一足早い夏休み、久しぶりに野反湖に行ってきました。 今回は野反湖の友人のNさんに、シャクジョウソウの自生地に案内して頂けたのです。 果実の状態は見たことがありますが、フレッシュな花は一度も見たことがなかったので、出発前から楽しみでした。
野反湖のそばの山を登り始め、小休止も含めて1時間弱、登山道脇に咲くシャクジョウソウをHiroが見つけました。 「いたあ!これがシャクジョウソウかあ!」思わず大声を出します。 Nさんが案内してくれようとした場所よりも少し手前の場所でしたが、良い状態の花を見ることができました。
意外でした。 シャクジョウソウは地味で暗い、目立たない花をイメージしていましたが、初対面の花は想像よりずっと明るい黄色味を帯びていました。 同じツツジ科の菌従属栄養植物にギンリョウソウ(銀竜草)がいますが、この花はキンリョウソウ − 金竜草と言いたい... とまでは申しませんが、図鑑の「淡黄褐色」という表現から来るイメージとは違いました。 Hiroは「コーンポタージュ色」と表現しましたが、こちらの方がピッタリ来ます。
開花後間もない、フレッシュな花です。 シャクジョウソウは暗い林下に咲くイメージを持っていましたが、この場所は明るい登山道脇で、見つけた正午頃には樹木の影になっていましたが、恐らく午前中には直射日光が射し込んでいたと思われる場所でした。 写真撮影には最適な明るさで、Nさんと3人でワイワイ言いながらの撮影大会になりました。
ところで、無毛のシャクジョウソウがいて、ハダカシャクジョウソウと呼んで区別するそうです。 今回見ることができた花は茎にはほとんど毛がないように見え、ハダカシャクジョウソウである可能性も否定できませんが、なにせ初めて見たのでよくわかりません。 ネットで調べても言葉の解説は見つかるものの、両種の違いを比較した写真は見つからず、有毛・無毛の判断基準が不明でした。
写真#3は花の一部をトリミングして拡大したものです。 萼片や花弁にわずかながら白っぽい毛が見えます。 わずかであっても毛があるので、これを無毛とは言えないと思います。 従って、現時点ではシャクジョウソウとして扱うことにしました。
写真#1では6本の茎が見えますが、実は根元に赤ちゃんがいました。
なので合計7本です。 これからグングン大きくなるのでしょうね。
根元を探ったらもっと赤ちゃんがいたかも知れませんが、痛めてはいけ
ないので、触れないようにしました。
更に15〜20分登った暗い樹林帯の中で、Nさんが見つけておいてくれたシャクジョウソウたちに対面しました。 山麓の暑さが嘘のように涼しい風が吹き抜けます。 丁度うまく木漏れ日が差し込み、まるでステージのスター達を照らすスポットライトのようでした。 一番左の株の背後に寄り添うようにして、暗褐色になった昨年の株が立っています。 ご先祖様が背後霊のように(?)子孫を見守っているようです。
標高1600mほどの樹林帯。地面は落ち葉が厚く重なり積もって、歩くとふかふかした感触です。 周辺には果実になったギンリョウソウも見られました。
Nさんは近辺の林内を歩きまわり、あっと言う間に新たに10株以上のシャクジョウソウを見つけ、教えてくれました。 さすが、Nさんです。 私たちも目が慣れてきたハズでしたが、見つけることはできませんでした。
普段はしないことですが、茎と花にそっと触れてみました。 まるで蝋細工のような感触でした。
花は下を向いています。 この後だんだんと上向きになり、
果実になる頃にはほぼ真上を向きます。 フレッシュな花の
顔を正面から拝みたいと思ったので、小形のデジカメを花の
下から差し込んで撮ってみました。 柱頭はきれいなオレン
ジ色をしていました。
更に近寄ってみました。 花弁内側はけっこう毛深いです。
柱頭に線状に連なるわずかな斑点があり、それが丸っこい☆
印のように見えました。 写真をクリックして拡大するとそ
れが見えるかも知れません。
上の2枚の写真は、2010年に八ヶ岳山麓で見た、シャクジョウソウの果実と思われるものです。 やはり薄暗い樹林内のやや湿った場所にいました。 果実の状態になると、ほぼ真上を向いているのがわかります。
シャクジョウソウ
山地のやや暗いところに生える、高さ10〜20cmの菌従属栄養植物。 全体が淡黄褐色で、茎には葉が退化した鱗片葉が互生する。 茎頂の総状花序に長い鐘形の花を5〜10個下向きにつける。葉緑素を持たず、光合成はしない。 落ち葉を分解する菌類を根の表面や表面付近に住まわせ(菌根)、菌類が吸収した養分を間接的に吸収する。このため菌根植物とも言う。養分となる落ち葉だけでなく、菌類との密接な生活環境にあるため、栽培は極めて困難。和名は、全体の姿が修行僧(修験者)が携帯する道具の一つである杖、錫杖に似ていることに由来。
花期は5~8月。北海道~九州に分布。
2011.08.12 掲載
2013.09.26 APG分類体系に準拠しイチヤクソウ科からツツジ科に変更
タラゴン (月曜日, 01 6月 2020 06:52)
シャクジョウソウと思われる植物が群生する場所が千葉県内にあります。毎年同じ場所に見られます。写真のものと比べて細い姿をしているので同じかどうかと思っています。1キロほど離れたところに銀竜草も出ています。
どちらもツツジ科となっていますが全く違う植物のようで不思議です。
Ken (月曜日, 01 6月 2020 20:08)
タラゴンさん、コメントをありがとうございます。
シャクジョウソウという植物はとても不思議で、このコメントのすぐ上にあるリンク「2017年6月29日 今年は遅い(少し変なシャクジョウソウ)」で開くページにあるシャクジョウソウは、このページで紹介したシャクジョウソウとかなり姿が違います。本当に同じ植物なのかと疑問にさえ思います。
APG-Ⅲ分類体系になってツツジ科になりましたが、シャクジョウソウもギンリョウソウもツツジ科ではなんだかピンと来ませんよね。
千葉で咲くシャクジョウソウも見てみたいですね。群生するとは、益々興味が湧きます。写真は撮られましたか? もし差し支えなければ、お写真を見せていただければ幸いです。「ごあいさつ」のページにあるメッセージ欄からメッセージをお送りいただければ(簡単でOK)、折返しメールをお送りしアドレスをお教えできます。