春先に、丘陵や山間の少し薄暗い林縁や道ばたで、ほんのり青白い小さな花を咲かせます。 本州の福島県以南から九州に分布する多年草です。 関東地方では比較的よく目にします。 この花を見ると「暖かくなるまで、もう少しだ」と感じます。
柔らかくやや湿った土のある、半日陰になるような場所にいます。 なぜか崩れ落ちそうな急斜面に咲いていることが多いのです。 ここもそんな場所でした。 山間の車道脇です。 たくさん咲いていたので、走行中の車からでも見つけることができました。 安全な場所に車を停め、しばし見事な群生を観察しました。
所変わってこちらは東京都の高尾山です。 初めてヤマルリソウを見たのもこの場所だったと思います。 ここは更に急傾斜で、ほとんど垂直に近く見えます。 毎年見る度に崩れ落ちそうで心配だったのですが、とうとうその懸念が現実のものとなってしまったかも知れません。 上の写真は2012年の撮影で、写っている範囲で少なくとも30株はありそうですが、今年(2013年)3月10日に訪れたときは、土に埋もれかけた、わずか数株のみでした。 時期が早過ぎたのかも知れませんが、斜面が崩れてなくなってしまったのかも知れない。前者であることを祈ります。
↓ ↓ ↓ 2013年5月6日追記 ↓ ↓ ↓
上の写真は2013年5月1日の自生地の状態です。 よかった! ヤマルリソウは2012年4月とほぼ同じ状態でした。 土砂の崩落は進んでいますが、ヤマルリソウの株数はさほど変わらないように見えました。 3月に見た時はまだ時期が早すぎて、株が減少したように見えたのだと思います。 お騒がせしました。
↑ ↑ ↑ 2013年5月6日追記 ↑ ↑ ↑
草丈は7〜20cmほど。 根生葉はロゼット状で、
倒披針形(へら形)。 長さは7〜20cm、幅2〜
5cm。 縁が少し波打つのが特徴です。
根生葉は、茎葉より大きいですね。
茎葉の基部は、やや茎を抱きます。
葉は両面とも白っぽい毛がたくさん生えています。
長短2型の毛があることがヤマルリソウの特徴だそう
ですが、この写真ではよくわかりませんね。 でも
縁に生えた毛は、表面の毛より長く見えます。
葉の他にも、茎や萼に白い開出毛がたくさん
生えます。 けっこう毛深い植物です。
Hiroの実家がある足利市の山でも、たくさん咲く場所を見つけた♪
茎はいろいろな方向に斜上します。
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花序は分岐する・・こともある。
図鑑やネット上で「ヤマルリソウの花序は分岐しない」という
説明を見ることがあります。 確かに普通は分岐しませんが、
ときには上の写真のように2分することもあります。(マウスで
ポインターを重ねると、白い枠内を拡大表示します)
花序が分岐している様子が写った写真を、もう1枚。
小さくてすみませんが、円内の花序が2分しています。
それにしても、上の花は白っぽいヤマルリソウでした。
白いスミレの仲間も一緒に咲いていました。
ヤマルリソウの魅力は、なんといっても
この小さく可愛い花ですね。
小さな花ほど、近づいてよく見るとその美しさに驚かされる
ことがあります。中心付近に薄く紫色が入り、上品なグラデー
ションを経て、淡いブルーになります。
咲き始めは赤味が強く、淡い紅紫色になることもあります。
直径1cmほど。 花冠は5裂し平開します。 雄しべ・雌しべは花の中に引っ込んで、ほとんど見えません。 花喉部に小さくて白い、ポツポツ隆起した部分があります(この部分こそがヤマルリソウの可愛さのポイントかなと思っています)。
図鑑では白いポツポツを「鱗片」とか「付属体」などと表現しています。 しかし実際にはこれはオマケで付いているようなものではなく、花冠の一部なのです。 花冠の一部が変形し、花粉を運ぶ昆虫たちに「ここが入り口だよ」と示すかのような形になっています。 花冠の一部ですから、「副花冠」という表現が適切です。
これは、mizuaoiさんの受け売りです。 mizuaoiさんのページではとてもわかり易い写真とともに、ヤマルリソウを詳しく解説させているので、ぜひご覧になると良いと思います。 ポツポツが副花冠であると納得させられる写真もあります。 ページは、ココです。(2013.03.29最終閲覧)
http://www48.tok2.com/home/mizubasyou/114etigorurisou.htm
(現在サイトが移転し、工事中のようです)
べっぴんさんばかりではなかった。
中には「ヤマルリソウ界のクシャおじさん」も。
(わかります?)
花が終わると、垂れ下がってこんな姿になります。 このような状態を見かけたら、「ああ、花終わっちゃったのね」と通り過ぎず、ぜひひっくり返して果実を観察してみて下さい。 果実も可愛いですヨ。
下向きの萼には、こんな果実が隠れています。 ちょっと面白いでしょ?
果実は分果です。 雌しべが4室からなり、それぞれが分かれて果実になるので、1つの花には4個の果実ができます。 中央が凹み、ドーナッツを連想させる形になり、ほぼ円形〜ゆるい楕円形です。 ルリソウではこの円形の部分にかぎ状の刺が並びますが、ヤマルリソウにはありません。
分果の大きさが不揃いなものもあります。 何が原因なのかな?
2013.03.30 掲載
みすちる (土曜日, 30 3月 2013 08:16)
丹沢や高尾にも咲いていて大好きな花です。
可愛いですよね。
hanasanpo (土曜日, 30 3月 2013 22:07)
本当に可愛い花ですよね!
ムラサキ科の花はどれも大好きです。
よしこさん (水曜日, 01 4月 2020 16:24)
初めまして。何時も素敵なお花や詳しい解説見せて頂き有難うございます。
4月3日に高尾山に行くのですがヤマルリソウも見たいと思ってます。見られるとして花が開く時間帯は何時くらいかお分かりですか? 例えばお昼に近い午前中でも開いてますかね? 場所にもよると思いますが宜しくお願いします。
HiroKen (水曜日, 01 4月 2020 21:05)
こんばんは。当サイトへのご訪問をありがとうございます。
ご質問の件ですが、そもそもヤマルリソウの花は開閉運動(もしくは傾性運動)をするのでしょうか? 開閉運動する花は多くありますが、ヤマルリソウの花は開花したら、枯れるまで開いたままであるという認識です。 もし違っていたらごめんなさい。 今まで何年も観察した中で「寒すぎてすべての花が閉じてしまっていた」とか、「夕方になり暗くなったので閉じてしまった」などという経験はありません。 開花の時期になっていれば、時間に関わらず花は開いていると思います。 4月3日であれば、例年通りであれば、咲いている可能性が高いと思います。