別のランを探しに来て、偶然見つけました! しかしつい最近
まで、スズムシソウとしていました。 この花を見る2週間前に
東京都の山で初めてスズムシソウに出会うことができ、この日も
ほんの2時間前に、別の場所でスズムシソウを見ていました。
花がそっくりなので、スズムシソウと思い込んでしまったのです。
しかし前の2箇所で見たスズムシソウより明らかに大きかった
のと、Dairy-Hiroダスのコメント欄に「山梨県にはセイタカスズ
ムシソウなるものがいるそうですよ」と入れて下さった方がいた
ので、ずっと引っかかるものがありました。今回調べ直した結果、
この花はセイタカスズムシソウである、との結論に至りました。
お初の花に出会えていたのに気づかないとは、大失態! 日頃の
勉強不足が露呈してしまいました。 改めて図鑑とにらめっこして、
スズムシソウとの相違点をピックアップしてみました(下の表)。
用語は図鑑から引用しています。
黄色の文字は、明確な差異として認めることができた項目です。
比較項目 | スズムシソウ | セイタカスズムシソウ |
茎の高さ | 10〜20cm | 20〜40cm |
花の数 | 10個内外 | 多数(観察個体は27個) |
花の大きさ | − | スズムシソウより小さい |
苞の形状、長さ | 卵状三角形、1〜2mm | 卵状三角形、1〜1.5mm |
萼片の形状、長さ | 広線形、鋭頭、1〜1.5cm | 線状披針形、鈍頭、8〜9mm |
唇弁 | 倒卵形、円頭、微凸端 |
倒卵形、円頭、微凸端、 縁に細歯牙 |
蕊柱の長さ | 6mm |
2.5mm |
花柄子房のねじれ | 有り(180°) |
有り(180°) |
葉の特徴 | 二次脈が網状に浮く |
− (セイタカにも見られる) |
生育地 | 山地の樹林化 | 山地の林下の岩上 |
花期 | 4〜6月 | 6〜7月 |
茎の高さと花の数の違いだけで、気づくべきでしたね〜。 栄養状態のよいスズムシソウかと思ってました。m(_ _)m 図鑑や多くのサイトで「スズムシソウより花が小さい」とありますが、並んで咲いている訳ではないし、細かく寸法など測っていないので、これはわからない(開き直り!)。 苞の長さの0.3mmの差なんて、わかろうはずもありません、蕊柱の長さもしかり(完全に開き直り!)。
下の写真は形状の比較です。 スケールは適当なので、大きさの比較はできません。 ほとんど差異がわかりません。 背萼片の曲がり方が異なりますが、単に個体差かも知れず、これを識別ポイントとはできないのでは。
尚、両種とも花柄子房を180°ねじらせて唇弁を下側につける、「標準タイプ」のランです。
背萼片の先端の形状が「鋭頭」と「鈍頭」、要するに尖っているか丸まっているかですが、これは写真で見てなんとかわかりました! 下の2枚の写真は背萼片の形状に注目し比較するものです。 PCでご覧の方はマウスでポインターを重ねると背萼片部分が拡大します。 スマホの方はタップして下さい。
■スズムシソウ:背萼片は基部から先端付近にかけて少しづつ幅が広くなり、先端部で急に狭くなって、先端は尖った感じです(鋭頭)。
■セイタカスズムシソウ:背萼片は基部から先端付近まであまり幅が変わらず、先端部はやや丸っこい感じです(鈍頭)。
確かに差異はあり、識別ポイントになり得ると思います。 しかし微妙な差異であり、フィールドで肉眼で見て判断できるのか、自信はありません(老眼なのできっと見えない... ルーペで見ればわかるかな?)。
上の写真では、唇弁の形状にも差異があることに気づきました。 セイタカスズムシソウの方が幅が広く、円形に近いと思います。 しかしこれも識別ポイントとなり得るのか不明です。 今後の課題です。
図鑑には「セイタカスズムシソウの唇弁の縁には細歯牙がある」とあります。 細歯牙とは細かなギザギザのことでしょうか。 しかしセイタカスズムシソウ固有の特徴であるとは書いてありません。 事実、スズムシソウの唇弁の縁にも細かなギザギザはあったので、両者の識別ポイントにはなり得ません。
図鑑などに、スズムシソウの葉は網目模様の2次脈が目立つので、セイタカスズムシソウと識別できるとあります。 確かにスズムシソウの葉の2次脈は目立つのですが、セイタカスズムシソウにも2次脈があるので、識別ポイントとするのは、私たちのような素人には困難であると感じました。 上の写真ではピントが合っている右側の葉の奥側に網目模様の2次脈が見えます。
最後に自生地の環境ですが、東京都と山梨県のスズムシソウは、両方ともやや薄暗い針葉樹林下で、地面は落ち葉の積もった柔らかい土でした。
これに対し、セイタカスズムシソウは明るい落葉樹林下で、地面はゴツゴツした岩の上に薄く土が堆積したような場所でした。 両者は姿は似ていても、生育に適した環境は異なるようです。
これだけ比較したので、もうスズムシソウと見誤ることはない...かな?
ところでここでは Liparis japonica とし独立種としましたが、Liparis lilifolia var. japonica としスズムシソウの変種として扱う考え方もあるようです。 また四国や九州には、唇弁が四角っぽかったり、緑色をしていたりと、同種とは思えない花がいるようです。 これらの植物は、いずれ新しい亜種として発表されることになるのかも知れません。
今回はスズムシソウとの比較に重点を置いたページとなりましたが、花の構造などは、よく似たスズムシソウで調べたので、よかったら参考にして下さい。
2014.10.09 掲載
2015.08.15 花柄子房のねじれとラン・タイプに関する記述を追加
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ゆき (日曜日, 09 7月 2017 16:06)
こんにちは、hiroさん、Kenさん、セイタカ鈴虫草、写真ありがとうございます、花の数が、多いのも、特徴的ところですね、普通の鈴虫草も、いいですね。以前、新聞で、富士山周辺に、大型に、なるクモキリ草の写真をみました、独自の遺伝子をもった、地域性の変異個体でしょうか、花は、小さく花の多い雰囲気です。ランのお花は、特に、変化が、
あって、不思議ですね。
Ken (日曜日, 09 7月 2017 18:54)
ゆきさん、こんにちは。いつもありがとうございます。
このページの写真のセイタカの自生地は、昨年緑地内の土木工事の残土置き場にされ、山盛りの土に埋まってしまいました。本当に残念なことです。緑地の管理者に、もう少し植物への配慮があったらと思いました。富士山近辺にいるという大型のクモキリソウ、いつか見てみたいものです! ランは本当に不思議な植物ですね。興味が尽きません。