常緑広葉樹林の林床に生える多年草です。 葉は披針形で革質、
光沢があり、先端は尖り、長い柄があります。 長さは柄も含め
て20〜30cm。 葉の先端付近の縁には微鋸歯があるとのことで
すが、それは今回の観察ではわかりませんでした。 和名は、葉
をマキ科の常緑高木のナギに見立てたものだそうです。
静岡県の花友のWさんのご厚意でようやく見ることができた、
お初の花です。 残念ながらやや時期が遅かったようで、花の一
部が傷み始めてしまっていたり、萼片が湾曲したりしていました
が、ナギランの雰囲気は十分感じ取ることができました。
花茎は高さ10〜15cm。本州の関東南部以西の太平洋側〜沖縄県に
分布します。 やや暗く、時折、木々の間から日が差し込むような場
所でした。 ナギランは普通葉を持つランですが、部分的に近従属栄
養性であり、主に自動自家受粉を行っているっそうです。
小さな里山なのですが道はなく、傾斜もきつい場所がありました。
時折小雨が降る蒸し暑い日だったので、けっこう汗をかきました。
苞は膜質で線状披針形、先は尖ります。 背萼片・側萼片は
線状披針形で、長さ24mm前後,幅は約3mm、先は尖ります。
萼片は湾曲していますが、元気な時期はきっともっとピン!と
していたと思います。
花柄子房にねじれは見られません。 ナギランは花柄子房を
ねじらずに唇弁を下側につける、「ストレート・唇弁下側タイ
プ」のランです。
側花弁は狭長楕円形で萼片よりやや短いですが、幅は広いです。
左右の上方から蕊柱を囲むようになっています。 唇弁は倒卵状
長楕円形で、ごく浅く3裂します。 中裂片の先端は三角形に急
に細くなり、先端は鈍頭です。 唇弁は白色で、内面に紫色の斑
紋があります。
上はほぼ正面から見た花です。 蕊柱にも細い紫色の条が
入っていることがわかりました。 側花弁の内側にも、中央
部に縦に紫色の条がありました。
花が傷んでおり見えにくいですが、側花弁内側の条は
先端部までは伸びてなく、途中で終わっていました。
茎の基部付近はこのような感じでした。
ナギランの新芽です。 平たく折り
たたまれているように見えました。
Wさんのご実家の裏山や、近所の里山で見ることができました。 Wさんとは一度だけ花散策にご一緒させていただき、その後はメールのやりとりだけでしたが、今回はご実家への私たちの宿泊からナギランの案内まで、大変お世話になりました。 この場を借り改めて御礼申し上げます。
2015.01.04 掲載