ヒロハノアマナ
(ヒロハアマナ)
広葉の甘菜 ユリ科 アマナ属
Amana erythronioides (Amana latifolia, Tulipa latifolia)
日本固有種 絶滅危惧ll類 (Vulnerable)
清瀬市の緑地保全地域で、今年もヒロハノアマナを
見ることができました。 北向きの斜面に残る雑木林
の中に点々と咲いていました。
今年(2014年)はカタクリとの競演も楽しむことがで
きました。2012年と2013年分も含めて、ご紹介します。
草地や疎林下などに生える、外皮鱗茎(註1)のある多年草
です。 分布は本州の関東〜近畿地方と四国に限られ、花期
は3〜5月です。
花はアマナとよく似ています。 葉は線形で2個あり、長さ
15〜20cmほどで、幅はおよそ7〜15mm。幅が5〜10mm
のアマナより幅広いことが「広葉」の由来です。 葉の中央
の白っぽい線も、アマナにはない特長です。
2個の葉は花茎につきますが、その部分以下が地面の下
なので、根生葉のように見えます。 花茎の上部には普通
3個の包葉があります。 アマナは普通2個なので識別でき
ます。 上の写真では包葉の先端部に矢印を入れました。
葉はやや紫褐色を帯びた深い緑色。 中央の白っぽい
部分が目立ちます。 3個の包葉は内側に強く巻き込んで
いるので、筒状・線形に見えます。
花は花茎の先端に1個つけます。 日が差さないと開きま
せん。 花被片は内花被片3個、外花被片3個の計6個で、披
針形。 長さは20〜25mmで白色ですが、基部付近は黄緑
色を帯びます。 外側に薄い紫褐色の脈があり、内側に透け
て見えます。 6個の雄しべは花被片より短い。 花粉は濃
い黄色です。
逆光気味になると脈が透けて美しい。 外花被片の
脈は縁部分を除き全体に広がりますが、内花被片の脈
は中央部に寄っています。
6個の花被片がほとんど同じ長さに見える個体や、上の写真
のように明らかに、外花被片の方が長い個体もありました。
花柱は根元の方が太く、丸みを帯びた
3稜があります。 先端は切形の嘴状。
日が差さないと花を閉じてしまいます。
2013年は花が早く、3月末日で花はなく、果実に
なっていました。 果実は蒴果で、長楕円形、3つの
稜があります。 鳥の頭部を連想させる形です。
ヒロハノアマナは、環境省の2012年レッドリストで絶滅危惧ll類(絶滅の危険が増大している種。危急)に指定されています。 希少な植物を自宅から車で30分ほどで観察することができるのは、ありがたいことです。
自生地の環境が保たれているのは、市民団体「清瀬の自然を守る会」の活動に因る所がとても大きいと思います。 樹木の間伐やササ刈、落ち葉の清掃などを継続的に行っているうちに、本種やカタクリなどの数が増えていったとのこです。 近くの緑地でもヒメニラ、ジロボウエンゴサク、ニリンソウなどを始め多くの野草を見ることができますが、これも保全活動のおかげだと感じます。
住宅地の中にわずかに残された緑地。 北向きの斜面であることが、開発の手を免れた理由かも知れません。 しかしそのまま何もしなければ、笹薮になるだけでしょう。 地道な市民活動のおかげで、元々この地に自生していた植物たちが蘇った感があります。
カタクリの咲く頃には「カタクリ祭り」が開催され、週末は近くの小学校の校庭が無料駐車場として開放されます。 自生地までは歩いて2〜3分。 途中には「清瀬の自然を守る会」の方たちが要所要所に立ち、交通整理や保全区域の案内、監視員などで活躍されています。
ご年配の監視員の方にお話を伺いましたが、以前カタクリが増え始めた頃は、なるべく隠すようにしていたが、盗掘が絶えなかったそうです。 しかしカタクリ祭りなどを開催し、積極的に公開する方針に変更するに従い、訪れる人が増え、逆に盗掘は減っていったとのことです。 ボランティアの監視員とともに、一般市民の「目」が増えた効果かも知れませんね。
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(註1)外皮鱗茎(がいひりんけい):鱗茎とは地下茎の一種で、多数の葉が養分を貯えて多肉となり茎の周囲に生じたもの。そのうち外皮に覆われたものを外皮鱗茎と呼ぶそうです。アマナの鱗茎は食用になり、甘味があるのが名の「甘菜」の由来です。
2014.04.03 掲載
外部リングのご紹介
https://kiyoseshizen.jimdo.com/
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/volunteer/kyodo/volunteer/conservation/kiyose.html
ヒロハノアマナが掲載されたページ
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