地生または着生の多年草です。 花期は5〜7月。 北海道、本州、四国、九州に分布します。 多くは地生ですが、稀に朽木や岩の上の苔に着生します。
2007年に野反湖の友人であり自然観察の師匠でもあるNさんが見つけた花を案内いただき、初めて見ることができました。 何株かが密生し、一斉に花を咲かせていました。 変わった形のランに大興奮。 大変気に入ってしまい、以来「ジガちゃん」と呼んで親しんでいます。
花茎の数を数えると8株ほどありそうです。 花茎の高さは8〜20cm。 葉は2個つきます。 野反湖ではガレた場所の近くの半日陰となるような樹林下で見ることができました。
今気づきましたが、ジガバチソウは群馬県・栃木県・長野県で
それぞれ2007年・2009年・2011年に見ることができましたが、
撮影日は7月8日・11日・10日と、同じような時期でした。この
時期が旬なのかも知れませんね。
花色は暗紫褐色から淡緑色と変化に富みます。 それぞれクロ
ジガバチソウ(クロジガ)、アオジガバチソウ(アオジガ)と呼
ぶそうですが、その中間的な色合いの花も多くいます。 上の写
真は色が濃い個体、下の写真は紫褐色がほとんど入らない淡緑色
の個体です。 トップの2枚の写真は、これらの中間的な色合いと
言えます。
淡緑色の個体も形状はまったく同じです。 葉は
広卵形でやや鈍頭、長さ3〜8cm、幅2〜4cmで、
縁はやや波うちます。 横に走る2次脈が顕著で、
網目模様に見えます。
野反湖には、アオジガとクロジガが一緒に咲いている場所がありました。
正面から見たジガバチソウの花は、まるで踊っている人のようにも見えます!
ラン科なので、萼片と花弁が3個づつあります。 側萼片と
背萼片は線形で長さ10〜12mm。 2個の側萼片は前方に突き
出すようになり、背萼片は直立し中ほどから前方に緩く湾曲
します。 側花弁は糸状で長さ8〜10mm。 やや下垂し、先
端は尖ります。
唇弁は長さ6〜8mm、基部から1/3ほどでカクン!と屈曲し
先は下垂し、先端は尾状になり、やや尖ります。 屈曲部の両
端は突起状になります。 暗紫褐色の条線が縦に走りますが、
その色が薄く目立たない個体もいます。
蕊柱は長さ約2mm。 図鑑には「ほとんど翼がない」とあり
ますが、両側に明確な鈎状の翼がありました。 先端の淡黄色
の部分は葯です。
真横から見ると唇弁の曲がり具合がよくわかります。
直線と曲線が調和し、なかなかカッチョイイ花です。
ところで、唇弁と蕊柱の基部にある、黄緑色の膨らみ
は何でしょう? 蜜腺というか蜜腺体というか...?
気になります。 下に写真をもう1枚。
この黄緑色の部分は何でしょう? 光沢がありゼリーのように
見えます。 所有する図鑑では言及されていません。 ネットで
40サイトほど探してみましたが、これについて触れているサイト
はありせんでした。
たった1つだけ、私と同じように「コレは何?」と疑問を持たれ
ている方のサイトがヒットしましたが、残念ながらそのサイトは
閉鎖されていました。
この「メロン・ゼリー」の正体をご存知の方は、ぜひお教え下
さい。 このページの下にあるコメント欄に記入していただける
とありがたいです。 よろしくお願いします。
ジガバチソウの花柄子房には、180°のねじれが有ります。
ジガバチソウは、花柄子房が180°ねじれて唇弁が花の下側
に位置する、「標準タイプ」のランです。
ところで、図鑑やネットに「クモキリソウに似る」と書
いてあるのをよく見かけます。 しかし果たして本当に似
ているのでしょうか? 2種を並べて、比較してみました。
.
ジガバチソウとクモキリソウの比較
全体的な雰囲気は、茎の基部に大きめの葉を2個つけるという点では、似ていると言えます。 緑色の茎に稜があるという共通点もあります。
しかし、ジガバチソウは花被片に直線的な部分が多く全体的にツンツンしているのに対して、クモキリソウは曲線的な部分が多くモシャモシャした感じです。植物体全体から受ける印象はずいぶん違うと思います。
葉の大きさは、成長過程や栄養状態で変わるので、比較対象になりません。
ジガバチソウの葉は縦方向の主脈が目立たず、横方向の2次脈が目立ちます。
クモキリソウの葉にも2次脈は見えますが、あまり目立たず、縦方向の主脈が目立ちます。
両者とも全縁ですが縁が波打ちます。 上の写真で比較すると、ジガバチソウはやや大きく緩やかに波打ち、クモキリソウは細かく鋭く波打っています。
花の形状の比較です。 背萼片は、ジガバチソウは前方に曲がり先端は蕊柱より前に来ます。 クモキリソウではほぼ直立し、わずかに前方に湾曲しますが、先端は蕊柱の後方にあります。
側萼片は、ジガバチソウはほぼまっすぐに前方に伸び、唇弁の先端より前に飛び出します。 クモキリソウでは斜め前方に伸び、唇弁の前には出ません。
側花弁は、ジガバチソウはほぼ直線で、やや下垂し、曲がる場合も軽く折れるような形で曲がります。 これに対しクモキリソウは基部から先端にかけて緩やかに湾曲し、下垂します。
唇弁は、ジガバチソウは基部から1/3ほどで大きく屈曲し、先は下垂しますが後ろに反り返らず、先端は細まり尾状になります。 また暗紫色の縦の条線があります。
クモキリソウの唇弁は大きく後方に反り返り、先端部は花の正面から見えないか、見えにくい状態となります。 先端は尾状にならず、楕円形です。 条線はなく、中央に1本、縦に浅く凹んだ溝があります。 この溝はジガバチソウにはありません。
以上のように、両者には各部で大きな相違点があり、よく観察すれば識別するのに悩むことはないと思います。 いつも悩まされているキク科やスミレ科の花と比べたら、はるかにわかり易いです。 そんなワケで、「ジガバチソウとクモキリソウは似ているゾ」というご意見には、素直に賛同できないのです...。
2011.11.28 掲載
karinn (水曜日, 05 8月 2015 06:48)
わかりやすく、非常に参考になりました。
今までもやもやしていたものが、吹っ切れたように思います。
これからは、同定に積極的に ? … 参加できるかも!!
毎回、毎回、ありがとうございました。
Ken (水曜日, 05 8月 2015 09:41)
karinnさん、いつもご覧頂きありがとうございます。
少しでもお役に立てて幸いです。
自分でもなかなかわからなかったので、このページを作りました。
花の名前がわかると、一段と親しみが湧くと思います。
これからもどうぞ気軽に遊びに来てください。
銀爺 (日曜日, 16 8月 2015 08:35)
初お邪魔します、手前自己満足で1つの山に見せられ
足かけ20年整備等を行っています、その甲斐か?解りませんが
天女花も現在約10個所以上で保護を行っています。
15日に整備に走るとehh~と驚く群落に遭遇、20年目で初です。
ジガバチソウか?クモキリソウか?他の野生花か?解る範囲で
お願いします、当方のトップにサムネイルで張り付けてあります。
HiroKenのKen (日曜日, 16 8月 2015 10:10)
銀爺さん、いらっしゃいませ。
HP拝見しました。銀杏峯は初めて知りました。自然豊かで、植物の種類も豊富な
お山なのですね。天女花もたくさんいるようで、素晴らしいですね。
20年も整備されているとのこと、このお山のことは知り尽くされているのでしょうね。
9月に若狭湾方面に行く予定なので、足を延ばさせればよいなと思いました。
さて、お写真を拝見しましたが、全体の姿から、クモキリソウ属ではなく、
ツレサギソウ属ではないか?と思いました。
発見された標高はわかりませんが、葉の形状や時期から、ジンバイソウの可能性が
あると思います。 当サイトにはまだジンバイソウのページはありませんので、
図鑑などで調べてみて下さい。
花はまだ未開花のようですね。気になりますので、開花した状態の写真も、
ぜひ掲載お願いします。
銀爺 (日曜日, 16 8月 2015 16:58)
早々の返答有り難う御座います。
海抜1,000m 近辺です。
ジンバイソウ早速調べました、多分そうだと思います。
天女花は約4年前から開花始まり
現在実生を、幾つも確認しております。
サルメンエビネ、6株まで増えましたが
盗掘で現在細々3株です。
ヤマシャクも可成り繁殖始めています。
山頂極楽平、お花畑周回ルートは
ザゼンソウに始まり、雪の前まで
何か花開いています。
HiroKenのKen (日曜日, 16 8月 2015 20:12)
正体がわかってよかったですね!
銀杏峯は植生が豊かで、とても貴重な場所だと思います。
これからも守って上げて下さい。
銀爺 (日曜日, 23 8月 2015 14:41)
HiroKenのKen 様
神拝草23日確認に登りました
前回の蕾が何とも奇妙な
姿で沢山開いて居ました。
燃料2㍑無くなるまで釈迦力に
刈り払い整備も頑張ってきました。
有り難う御座いました。。
HIroKenのKen (日曜日, 23 8月 2015 20:21)
登山道の整備をお疲れさまでした。
HP拝見しました。細かな部分は見えないのですが、花はやはりジンバイソウで、
正常な姿に見えます。偶然、私たちも今日、ジンバイソウを見ることができました。