山梨県の低山でハクウンランを見たとの情報を花友さんからいただき、早速見に出掛けました。 以前見たことのあるオオハクウンランと、どれほど違うのか? と興味津々です。 林道脇の林に分け入ります。 いました、ハクウンラン! 南向きであるが木々が生い茂りやや暗い林床に点々と咲いていました。
「小さい!」が第一印象でした。 オオハクウンランも小さな植物ですが、それより一回りは小さい感じを受けました。 両者はとてもよく似ていますが、染色体数が本種:n=13、オオハクウンラン:n=20 と異なるそうです。
高さは5〜13cmと図鑑(*1)にはありますが、ここで見ることができた株は、すべて5〜6cmほど。 大きめの株はいませんでした。 茎は下部が地面を匍匐(ほふく)し、その先がほぼ垂直に立ち上がります。 地面付近に小さな葉を数個つけます。
上の左はハクウンランの葉、右はオオハクウンランの葉です。 縮尺が異なるのでこの写真で大きさの比較はできません。 現物はハクウンランの方が小型に見えました。 ハクウンラン葉の形状は卵円形で長さ8〜10mmほど。 オオハクウンランは卵状長楕円形で、長さ10〜15mm程度。 オオハクウンランの葉は縁がやや波打つ場合がありました。 どちらも短い柄があり、基部は茎を抱きます。
花は1〜数個つけます。 まず面白い形をした白色の唇弁に目が行きます。 爪部(そうぶ)は細く、舷部は急に横に広がります。 まるで白い袴を履いて相撲の四股を踏んでいるような形状が印象的です。
茎や萼片は緑色で、白っぽい軟毛が密生しています。 側萼片は背萼片より長く、基部は合着し、唇弁の基部を包みます。 唇弁の基部は2つの半球状の膨らみのある距となります。 写真ではその片側の距が見えます。
オオハクウンランの茎や萼片の色は淡褐色ですが、緑色の個体もいて、それをシロバナオオハクウンランとする説もあります。 色に注目すると、ハクウンランはシロバナオオハクウンランの方によく似ています。
判別しにくいですが、花柄子房にねじれはないように見えます。 ハクウンランは花柄子房をねじらずに唇弁を下側につける「ストレート・唇弁下側タイプ」のランのようです。
図鑑には「側花弁は背萼片に密着する」とありましたが、密着しているようには見えませんでした。 少なくとも先端部においては、背萼片と側花弁は離れて見えます。
唇弁爪部の両脇に数個の小突起があります(赤矢印部)。 これはオオハクウンランにも見られました(右の写真)。
両者はこの小突起の形状・大きさや、唇弁先端部の形状に差異がありますが、観察した個体数が少ないので、それぞれの特徴と言えるのかわかりません。 今後出会える度に観察したいと思います。
情報を提供下さいました北信州の花友さんに、この場を借りて御礼申し上げます。
*1 平凡社 日本の野生植物Ⅰ 1982年
2015.01.12 掲載