テガタチドリはよい状態のものに出会えていなかったのですが、今年
(2012年)、ちょうど見頃の状態の花を楽しむことができました。
標高2千メートルを超える草原に咲いていました。
花序は下から上に開花していきます。 咲き始め〜中盤は紡錘
形をしています。 苞は披針形で花とほぼ同じ長さ、中ほどで湾
曲しながら真上を向きます。上の写真では花が開花していない花
序の上部でツンツン立って目立っています。
距は細長く後ろに伸びます。 図鑑には「やや反曲する(上に
反り返る)」とあり、そのような部分もありましたが、やや垂れ
下がり気味になる距が多く見られました。
やや密につく花、長い距、そしてツンツンしている苞があるの
で、全体が賑やかな印象になるのだと思います。
花が終盤になり茎頂部が開花する頃には、下部の
花は枯れ始め、花序の印象が少し変わります。
根が掌状なのでこの名がついたそうです。 茎はやや太く、高さ
30〜60cm。 7〜8月頃、淡紅紫色の花をやや密につけます。
更に標高が高い草原でも見ることができました。
花は美しい淡紅紫色。 背萼片は卵形で長さ4〜5mm。 側花弁は斜卵形で背萼片より短く、立ち上がって蕊柱を囲むようになります。 側花弁はやや倒卵形の楕円形で、左右に開き、わずかに下垂します。
唇弁は卵状くさび形で長さ6〜8mm、先端で3裂します。 中裂片と側裂片の大きさは同じで、どちらも円頭で可愛らしい印象を受けました。 中裂片には、ごく薄く白っぽい縦線が2本走ります。 距は線形で長さ15〜20mmと長く、花の後方に伸びます。
以上のように、萼片と花弁は全体的に丸みを帯びた印象で、細長く鋭い感じの苞・距と絶妙なコントラストを成していると思いました。
テガタチドリの花柄子房(→部)は、180°ねじれて、唇弁が花の
下側になります。 テガタチドリは「標準タイプ」のランです。
テガタチドリには、ノビネチドリとハクサンチドリという少し似た花がいます。 特にノビネチドリとは葉の形状が大きく違うので、重要な識別ポイントになります。 残念ながら葉がきれいに写った写真がありませんでしたが、その中でマシなものを2枚、上に並べました。
葉は茎の中部以下に4〜6個が互生し、広線形です。 長さは10〜20cmで、幅は1.0〜2.5cmで、ノビネチドリと比べると小型です。 葉の縁は、ノビネチドリのように波打ちません。 葉の中央部が凹んで縦に二つ折りのようになるのも特徴です。 基部は茎を抱きます。
上は2008年に初めて見ることができたテガタチドリです。 見頃の時期は過ぎてしまっています。 野反湖を知り尽くす友人のNさんもテガタチドリは見たことがないということでしたが、ある文献でテガタチドリを見たという記述を見つけました。 以後、気をつけていたのですが、見つけることはできなかったのです。
この日は昔いた会社の上司、先輩、後輩の3方と共に野反湖を案内していたのですが、先輩が、「コレ、何?」と指さした先にいたのがこの株だったのです。 やはり野反湖にもテガタチドリはいたのでした。 それがわかったのは嬉しかったのですが、花にお詳しいとは言えない先輩に先に見つけられてしまい、ちょっと複雑な気分を味わったのでした。
2012.12.01 掲載
テガタチドリ、ノビネチドリ、ハクサンチドリの3種を比較!
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2015年7月19日 リトライ! タカネサギソウ p.1/2
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