昨年(2010年)、とうとう自生しているサギソウを初めて
見ることができました。 見たかった花なので、大変感激しま
した。
開発による自生地の湿原の激減と、園芸種が安く売っている
のにも関わらず衰えない採集(盗掘)圧力で、年々数を減らし
ています。 環境省によると推定総数は全国でたった2万個体、
平均減少率は約60%、100年後の絶滅確率約99%とされてい
る厳しい現実があります。
どうしてこんな姿にしようと思ったのでしょうね。
和名の由来は、花の姿が羽を広げたシラサギに似ている
ことによります。これは「異議なし!」という感じです。
白い部分は花弁で、3個あります。 後部に2個並んで立って
いるのが、側花弁。 手前の飛翔するシラサギのような形に見
える部分が、唇弁です。 唇弁は大きく3裂し、中央の裂片が
鷺の首のように見え、左右の裂片はその外縁が細かく深く切れ
込んで、まるで鳥の翼のように見えます。
花の根元付近から、黄緑色の長くだらんと下がった筒状のも
のは、唇弁の基部の一部が突出したもので、距(きょ)と呼ばれ
ます。 中には蜜があり、花粉を運んでくれる昆虫を引き寄せ
ます。
本当に美しい花です。
次の写真で花の中心部分の説明を少し...
上の写真の中央部分が、雌しべと雄しべが合体した、蕊柱(ずいちゅう)です。 淡いオレンジ色をした部分は葯室(花粉塊を包んでいる部分)です。 葯室は手前になるにつれ細くなりますが、先端に白い小さな球状の部分があるのがわかるでしょうか。 これは粘着体と呼ばれるもので、ガなどが訪れて蜜を吸う際、その体にペトリとくっつきます。 そうすると葯の中から花粉塊が出てきて、別の花へと運ばれていくのです(運が良ければ)。
薄黄緑色の柱頭の下には、距の入口が見えます。 距は長いので、その長さに見合った長さの口吻を持つ、セスジスズメなどのスズメガ科の昆虫が飛来して吸蜜するそうです。
正面からは白い花弁に隠れて見えにくいですが、上から
見ると先のとがった緑色の萼片が3個あるのがわかります。
側花弁の後に立つ背萼片は、両側の側萼片よりやや短い。
清流流れる湿原に咲くサギソウです。 見えにくいと
思いますが、まわりにいる先端に丸く白い蕾をつけた
植物は、シラタマホシクサ(絶滅危惧ll類)です。
サギソウ
山地の日当たりのよい湿原に生える高さ15〜40cmの多年草。 葉は互生し、下部のものほど大きく、長さ5〜10cm、幅5〜6mmの広線形で、基部は茎を抱く。 花は1〜4個つき、白色で直径約3cm。 萼片は緑色で背萼片は側萼片より小さい。 距は長さ3〜4cmで垂れ下がる。 花弁については本文参照。 サギソウ属に分類される場合もある。
- 2011.01.26 掲載
- 2012.08.30 環境省レッドリスト2012年見直し版に従い、絶滅危惧カテゴリーを絶滅危惧ll類から準絶滅危惧にランクダウンした。
- 2014.10.16 花の構造を示す写真に各部の名称を追加。その他写真を大きくしたり、文を見直すなど全体をブラッシュアップした。
- 2017.07.05 花の構造を示す写真を改訂(各部の名称を追加)。
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