013.01.25 掲載
土屋 克己 (日曜日, 30 6月 2013 20:26)
志賀高原でも湿地にもうせんごけと一緒にはえていますよ。
hanasanpo (日曜日, 30 6月 2013 23:33)
土屋さん、貴重な情報をありがとうございます!
志賀高原でも同様な環境にいるとのことで、野反湖のヤマトキソウが変わり者ではないことがわかり安心しました。
再度ネットで調べ直してみましたが、多くのサイトで「日当たりのよい草地に生える」とされており、実際そのような場所で咲いている写真が掲載されていましたが、中には「日当たりのよい草地や湿地の周縁部に生える」としているサイトも見つかりました。ヤマトキソウは、いろいろな環境に適応しているのですね。