ツレサギソウを見ることができました! 仲間のツレサギソウ
属のいくつかは見ることができていましたが、本家(?)のツレサ
ギソウは未見だったのです。 実は昨年6月に同じ場所に来てい
たのですが時期が遅く、「成れの果て」の姿でした。 今回は少
し早すぎるかなと思いながら向かいましたが、咲き出していてく
れました! やはりお初のラン科はうれしいな〜!
日当たりのよい草地や湿った林下に生える多年草。 この場所
は午前中は日当たりがよいが、昼ごろから半日陰になり、午後は
完全に日陰になりそうな場所でした。 他にもいろいろな植物が
生え、やや急な斜面で、地面は湿った感じでした。標高約270m。
草丈は30〜50cm。 今回出会った株は、45cmほどでした。
葉は5〜8葉が互生し、下方の3〜5葉は狭長楕円形で長さ10〜
20cm、幅4〜7cmで先端はとがります。 基部は短い鞘となり
ます。上部の2〜3葉は小型で、広線形。
茎上部の穂状花序に白色の花をつけます。 個々の花はと
ても清楚な感じ。 長い唇弁と距、そして花より長い苞があ
るので、全体としては賑やかで豪華な印象を受けました。
名の由来は「花がサギソウに似て、たくさんついて連なっ
ているので、連(れ)鷺草」と。 う〜ん... 確かに白色だし
たくさんの鳥がいるようにも見えるけど... サギソウに似
てますか? あまり似ているようには見えないなあ... サギ
ソウは本当に特殊な形をしているし...。
それはともかく、色や形が似ていて識別が難しいツレサ
ギソウ属。 花をじっくり見ていきたいと思います。
長い唇弁と距が特徴なので、それらがよく見える側面から。
上の写真では2個の花が縦に並んでいます。
唇弁は長さ13〜15mm。 ほぼ真下にまっすぐ伸び、先端部は
やや前方に向きます。 ツレサギソウ属の唇弁は後方に反り返る
ことが多いので、先端部が前方に向く特徴は識別の参考になるか
も知れませんね。
距は後方から前方に向けて美しい弧を描いて下垂します。 長
さは3〜4cmあり、ツレサギソウ属の中では最大級と思います。
但しこれは花序の下部の成熟した花の話です。 花は花序の下か
ら咲き出すので、上にいくほど若い。 若い花はここまで距が長
くなっていない場合があります。 上の写真は、花序の一番下の
成熟した花です。
苞は花より長く、線状披針形。 花と苞のどちらが長いかは、
一つの識別ポイントです。 しかし決め手にはなりません。
上の写真にマウスでポインターを重ねると、各部を図示します。
花を正面から見ます。 背萼片は楕円形のお椀を伏せたような
形で長さ7〜8mm。 側萼片は斜卵形で長さ8mm。 側萼片は
後方に反るようになっているので正面から見ると短く見えます。
側花弁は半切三角形で萼片より少し短く、背萼片とともにかぶ
と(兜)を作り、花の中心部を守ります。
さらに花の中心部に寄ります。 各部は同じような色で識別
しにくいので、線を引いたりしました。 マウスでポインター
を写真に重ねて下さいね。
ここで一番重要なのは「唇弁基部の両側にある小突起」
です。 図鑑によると、この小突起は「ツレサギソウ属の中で
は異色である」という表現をしています。 つまり、他のツレ
サギソウ属には無い特徴なのだ思います。 同定する上で、非
常に重要なポイントになると思います。
2つの穴のように見えるのは距の入り口です(実際には一つ
の穴)。 その両脇に、距の入り口を少し隠すかのように、こ
れまた小さな突起があります。 こちらの小突起はツレサギソ
ウに特有のものなのか? わかりません。 どなたかご存知で
したら、教えてちょ〜。
黄色っぽく縦長のものが2個並んでいます。 これは花粉塊
です。 花粉塊と距の入り口の真ん中あたりに淡黄緑色の蕊柱
がありますが、短くてちょっとわかりにくいです。
「唇弁基部両側の小突起」は重要と思ったので、もう1枚、
写真を掲載します。 でも、本当にちっこい突起だな〜、
老眼が入り始めたオジサンにはキツイです。 拡大鏡を使
うか、写真に取って大きくしないと見えませんなあ。 上
の写真では蕊柱も図示しました。
数メートル離れた場所には、まだほとんどの花が
蕾の状態の株がありました。 あえて少し時期をず
らして咲くのか、あるいは栄養や日照条件の違いな
のか。
新しいランに出会ったら、個人的にぜひ確かめてみたいのは
花柄子房のねじれの有無です。 ところがツレサギソウの開花
した株では、苞、側萼片や距に完璧なまでに隠されてしまい、
さっぱり花柄子房が観察できませんでした。
しかし、近くにいた開花前の若い株は、花が未熟であったの
でなんとか花柄子房を観察できました。 これでもややわかり
にくいですが、花柄子房の背萼片の付け根左側の筋を追ってい
くと、基部付近では右側に来ている様子がわかります。 つま
り、ツレサギソウは花柄子房を180°ねじらせて唇弁を下側につ
ける、「標準タイプ」のランであるとわかりました。
茎がない株がありました。 今年はまだ花を咲かせないのでしょう。
葉の裏面の様子です。
お初のランに出会えて、幸運でした。 このような植物が
たくさん生きることができる環境が増えることを願います。
2013.05.25 掲載
BOGGY (日曜日, 26 5月 2013 18:19)
今晩は。お久しぶりです。
ツレサギソウの写真拝見して、一見アレッ!これトンボソウみたい・・・と思いましたが、トンボソウはツレサギソウのお仲間だったのですね。
市内の低山にもトンボソウは咲いてるので、身近に感じていたのです。
先週、今年初めておくちゃんの案内で、南アルプス林道で、シナノコザクラとホテイランを見てきました。両方とも初見の花だったので感激しました。
リポートを書く時間がなくて困っています。
hanasanpo (月曜日, 27 5月 2013 01:44)
BOGGYさん、こんばんは!
トンボソウは見たことはあるのですが、状態がよくないときばかり。このためまだ専用ページがありません。お近くで見れるとは、うらやましいです!
シナノコザクラとホテイランを見られたのですね。どちらも素晴らしく魅了される花ですよね! ホテイランは日本に咲く野生ランの中でももっとも美しいランの一つと思います。
今年はぜひBOGGYさんとおくちゃんの花散策に参加させていただきたいな〜!
室井郁夫 (土曜日, 14 5月 2016 18:49)
昨日、高尾で見ました。
HiroKen (土曜日, 14 5月 2016 19:39)
高尾にもいると聞いたことはありますが、場所は知りません。
丁度時期になり、咲き始めたのですね。
明日にでも、このページに掲載したツレサギソウが咲く場所に見に行ってみようと思います。