今年(2014年)もマルミノウルシを見ることができました。
新芽から果実まで、いろいろな成長段階を観察することができ
ました。 この段落の写真はすべて2014年4月20日に長野県
で撮影したものです。
花は上の写真のように、散形に伸びた枝の先に杯状花序をつけます。 5本の枝の中心には、総苞葉と雌花がなく、腺体が5個ある不稔性の花である「中心の杯状花序」をつけるはずなのですが、マルミノウルシではまだそれを確認したことはありません。 センダイタイゲキでは「中心の杯状花序」が明確に確認できたので、よろしければご覧下さい。>>こちら。
上は古くなり、雄花も雌花も落ちてしまった花ですが、杯状花序を説明し易いので選びました。 ポインターを重ねると拡大し説明が表示されます。 杯状花序では、5個の小総苞が合着し、杯のような形になっていることからそう呼ばれます。 腺体が4個あり、総苞片と交互につきます。 手前の腺体が1つ分欠けている場所に、雌しべ1個から成る雌花がありました。
この写真もポインターを重ねると拡大し説明が表示されます。 花は1個の雄しべから成る雄花数個と、1個の雌しべから成る雌花、そして腺体で構成されます。 花弁はありません。
雄花の雄しべは先端に2裂し、黄色い葯をつけます。 他のトウダイグサ属に見られる雄花に伴う小苞片(鱗片苞)は、マルミノウルシにはありません。
雌花は腺体が欠けた部分に垂れ下がるようにつきます。 この写真の花は子房が膨らみ始めています。 子房はやがて蒴果になりますが、表面がなめらかで、ノウルシのようにイボ状の突起がありません。 これが和名の「マルミ(丸実)」の由来です。 雌しべの先は3裂していますが、よく見るとさらにそれぞれの先端が2裂しています。 蒴果は3室です。
4個の腺体は平たく押し潰したような腎形。 トウダイグサの仲間を見分ける時は、腺体の形が重要な手がかりになります。
2014年4月20日撮影 同年6月8日掲載
長野県のマルミノウルシの自生地です。 明るい落葉樹の林下に、マルミノウルシの大群生が広がっていました。 上の写真は斜面を見上げるように撮影しています。 足元から、見える限りの上部まで、マルミノウルシの群生が続きます。 自生地の規模の大きさに驚きました。
WEBで閲覧できる範囲での長野県の公式な報告は「県内の自生地は千曲市のみ」とあります。 長野県環境保全研究所のホームページのココ(*1)にあります。 このページの情報を2012年5月現在の最新の情報としてよいかわかりませんが(更新されていないから最終的な情報であるとは限りませんので)、これが現在の長野県の認識であると仮定すると、この自生地は千曲市ではないので、行政に知られていない可能性があります。 (*1)URLが変わってしまいました。変更後のURLがわかったら、再度リンクを張ります。
マルミノウルシは環境省レッドデータブック2000年版では「絶滅危惧1B類」に指定されていましたが、レッドリスト2007年見直し版では、絶滅危惧ll類を飛び越し、「準絶滅危惧」として指定されています。 なぜ2ランクも「格下げ」となったか不明ですが、他県で新たな自生地が発見されるなどし総個体数が増えたのかも知れません(勝手な推測です)。
尚、絶滅危惧種のカテゴリー定義については>>こちら
それはともかくとして、長野県版のレッドデータブックでは最悪ランクの「絶滅危惧1A類」(近い将来における絶滅の危険性が極めて高い。危機的絶滅危惧)になっています。 行政がこの自生地を認識しているのか、とても気になるところです。
マルミノウルシの減少の主要因は草地の開発・森林の伐採・土地造成です。 一般の方にはこの地味な植物はただの草にしか見えないでしょうから、なんらかの規制か保護の処置をしないと、この自生地もいつまで存続できるのかわからないと思います。 重機などが入ればたった一日で壊滅させられる可能性もあるのでは。
上は草全体の姿です。 高さは40〜50cm。 今年(2012年)2月には初めてマルミノウルシを見ることができましたが、まだ芽生えの頃でした。 実はその頃の方が赤みを帯びた葉が多く鑑賞価値が高そうですが、成長するとどのような姿になるのか、とても興味がありました。
上の写真は上から撮影したものです。 ほぼ直立する茎の先に5枚の葉が放射状につきます。 その中心に1個の小さな花序を出しますが、見えるでしょうか? 5枚の葉の脇からは1本ずつの枝を出し、その先にまた放射状の葉と1個の花序を出します。
トウダイグサ属は、似た姿が多いですが、
花序の腺体の形状や、子房の表面の様子で
識別するのがよいようです。
花は淡黄緑色で、楕円形をした4個の腺体と、その内側に数個の雄しべと1個の雌しべがあります。 子房は紅色を帯び、表面は滑らかなのが特徴です。
2012.05.06 掲載
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