アキザキヤツシロランに続き、クロヤツシロランも
見ることができました! しかも今回は情報を下さっ
た方に同行させていただくことに。 初めての場所な
ので心強いこと、この上もない。 お仲間のお二人に
混ぜてもらい、5人でクロヤツシロランを探しました。
クロヤツシロランは常緑照葉樹林や杉林、そして竹林にも
生えます。 今回はある竹林を探索しました。 アキザキヤ
ツシロランを見た竹林よりは明るい感じでした。 藪蚊も少
なめでした。 アキザキヤツシロランの竹林では藪蚊の猛攻
撃を受けたので警戒していましたが、よかったです。
いました、クロヤツシロラン! 小さい! 茎は高さは2〜3cm
ほど。 色が黒っぽいので、まったく目立ちません。 腰をかがめ
て地面をじっくり探さないと見つけられないのは、アキザキヤツシ
ロランと同じです。 暗いし黒いし地面に近いし... 花の中が見え
ない! ここはLEDリングライトを使うしかなさそうです。
葉緑素を持たず、土壌中の共生菌から栄養分を得る、菌従属栄養
植物です。 本州の関東以西、四国、九州に分布し、花期は9〜10
月です。
渋い! 苦みばしったというか、いぶし銀の魅力というか...
茶褐色で派手さとは無縁のその姿は、小さいのに妙に存在感が
あります。 見応えがあり、なかなか魅力的なランです。
萼片は基部で合着し、3裂します。 萼片の外側には、白っぽい
小突起が多数あります。 子房や花柄にねじれは見られないので、
クロヤツシロランは「ストレート・唇弁下側タイプ」のランです。
新種として発表されたのは1981年で、それまではアキザキヤツ
シロランとされていたそうです。 一時は環境省に絶滅危惧1B類
と指定されていましたが、現在では準絶滅危惧にも入っていませ
ん。 新たな自生地が多く発見されたのか、あるいは温暖化など
で数を増やしているのか? 数が多いのは良いことなのですが。
あまりに目立たないのと、花期がとても短いので発見されなか
ったのかも知れません。 その気になって探したら案外たくさん
いました、ということなのかも知れません。
アキザキヤツシロランはあまり萼片を開きませんでしたが、
クロヤツシロランは平開といってよいほど開きます。 大き
な萼片と、ちょこんと耳のようについた側花弁が印象的でし
た。 「大きな萼片」といっても、植物体全体からの比較で、
実際は長さ1cm程度です。
唇弁は全体に楕円形で、中央先端部にまた小さな楕円形の
突き出した部分があります。 その突き出し部分の基部に、
2つの黒っぽい隆起した部分がありました。
唇弁の左右に白っぽい毛があることが、アキザキヤツシロ
ランとの一番わかり易い識別点です。 アキザキヤツシロラ
ンの唇弁には毛がありません。
ラン科の雄しべと雌しべは合着し蕊柱(ずいちゅう)と呼ば
れる器官になります。 上の写真は蕊柱を正面から見たものです。
淡黄色の丸いものは葯で、中には花粉塊が入っています。
白いつぶつぶが見えますが、これが花粉塊です。 ただし見
えているのは他の花の花粉塊が、ショウジョウバエなどの昆虫
に運ばれ、柱頭にくっついたものです。 この一つ一つの白い
粒が、じつは何百もの微小な花粉の塊です。 柱頭とは雌しべ
の先端部で、粘液を分泌し、花粉塊がつき易くなっています。
上の花は葯帽が取れて、自分の花粉塊が見えています。
送粉者の昆虫が訪れて、花粉塊を持ち運んでくれたが、
一部が残ったのかも知れません。 一方、奥には他の花
から運ばれたであろう花粉塊が柱頭に付着しているのが
見えます。
うつむきがちに咲くクロヤツシロランですが、この花はやや
上を向いていました。 この花も柱頭に他の花の花粉塊をつけ
ています。 自分の花粉塊はすでに送粉者に渡せたようですね。
外れた葯帽が残っていました(矢印部)。
落ちてしまった花がありました。 手袋をはめた手では
ありますが、大きさのイメージがつかめると思い掲載します。
この小さな植物が、果実期には数十センチもの高さに伸長
するそうです。 その姿も見てみたいものです。
2013.11.03 掲載
yakuboo (日曜日, 24 8月 2014 15:15)
凄い観察眼には感心しました、綺麗に撮れてますね。葯帽を外すと二個の花粉塊が付いてますね、花粉塊が崩れると花粉が周りに散らばる分けですがお写真を見ると
既に柱頭に花粉が付いてますね。これは自分の花粉と言うことはありませんか。くろやつしろらんの花粉は粘りが少ないので、その点が判断に難しいところでしょうか。
hanasanpo (月曜日, 25 8月 2014 06:31)
花粉が着く瞬間を観察できた訳ではないので、自分の花粉である可能性も否定できません。しかしなるべく自家受粉を防ごうとしていると思うので、ここでは他の花の花粉であろうとしました。
あるサイトによると、クロヤツシロランはショウジョウバエなどの送粉者が花に入ると、唇弁を閉じてしばらく花の中に閉じ込めるという動きをするそうです。そんな様子をインターバル撮影などで撮れたら面白いと思いますが、よほど運に恵まれない限り、大変根気の要る作業になりそうなので、やはりムリですね!
yakuboo (月曜日, 25 8月 2014 09:34)
ありがとう御座いました。
クロヤツシロランは竹藪にも発生することが通説のようですね。私の
偏った持論ですが、竹藪の中に杉葉、杉小枝などは見かけませんでしたか。
単独竹藪に生える事が今一理解出来ないのです、もし来月(9月)観察されましたら
状況を宜しくお願いします。
くろやつしろとあきざやつしろが同居している記事(Web)もありますね。もし小蝿等がぽりねーたで有るならば交雑種があってもと思うのですが万年ありませんね。
そんな事を考えると自家受粉か交雑種の種は不稔なのか二つに一つだと思いますがどうでしょうか、合わせてお願いします。
hanasanpo (火曜日, 26 8月 2014 00:05)
クロヤツシロランは、このページの上から2枚めの写真のように、杉の木はありませんでした。林床に杉の葉や枝があったかどうかは定かではありませんが、竹以外の枯葉はなかったと思います。 アキザキヤツシロランも同様です。 竹林の外には、杉林があったかも知れませんが...
クロヤツシロランとアキザキヤツシロランが交雑するのかは、申し訳ありませんがわかりません。 エビネ属は野生下でも稔性の交雑種ができるそうですが、オニノヤガラ属では、稔性・不稔性にかかわらず、そのような情報に触れたことはありません。
でも棲む環境も姿も似ているので、もしかするといるのかも知れませんね!
yakuboo (水曜日, 27 8月 2014 15:36)
大変勉強になりました。今後とも
宜しくお願いいたします、貴花のペーじは二人三脚で集積されていて
意見交換などもあり文字の知恵ですね、有難うございました。
hanasanpo (水曜日, 27 8月 2014 21:00)
こちらこそよろしくお願い致します。
いつでも気軽に遊びに来て下さいね。