ダイモンジソウの変種で、本州の中部地方以西と九州に分布し、渓流沿いなどの絶えず湿った岩上に生える多年草です。 花期は7〜10月。 「ナメラ」の名の由来は、「発見地の山口市の滑山にちなんだ」という説と、「表面が滑らかな、渓流の岩場に生育するから」という説がネット上で見つかりました。「大文字」は、もちろん花の形が「大」の字に似ていることに由来しています。 尚、本変種はしばしば、カエデダイモンジソウと呼ばれてきたそうです。
花は、ダイモンジソウと区別できないほど似ています。 ダイモンジソウとの相違点は、葉の形状にあります。 表を作るほどではないのですが、ウチワダイモンジソウで使った表と同様に、表1.に示しました(*1)。
表1. ナメラダイモンジソウ と ダイモンジソウの葉の相違点
項目 | ナメラダイモンジソウ | ダイモンジソウ |
葉身 |
腎円形 | ← ( 同左 ) |
基部の形状 |
心形 | 心形(またはくさび形) |
縁の裂け方 |
5〜7中裂(〜深裂) | 5〜17浅裂 |
葉表面の毛 |
まばらに生える(註1) | 長毛が生える |
という訳で、まずは花より先に葉を見ていきます。 葉はすべて根生し、長い柄があります。
ナメラダイモンジソウの葉です。 表1.で葉の縁が「5〜7中裂」すると記載しましたが、どう見ても「深裂」している部分も多々あります。 このため表に「(〜深裂)」と書き加えました。
ちなみに当サイトでは、裂けた谷の部分の長さが、葉の長さの1/3未満を「浅裂」、1/3〜2/3未満を「中裂」、2/3〜全裂未満を「深裂」 としています。 但し、精密に測定した訳ではなく、目分量で判断しています。
母種のダイモンジソウや、別の変種であるウチワダイモンジソウとも明確に異なる形状で、見間違えることはなさそうです。 次に、葉のバリエーションを見ていきます。
#3:5裂しています。 左右の側萼片は中列していますが、頂裂片は深裂している
と言えそうです。
#4:#3と同様ですが、側萼片の裂け方がより深く、掌状に5裂していることが
より明瞭です。 裂片は中位より先が幅広い。 #3と#4のタイプが最も
多かった印象です(あくまでも個人の印象です)。
#5:5裂していますが、各裂片が細長く、長楕円形です。
#6:3中裂・深裂する葉です。 図鑑では5〜7裂するとありますが、このように3
裂する葉も、少なからずありました。
花は純白の5弁花で、ダイモンジソウにとても似ています。 フレッシュな花は、裂開前の雄しべの葯がみかん色で、純白の花弁や濃黄色の花盤とのコントラストが美しい。
花弁は、花の上側に3弁、下側に2弁つきます。 上側3弁は長卵形〜楕円形で、この部分が披針形であるダイモンジソウよりも、丸みを帯びています。 この点で、ウチワダイモンジソウとは識別不可能なほど似ています。
下側2弁は線状楕円形で、上側3弁より明確に長くなります。 上側3弁はほぼ均等な大きさですが、下側2弁は左右どちらかが長くなることが多く、不揃いです。
今回は前日のウチワダイモンジソウに続きナメラダイモンジソウと、見たかったダイモンジソウの変種を2日間で見ることができました。 大変充実した花さんぽとなりました。 ナメラをご案内下さった花友さんには、本当に感謝したいです。 ありがとうございました。
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*1 日本の野生植物 草本 Ⅱ 離弁花類
平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.172
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< 註 >
註1: ナメラダイモンジソウの葉の毛については、図鑑(*1)に記載がなかったため、
観察個体とネット情報を元に記載しました。
2017.05.26 掲載