エゾオオヤマハコベは高さ50〜80cm、花の直径2cmにもなる大型のハコベで、北海道では湿原などで普通に見られるそうです。 その他の地域では、秋田県と長野県に隔離分布するとされています(両県とも絶滅危惧l類に指定されています)。 ところが今回観察できたのは、岐阜県の恵那市だったのです。
私たちが見ることができた前年の2009年に、岐阜県内で初めて群生地が発見されたのです。 その後県内の何ヵ所かで発見されているようですが、発見ホヤホヤ(?)の自生地で見ることができたのですから、なんともラッキーです。 案内していただいた岐阜の花の大先輩のOさんに大感謝です。 この場所は近くに川や畑などもある、日当たりのよい平地でした。
花弁は5個ですが、この写真には4個のものも写っています(中央)。 花弁は不規則にたくさん裂けて、ハコベ属らしからぬ豪華さを感じます。 顔を近づけてじっくり見ると、見応えのある花だと思いました。
エゾオオヤマハコベがこの地に自生している理由ですが、20年以上前に、ある農家の方が北海道からリンドウの苗を取り寄せて栽培したことがあるそうで、その時に苗の土にこの花の種が混じっていたのではないかと、推測されています。
花弁の裂け方が不規則なのがまたイイですね。
萼片は花弁より短いです。 雄しべは10本、雌しべの
柱頭は3本ですが、上の写真の花は柱頭が4本見えます。
茎や花柄、葉の裏など全体に白い細毛が密生します。 葉は披針形で対生し、柄はありません... と書いていて、アレ?上の写真で花柄の根元からV字型に伸びたものの先に葉がある。 コレって葉柄では? それとも葉に見えるのは苞?困りましたね、どうしましょうか? 「葉柄はありません」と書きにくくなりました。 どなたかご教授願えないでしょうか?
どうした訳か、この花は図鑑に載っていないのです。 頻繁に使っている山渓の「野に咲く花」「山に咲く花」「日本の野草」「レッドデータプランツ」これらのいずれにも記載がありませんでした(所有する発行年のものは)。 平凡社の「日本の野生植物(フィールド版)」には記載がありましたが、知りたかった葉柄についての記述がありません。
それでは、と所有する中で最も古い「牧野 新日本植物圖鑑」を引っ張り出しました(図鑑でなく圖鑑という字なんですよね)。 横道に逸れますが、この本の著者は「日本の植物学の父」といわれる、あの牧野富太郎博士です。 増補版の初版本で、発行は亡くなった4年後の昭和36年(1961年)。 私とあまり歳の変わらない本です。 当時の価格は¥3500とあります。 現在の価格ならおそらく3万円ほどになるので、一般の植物愛好家はなかなか手が出なかったことでしょう。
なぜかドルの価格表示もあるのですが、$20とあります。 当時の為替レートは$1=¥360の固定相場だったはずで、¥3500は$10弱です。 なぜか倍以上の値段となっていますが、海外には高く売らなければならない理由があったのでしょうか?
そんなことはともかく、この1067ページ、3896種(菌類を含む)の掲載数を誇る大図鑑に、エゾオオヤマハコベは載っていました! 下の解説の参考にさせていただきました。
エゾオオヤマハコベ
北海道やユーラシア大陸北東部の各地に生える多年草。 長い軟毛が全体にはえているが腺毛はない。 茎は直立し高さ50cm位になり、上部は分岐する。 葉は対生で葉柄はなく、披針形ないし卵状長楕円形で先端は鋭先形、長さは約5〜12cm。 夏の頃、茎の先に集散花序を出し白色の花をつける。 包は葉状である。 萼は5個、長楕円形で先端はやや鋭形、軟毛があり長さ7mm位。 花弁も5個で萼より長く、先端は不規則に5〜12裂する。 雄しべは10個、子房の頃には3個の花柱がある。
参考サイト情報
(2013.01.08 最終閲覧)
2011.02.13 掲載
2020.06.10 恵那市の関連ページがなくなっていたのでリンクを削除