ソバカス美人 イチヨウラン29人衆
(どの写真もクリックすると拡大します)
群馬県は六合村(くにむら、現中之条町六合地区)の奥、長野県との県境近くに、野反湖(のぞりこ)という美しい湖があります。 標高約1500m。「天空の湖」とも呼ばれます。 周辺は女性的な、なだらかな景観を持つ山々に囲まれ、まるでヨーロッパのどこかの国の湖であるような雰囲気があります。 私たちの花散策の原点となるような場所です。
野反湖からそう遠くない山の中に、イチヨウランがたくさん生える場所があります。 登山コースから外れており、一般の登山者は立ち入ることはない場所です。 野反湖の友人、Nさんが2008年に発見し、私たちを案内してくれたのです。 このページには、2008年と2009年に撮った写真を使ってます。
写真#1は、Nさんと冗談で「ソバカス美人 イチヨウラン29人衆」と呼んだ群生です。 約50cm四方の中に29人のイチヨウランが、ほぼ同じ方向を向いて立っていました。 イチヨウランが咲く場所は他にもたくさんあると思いますが、これだけ密集して咲く姿は、なかなか見ることができないのでは? 世の中、上には上があると言いますから、もっとスゴイ場所もあるのかも知れませんが。
近辺一帯もイチヨウランの密度が濃く、3人で歩きながら数えたら...「29人衆」も含めて、136人位いました。 終いには数えることに疲れてやめてしまったので、もっと多くがいたと思います。 イチヨウランは初めて見たので、それはもう大興奮してしまったのを覚えています。
興奮冷めやらない中での撮影でしたが... これだけたくさん
群れていると、なかなか撮影が難しかったです。 どれかに
ピントを合わせると他がボケボケになってしまうし... 絞りを
F16まで絞り込んでも、29人衆全員をクッキリ撮ることはで
きませんでした...。
助かったのは、29人がほぼ全員、こちらを
向いていてくれたことですね。
イチヨウランの緑色の萼片と側花弁には、暗紫色の
斑点があります。 野反湖のイチヨウランの中でも特
にこの密生地域では、斑点が多い花が多かったのです。
何しろ、花茎にまで斑点があるのです。 だから「ソ
バカス美人」と呼んでました。
#6のように、斑点の少ないタイプもいますが、野反湖ではマイ
ノリティと思います。
イチヨウランの唇弁は3裂し、中央の裂片が、左右の裂片より
ずっと大きいです。 唇弁の色のベースは白色で、薄い小豆色の
模様が入ります。 この模様は、個体毎にすべて異なります。
「29人衆」は非常に狭い領域に29個体もいたので、きっと兄
弟姉妹であると思うのですが、すべて模様が異なっていました。
人間の兄弟姉妹も、似てはいてもまったく違う顔をしているの
と同じだと思います(一卵性双生児は別ですね)。
「同じ種類の花は、見分けがつかないほど似ている」 花に
興味を持つようになる前は、そういう先入観を持っていたと思
います。 しかし自然に咲く花はクローンではないので、株が
違えば少しづつ違う遺伝子を持っています。当たり前のことな
のですが、そのことを明確に意識させてくれた花でした。
写真#4の花の唇弁の中央にある模様は、"C"の文字が左右逆
になったように見えませんか? あるいはちょっとムリがあり
ますが、"?"マークのようにも見えませんか?
#7は、イチヨウランの顔のアップを並べてみたものです。
同じ地に咲く同じ種の花でも、こんなに個性豊かです!
29人衆はあまりに密生しているので、イチヨウラン全体の
特徴がわかりにくかったと思います。 普通は1〜2株がポツ
ンと立っていることが多いのではないかと思われるので、そ
んな写真を探してみました。
「一葉」の名の通り、葉は根元付近に1個だけつけます。
写真#8では3株いるので葉も3個見えます。 葉は卵円形で
中央の脈が目立ちます。 葉の大きさが相対的に左から中、
小、大 となっていますが、花茎の長さも左から中、短、長
となっていて、この写真を見る限りでは、葉の大きさと花
茎の長さには相関がありそうです。 高さは一番背が高い
株で20cm位だったと思います。
#10と#11は、長野県諏訪郡にホテイランを見に行ったときに出逢ったイチヨウランです。 #11の花は、唇弁がうっすらとピンク色がかっており、花茎も赤味を帯びています。 所変われば、花の個性も少し変わるのですね。 あ、蕊柱(ずいちゅう)にも斑点があった! このように下から見ないとわからなかったです。
一番最初の写真#1は、本当に29人いるの? と思われた方もいるかも知れないので、ちょっとしつこいですが、念のため番号を振った写真も掲載しておきます。 興味がありましたら写真をクリックして下さい。 重なり合って見にくい部分もありますが、別の角度から撮影した写真で確認済みです。
イチヨウラン
北海道、本州、四国に分布。深山の林内に生える多年草。
葉は1個で、卵円形で長さ3〜6cm。花茎は高さ10〜20cm
で、先端に1個の花をつける。花期は5〜7月。
2011.07.21 掲載
イチヨウランが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス
花さんぽ
かのん (木曜日, 21 7月 2011 20:57)
イチヨウラン29人衆、楽しく拝見しました^^
私も最初に数えましたが、足りなかったです^^
それにしても29本綺麗に並びましたね~
まるで山の小学校の全校集会みたいですね^^
こんな葉一枚で、こんな長い茎と、肉厚の花を咲かせるのですね。
唇弁の模様の顔写真も最高!
まるでフィルムのコマ送りみたいで、アート作品として額に飾りたいです。
それぞれお顔が違って、性格も違ったりして(笑)
アルファベットに見えるのありますね。
唇弁だけ見ると、山のクリオネみたい^^
今日も楽しませて頂き、有難うございました^^
hanasanpo (木曜日, 21 7月 2011 22:26)
かのんさん、ありがとうございます!
「山のクリオネ」とは言い得て妙ですね!
確かにそう見えますね〜
そういうところにお気付きになるとは、さすが、かのんさんですね!
いつも感心してしまいます。
唇弁をたくさん並べた写真を額に入れて飾るなんて、面白そうですね。
本当にやってみようかな!
ペン (土曜日, 23 7月 2011 06:44)
素晴らしい群落ですね。これほどの群落は見たことがありません。いつも1株か2株程度が細々と咲いていることが多いですよね。
ちょっと最近はフィールドへ出られる機会が減ってしまっているので、この写真で楽しませていただきました。ありがとうございました。
hanasanpo (土曜日, 23 7月 2011 17:16)
ペンさん、こんにちは!
最近少しブログ更新の間隔が空いているようでしたので、どうされたのかな?と心配しておりました。
イチヨウランの群落は本当に驚きました。2008年には23株でしたが、2009年には29株に増えていました。2010年と今年は見にいけませんでしたが、来年はぜひ行きたいと思います。果たして増えているか、減っているか?今から楽しみです。
現在山中湖の宿におります。ツリシュスラン他いくつか目的の花がありましたが、ぜ~んぶ空振り!トホホ。ヒメシャラを初めて見る事ができたのと、オオバジャノヒゲの群生を見れたのみです。明日は富士山に行ってみようと思います。
またのご訪問をお待ちしています。
薫る風 (火曜日, 03 6月 2014 11:16)
初めまして。
薫る風と申します。
昨日、岐阜の小秀山に登った際、下山路の斜面でイチヨウランに巡り合い、ブログを探して、素晴らしいイチヨウランにたどりつきました。ありがとうございました。私の住まいは伊那谷です。先日は木曽の糸瀬山でヒメハギに出会い、まったくわからず、今日ほかのブログで確認できました。もっとちゃんと見てあげていれば、と後悔しました。こんなかわいい花だったのに・・・。
これからもお邪魔するかもしれません。よろしくお願いいたします。
hanasanpo (火曜日, 03 6月 2014 22:02)
薫る風さん、いらっしゃいませ。
イチヨウランのページを見ていただき、どうもありがとうございます。
お住いは伊那谷ですか、素晴らしい場所ですね。何度か花散策に行ったことがあります。 ヒメハギは大好きな花の一つです。同じ科のヒナノキンチャクはもっと好きです。 もう一つ、仲間のカキノハグサが見たいのですが、まだ開花した状態を見ることができていません。
どうぞ、いつでもお気軽に遊びに来てくださいね!
ゆき (土曜日, 05 8月 2017 18:58)
こんばんは、hiroさん、Kenさん、イチヨウラン29人衆、美しい写真ありがとうございます、そばかす美人、個性的な、さながら、十人十色の美しさですね、途中までも、100人以上、群生美、感激しました。自然が、豊かなあらわれですね。いつも、嬉しく、拝見してます。
Ken (土曜日, 05 8月 2017 19:26)
ゆきさん、こんばんは! 野反湖のイチヨウランはソバカスのような斑点が多いのですが、その分個々の花の違いがわかり、楽しいです。この場所にはもう何年も訪れていませんが、イチヨウランたちが元気にしていることを祈ります。