本州から四国・九州まで、薄暗く湿った場所に生えます。 ユキノシタ属の中では、最もよく目にする植物であるかも知れません。 庭先で栽培されている姿を見かけることも少なくありません。 このためあまり真剣に写真を撮ったことがなく、このページをつくる際には少し困りました。
根出葉は束生し、長さ3〜10cmの柄があります。 葉は腎円形で、基部は心形。 表面は暗緑色で、脈に沿って白斑があり、これが本種の特徴の一つです。 裏面は暗紫色を帯びます。 また葉や茎には、赤褐色の粗い毛が生えます。
ユキノシタの名の由来は諸説あるようですが、図鑑(*1)によれば、「葉が常緑で白斑があるのを、表面に雪が積もった状態に見立てて名付けられたという」と書かれていました。
種子による種子繁殖だけでなく、多数の走出枝を出して、その先端に新苗を生ずる栄養繁殖でも増えます。 上の写真で、紫色の糸状で縱橫に伸びているのが、走出枝です。 たくさん写っているのですが、細くてわかりにくいかも知れないので、そのいくつかを矢印で示しました。
条件がよいと、#4、#5のように大きな群生を形成します。
花茎は高さ20〜50cmで、円錐状の集散花序に、ややまばらに花をつけます。
(上の写真の株は、やや花期のピークを過ぎてしまっています)
ユキノシタの花期は5月〜6月。 多数の花を咲かせると、とても賑やかな感じです。
ユキノシタの花はあまり大きくはないですが、近寄ってよく見ると、とても美しい花であることがわかります。 見かけたら、ぜひ花に顔を近づけて、じっくり観察してみて下さい。 正面からの写真#9で花の各部を説明します。
①上部に3つの小さな花弁があります。 卵形で、長さは約3mm。 先端はとがり、
基部は浅い心形となり、短い「爪」があります。 トランプのスペード♠のマーク
に似てなくもありません。
この小さな花弁の上側2/3は淡紅色で、その中に不規則な形の濃紅色の斑紋があり
ます。 下側1/3はほぼ白色で、その中にの濃黄色の斑紋があります。 濃紅色の
斑紋は、似た花であるハルユキノシタには、ありません。
②下側の2つの花弁は披針形で、上側の3花弁よりずっと大きく、長さが1〜2cmあり
ます。 大きさは多少、不揃いです。 上側3花弁が色彩豊かなのに対して、潔い
ほどの純白。 上側3花弁との色彩のコントラストが素晴らしい。
③雄しべは10個あり、長さは約5mmで、開花後徐々に放射状になります。 花糸は
白色で、先端が基部よりやや太くなります。 裂開前の葯は、優しい淡紅色。
④ユキノシタの子房は上位で、上部は濃黃色の花盤に囲まれています。 花の中心に
あるこの大きく目立つ花盤が、また美しい。
⑤2本の花柱は直立し、長さは約4mmです。 開花直後は短く、雄しべが花粉を出し
切り、葯が脱落する頃には、長く伸長します。
.
ところで、上側3花弁にある濃紅色の斑紋の形は、花によりすべて異なります。 同じ株の花でも異なるのです。 みんな同じように見えても、実はそれぞれが個性を持つ花なのでした。 次回花に出逢えたら、ちょっと立ち止まって観察してみてはいかがでしょうか。
萼裂片(矢印部)は卵状長楕円形で、長さ約3〜4mm。 花が咲くと反り返ります。 花柄や花序の枝には、紅紫色の腺毛が生えます。
ずっと以前より知っていたユキノシタ。 あまりに簡単に見ることができることで、逆に詳しく見たことがありませんでした。 今回改めて詳細を確認し、とても美しい花であることを再認識しました。
< 引用・参考文献、及び外部サイト >
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*1 日本の野生植物 草本 Ⅱ 離弁花類
平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.171
http://www.yamakei.co.jp/products/2811070210.html
山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.287
http://tuyukusa-life.la.coocan.jp/Saxifraga%20stolonifera.htm
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2017.05.26 掲載
2018.05.19 写真#1を入れ替え、写真#14を追加した。
ゆき (木曜日, 01 6月 2017 21:57)
こんばんは、hiroさん、Kenさん、よく聞くユキノシタ、細分化してみると、可愛らしい、お花ですね、直接的とカメラのレンズごしの繊細な、美しさに、あらためて、感動しました、ユキノシタ、大文字草、ジンジソウ、イズノシマ大文字草など、個々の進化と住み分け、勉強に、なります。ありがとうございます。
Ken (木曜日, 01 6月 2017 23:00)
ゆきさん、こんばんは。各ページともボリュームがありますが、見ていただきまして、ありがとうございます。今回は自分の復習も兼ねて、それぞれの特徴がわかるようなページを作ってみました。
実はあと1種、作成中です。ホシザキユキノシタ。この花は飛び抜けて変わっているので、面白いです。
しょうちゃん (金曜日, 20 3月 2020 18:35)
ゆきのした、花の拡大を、見て、こんなに、綺麗だった‼️驚きました�
HiroKen (土曜日, 21 3月 2020 21:28)
身近な植物の花も、近寄ってじっくり観察すると、その思わぬ美しさに驚くことがあります。ユキノシタもそんな植物の一つかも知れませんね。
きょうこ (木曜日, 28 5月 2020 08:51)
いや~、もう、こんなにじっくり観察したのは�で、いぜんより大文字草好きですが、雪の下のほうが、妖精みたいで可愛いのに…、と思ってたどまりでしたが、此度のごあないで、益々、フアンになり、朝から立派に咲いてる鉢植えを観察です。ありがとうございました。
Ken (木曜日, 28 5月 2020 09:48)
ユキノシタは比較的簡単に見ることができる花なので、あまり注目されない傾向があるかも知れませんが、このページを見て改めてその魅力に気付く方も多いようです。じっくり観察することも大事ですね。