ムラサキ

 

紫 ムラサキ科 ムラサキ属

Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zucc.

 絶滅危惧lB類(EN)

#1 ムラサキ (紫) ムラサキ科 ムラサキ属  2011.06.26 山梨県
#1 ムラサキ (紫) ムラサキ科 ムラサキ属  2011.06.26 山梨県

 

 ムラサキに出会うことができました。花は白色です。根にはシコニンという色素を含み、かつては紫色の染料として使われていたようです。名はここから来ているのでしょう。根はシコンという生薬としても利用され、栽培もされていたようです。

 古今集にも歌われたり、古文書にも記載があり、かつては北海道から九州まで、日本全土の日当たりのよい草地に分布していたようです。現在では非常に数を減らし、見つけることがとても困難な花になってしまいました。 今回はHiroの綿密な事前調査のお陰で、比較的楽に見つけることができました。(その場所に行くまではバテましたが)

 

#2 ムラサキ
#2 ムラサキ

 

 標高1700mを少し超えた尾根道の、開けた草地にいました。見つけられたのは、たった4〜5株でしたが、高さ60〜70cmほどの立派な株で、蕾もたくさんつけていました。葉は互生し、柄がなく、長披針形。やや沈んだ緑色でした。粗い毛が生えています。脈はやや並行して走り、表面で明確に窪んでいるのが印象的です。

 

#3 ムラサキの葉
#3 ムラサキの葉

 

 葉を触ってみると、しっかりした感じ。光の加減により表面の見え方が少し異なります。 #3は葉の縁の毛は見えますが、表面の毛はよく見えません。その代わり、表面一面を小さな丸っこいプツプツが覆っているのが見えます(写真をクリックすると少し大きく表示しますので、興味があればカチッとして下さい)。どうも、毛はこのプツプツから生えているようです。プツプツは、毛根みたいなものなのでしょうか? 茎にも白っぽく粗い毛が生えているのが見えます。

 

#4 ムラサキの葉
#4 ムラサキの葉

 

 #4は同じ株の反対側の葉です。光の加減でプツプツは見えませんが、白っぽい毛がたくさん生えているのがわかります。葉を根元に向かってなでると、ちょっとざらざらした感じがします。葉脈の部分は窪んでいます。

 

 ところで、上の4枚の写真をよーく見ると、葉の付け根の部分に小さな葉が2枚づつ、ついているのが見えます。これは、托葉では? 確かムラサキ科の植物の多くは単葉で、托葉は持たないはずですが... ムラサキは、托葉を持つ数少ない種なのでしょうか? お詳しい方、教えていただけるとありがたいです。

 

#5 ムラサキの花序
#5 ムラサキの花序

 

茎は茎頂部付近で分岐し、花もこのように茎の上部にまとまってつきます。

(図鑑の写真ではもっと大きく分岐し、花もまばらな感じでついていました)

 

#6 ムラサキの花
#6 ムラサキの花

 

#6 とても清楚な感じを受ける、かわいい花です。直径は8mmほどで、5裂します。白色と言って間違いないですが、Hiroは観察しながら「ほんの微かに青味がかっている」と言っていました。デジカメ写真では、非常に微妙な色合いは表現できていないかも知れません。 花冠の喉部(中央のちいさなぷっくりした突起)は、わずかに黄色味を帯びています。喉部にはこまかな毛が生えているのですが、この倍率ではまったく見えませんね。

 

#7 ムラサキの喉部
#7 ムラサキの喉部

 

画質劣化を覚悟で、喉部をトリミングして目いっぱい拡大

してみました。こまかな毛が生えているのがわかります。

奥に見える薄茶色のものはなんだろう?

 

#8 ムラサキの花
#8 ムラサキの花

 

花を横から見てみました。花弁は、ほぼ水平まで開いています。

 

 

ムラサキ

 

丘陵地の草地などに生える、夏緑性の多年草。高さ40〜70cm。根にはシコニンという色素を含み、生薬の紫根(シコン)や紫色の染料として使われた。花期は6〜7月。

 

環境省のレッドリストでは「近い将来における絶滅の危険性が高い種」である絶滅危惧lB類に指定されている。2006年時点で 推定総個体数1000,平均減少率70%、20年後の絶滅確率は30% と報告されている。減少の主要因は乱獲、管理放棄による遷移の進行、植林による草原の消失や草地の開発が考えられる。栽培も試みられているが、発芽率が低く、ウイルスなどにも弱いことから、非常に困難とされている。

 

2011.07.03 掲載

 


コメント: 8 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    かのん (日曜日, 03 7月 2011 07:26)

    ムラサキって古典にもたびたび登場する、有名な花なのですね~
    全く知りませんでした。
    古典に疎い私などは、歌の中に詠まれていても、紫色の野の様子くらいにしか解釈していませんでした。

    近年まで普通に栽培されていて、江戸紫の生地を染めていたんですね。
    それがいまや絶滅の危機にあるなんて不思議な気がします。
    他のムラサキ科の植物は結構頑張っているのに、、、
    目的を持って乱獲するとあっさり絶えてしまうのですね。

  • #2

    hanasanpo (日曜日, 03 7月 2011 12:24)

    かのんさん、私もムラサキのことは知りませんでした。
    そもそも「むらさき」と聞いたら、居酒屋チェーンの「村さ来」しか思い浮かびませんでしたし(´_`。)。
    「江戸紫」が出てきても、桃屋の「江戸むらさき・ごはんですよ!」しか連想できませんでしたし。
    今回いろいろ調べて、よい勉強になりました。

    やはり草原の消失が一番大きいと思います。広い草原⇒平坦で、宅地開発やゴルフ場をつくるのに、うってつけ!
    ということで無計画に開発が進められ、自生地がなくなったことが大きいのではと思っています。
    私の寿命が来るのと、ムラサキが絶滅するのとどちらが先か? 数株しかいなかったムラサキを見て、そこまで思いました。

  • #3

    ワタベ ヨシオ (金曜日, 24 7月 2020 10:04)

    中学の母校の校歌に、"ムラサキ ニオウ 武蔵野ノ---" とあり、調べた所、ヒットしました。染色のムラサキ、花は白。60年間の誤解が解けました。

  • #4

    Ken (金曜日, 24 7月 2020 14:05)

    ワタベさま、ご訪問をありがとうございます。
    歌詞に「武蔵野ノ--」とあるということは、中学校は南関東にあったのでしょうか。
    昔は関東地方にも歌に詠まれるほどムラサキが咲いていたのですね。今では山で探し回っても、なかなかお目にかかれない植物になってしまいました。

  • #5

    mimi (水曜日, 26 8月 2020 23:34)

    きれいなお写真ですね。高崎の植物園と埼玉の森林公園で栽培しているものしか観たことがなく、森林公園のご担当者も自生しているところは山梨県の秘密のところ、とおっしゃっていました。色名の紫はこちらの植物から付けられたそうです。緑も元々「若い芽」とか「つやつやした」などを指した言葉でしたので、(緑の黒髪とか嬰児とか言いますね)そちらが先で、色名として使われたのはその後になるそうです。紫と緑は暖色でもなく寒色でもなく中間の性質をもつ中性色と呼ばれるそうで、よく言われる人間の心のストレスを癒す色としても素敵な色だと感じます。

  • #6

    Ken (木曜日, 27 8月 2020 20:01)

    mimiさま、コメントをありがとうございます。大変勉強になりました。一度、本物の紫紺染の色というものを見てみたいと思っております。もし紫紺染のハンカチとか売っていたら、買ってしまいそうです。

  • #7

    katu (日曜日, 13 9月 2020 21:51)

    孫に「源氏物語」を借りて読んで、ムラサキを探してこのページに行きつきました。
    素晴らしい図鑑、有難う御座います。
    古文が苦手でほとんど物語の内容を知りませんでした。
    桐壺。藤壺。葵。紫。夕顔。全て植物だと気付いて調べはじめました。
    有難う御座います。

  • #8

    Ken (月曜日, 14 9月 2020 21:33)

    Katuさま、当ページへのご訪問と、お褒めの言葉をありがとうございます。
    古文は私も苦手でした。最近はマンガの源氏物語も何種類も出版されているようなので、読んでみようか... と思いつつも、まだ手にしたことはありません。

 

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  2011年6月27日 アツモリソウ

 

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