野反湖にはホソバノキソチドリとキソチドリの両方がいます。 キソチドリの葉が細いものがホソバノキソチドリではなく、両種は別種なのですが、両種とも緑色の花をつけ、花の数、大きさや草姿もよく似ています。
ホソバノキソチドリは側花弁が背萼片とともに蕊柱を囲むようになっています。 両腕をバンサイのように真上に上げ、肘から先を緩やかに内向きに曲げ、両手の指の先端同士がつくかつかないかまで内側に曲げると、ホソバノキソチドリのようになります。 一方、キソチドリは両腕を真上に上げ、そのままにした形、つまり「バンザイ」の形です。
以上のように、パッと見て識別するには、側花弁の形を見ればよい... 今までそう思っていました。 しかし、それが正しくなかったことがわかりました。 上の写真の植物は、実はキソチドリだと思って撮影したものなのです。 側花弁がまっすぐ立ってバンザイの形をしているので、詳しく確かめずに撮ってしまいました。 老眼には細かなところはよく見えなかったという事情もあります。 後でじっくり見たら、キソチドリの顔ではなく、ホソバノキソチドリでした。
「バンザイ」しているホソバノキソチドリも、いたのです。
今一度、上の写真でホソバノキソチドリの花の各部の名称を確認しておきます。 葯は花粉塊が納められた器官で、蕊柱の一部です。
改めて比較してみました。 左上はメインメージでも使った写真ですが、ホソバノキソチドリの今までのイメージ通りの花です。 側花弁が背萼片の縁に沿うかのように内側に湾曲し、蕊柱を包んでいます。 左右の側花弁の先端の間はわずかに離れています。 側花弁の長さは、わずかに背萼片より長いように見えます。 花全体として見ると、先端部は丸っこく、オタマジャクシの頭のような印象です。 今まで見たホソバノキソチドリは、みんなこのようであったと思います。
対して、右上は今回見ることができた花で、側花弁はほぼ直立して湾曲せず、このため左右の先端は大きく離れています。 またこのため側花弁の長さも背萼片より大分長く見えます。 花全体としての印象は、側萼片が飛び出しているためツンツンした印象です。 それは、キソチドリの印象と近いのです。
たったこれだけのこと、と言ってしまえばそれまでですが、似た印象の花が多いツレサギソウ属の植物においては、わずかな形状の差が同定の決め手になることもあるので、無視できないことだと思います。 今回は危うく別種と見誤るところだったので「思い込み」は危険だな、と反省しきりです。
最後に、比較用にキソチドリの写真を載せておきます。
2015.08.09 掲載
2015.08.15 キソチドリの写真を追加