いきなり花友さん撮影の写真で始まりましたが、私たちは#2の、開花直前の花しか見ることができませんでした。 2日後に、同じ花を愛知県の花友さんに撮影していただいたのが#1です。 わずか2日間で開花し、そして既に少し終わりかけている雰囲気です。 どうやらムギランの花の寿命は、とても短いようです。 花の観察にベストな期間は、一日も続かないのかも知れません。
#3・#4は、#1・#2と同様に、同じ場所・時間に撮影したものです(#3と#4は別の花です)。 ムギランは開花しても半開状で、すぐに閉じて結実するそうです(*1)。 もし見頃の状態の花に出逢えたら、かなり運がよいと言えるでしょう。
ムギランは、常緑樹林内の木の幹や岩に着生する、常緑の多年草です。 湿度の高い場所に生育します。 #5はムギランの各部の説明です。
①根茎(匍匐茎)は細くて硬く、横に這い、節ごとに根を出します(②)。 根茎は
着生している岩に密着せず、少し浮いているように見えました。 根が立ち上がり
根茎を浮かせているようにも見えました。
③根茎の根を出した部分に、偽球茎をつけます。 偽球茎の高さは、5〜8mm。
偽球茎は卵形で、表面はしわがよっています。
④葉は偽球茎の先端に、葉を1個つけます。 葉は卵形で長さ1〜3cm、幅6〜8mm、
肉厚でやや硬い。 中央縦方向に筋が入っており(主脈なのか?)、これに沿って
少しだけ谷型に折れたようになっている葉もありました。
⑤葉は古くなると基部で折れて落ちますが、偽球茎はその後数年間は残り、水や養分
を蓄える役割を果たすそうです。 株の古い部分には、葉を落とした偽球茎が並ぶ
ことになり、その様子を麦粒に見立てたことが、麦蘭の名の由来だそうです。
実は、葉の形と、縦に筋が入ることから、葉が麦の実に似ていることが名の由来で
あろうと勝手に思っていたのですが、違いました。
⑥ここでは垂直に近い岩に、苔、地衣類、そしてマメヅタと混生していました。
マメヅタは遠目では紛らわしいですが、近くに寄れば簡単に区別できました。
マメヅタの葉はムギランより大きく、円形に近く、色はより明るい緑色で、扁平で
す。 さらにはムギランの葉にある、縦に走る筋もないので、見分けるのは容易で
した。
花茎は偽球茎の基部から出て、黄白色の花をつけます。 よい写真が撮れなかったのですが、#6に示しました。 花の数については、図鑑により記述が異なりました。
・花を1個つける(*1)
・1−3個の花をつける(*2)
・ふつう1個つける(*3)
私たちは、花1個と2個をつけている状態を観察できました(#6は2個)。
前述のように、偽球茎の表面にはしわがあります。 また先端につく葉との境界部(矢印部)は明瞭で、古くなった葉はここから脱落します。
#5 ④の説明で、葉が縦の筋に沿って、少し折れたようになっている場合があると書きました。 よく観察すると、どうも葉は折りたたまれた形で新芽を出すので、若い葉はみなそのようになっているようです(矢印部)。 その後葉の成長とともに平開し、さらには反り返るようになるのでしょう。
最後になりましたが、ムギランの自生する様子です。 赤い円内は、#2と#4の花があります。 小さく、目立ちませんね! 小種名の inconspucuum は、「目立たない」という意味で、花が葉に隠れるように咲くことから名付けられたそうですが(*2)、納得できます。
この場所は環境が変わってしまい、かなり数を減らしてしまっているとのことです。 なんとかまた復活してほしいものです。
< 引用・参考文献、及び外部サイト >
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http://www.yamakei.co.jp/products/2811070210.html
山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.95
http://www.bun-ichi.co.jp//tabid/57/pdid/978-4-8299-8117-7/catid/1/Default.aspx
文一総合出版 2015年5月1日 初版第1刷 p.90
http://www.bun-ichi.co.jp/
*3 日本の野生植物 草本 1 単子葉類
平凡社 1982年1月20日 初版第1刷 p.231
*4 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%AE%E3%83%A9%E3%83%B3
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2017.05.21 掲載