亜高山帯の針葉樹林下に生える、高さ15〜20cmの多年草です。 細い茎の中央付近に、2個の葉を対生状につけます。 葉は腎心形で、主脈が白っぽく見えます。 葉の長さは15〜30mm、幅20〜30mmで、縁がやや波打っていました。 花は透明感のある淡緑色で、8〜9月にまばらに5〜10花つけます。 北海道と本州の関東地方北部・中部地方に分布します。
写真は花の上部を中心に撮影したので、葉が茎の下部に
ついているように見えます。 実際は、中央付近について
います。 葉の光沢は、あまりありませんでした。
長らく「高嶺の花」でなかなか姿を現してくれなかったのですが、
とうとう出会えました。 小さなクモがいました。 ということは、
この花を訪れる送粉者の昆虫ががいるということですね。
この透明感溢れる花が見たかった。 いかにも深山に咲くランの雰囲気をです。
ほぼ真上を向いて立つのが背萼片。 その左右に線形の側花弁が斜め上向きに立ちます。 そして左右に腕を広げたように見える、側萼片。 側萼片の透明感が最も美しい。 唇弁は長さ6〜8mmで、先端が2裂し、縁には尾毛があります。 本当に細かい毛なので、見えにくいかも知れません。 唇弁の中央には縦に蜜腺のようなものが見えました。
本種(とアオフタバラン)には、ミヤマフタバランやヒメフタバランに見られるような、唇弁基部の耳状裂片(突起)がないことも特徴です。
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花を側面から見ると、アオフタバランによく似ていると思いました。 茎には白っぽい短毛が密生しています。 苞は卵状披針形で長さ1〜2mm。 萼片は挟長楕円形、鈍頭で、長さは1〜2mmです。 唇弁は前方に突き出します。
このランは花柄と子房の境界が明確です。 花柄にねじれは見られないようなので、本種は花柄をねじらずに唇弁を下側につける「ストレート・唇弁下側タイプ」のランです。 アオフタバランは不明瞭であったので暫定的に同じく「ストレート・唇弁下側タイプ」としたのですが、本種の結果からアオフタバランの判断は正しかったと思いました。
ぜひとも逆光で観察したい花です。 花の下に小型のカメラを
差し込み撮影しました。 唇弁の先端が欠けてしまっていたのが、
少し残念。
ずっと探していたのですが、「高嶺の花」でなかなか出会えない花でした。 今回は富士山の探索に続き、今年2回めの探索。 2日間の日程を組んだものの、初日は見つけられず、またダメかとうなだれました。 2日目の探索では、運良く自生地に詳しい方と出会うことができ、その方が私たちを案内して下さったのです。 ようやくタカネフタバランと初対面を果たすことができました。 ご厚意に本当に感謝です。
この方とは以前この山系の別の場所でもお会いしていました。 2度あることは3度あると言いますから、またどこかでお会いできる日が楽しみです。
2015.01.18 掲載