やっとオオウメガサソウを見ることができました。
本州は茨城県北部から北の太平洋側と北海道に自生
しますが、自生地は非常に限られ、なかなか出会う
機会がありませんでした。
ここは管理された場所で、通常は立ち入り禁止です。
1年の内、花の季節の僅か10日間だけ、ガイドに引率
されて自生地に立ち入ることができるのです。 それ
ほど希少になってしまった植物なのですね。
海岸近くのやや薄暗い林内。 そのまた限られた領域に、
点々と咲いていました。 常緑の草状の小低木です。 長
く這う地下茎から直立する地上茎を出します。 その高さ
は10〜15cmほど。 年次を異にする十数枚の葉が3〜6個
づつ輪生状に、2〜3段つきます。
葉はやや厚い感じで、艶があります。 長さ2.5〜3.0cmの
狭倒披針形で、葉柄は短く、脈が凹みます。 先端から中ほど
まで、先が尖った鋸歯があるのが特徴です。
花は直径約1cmで、開花時は下を向いています。 その後
徐々に横向きから上向きへと変わるようですが、今回はほと
んどが下を向いた状態でした。 花が下を向いていると、下か
ら覗きたくなるのが世の常、人の常。 でもちょっとお待ちを。
花の裏側が、ほんのりピンクでとても美しいのです。 これを
鑑賞しない手はありません。
仲間のウメガサソウは、1本の花茎に1個の花をつけます
(稀に2個)。 オオウメガサソウは、1本の花茎に数個の
花をつけることが、ウメガサソウとの大きな違いの一つです。
花茎をつけていない、葉だけの茎も多くありました。
花の裏側をもっと観察してみます。 この個体は特にピンク色が
濃いですね〜。 花弁は離生し5個。 萼片は卵状円形で、先端は
鈍く、長さ約2mm。 花弁と互生する位置にあります。 少し見えに
くいので、トリミング・拡大した写真も載せました。
デジイチではこの小さな花を下から撮るのは難しいので、コンデジにバトンタッチ。 それでもやはり、下から撮るのは難しいです。 花に手を触れちょっと反らせればよく見えると思いますが、被写体の花にはできるだけ手を触れないようにしているので、頑張って超ローアングルで撮り続けました。
一つだけ上を向いている花を発見! よしよし、撮り易いからよく見える。 花弁の縁は和紙をちぎったような感じですね。 でもう〜ん、フレッシュさという点では、少し見劣りするかな。 やはりフレッシュな花は下を向いているようです。
柱頭の先端が艶々しています。 まるで水滴がついているような...? あっ、葯に穴が開いている!?
花の下に小型のコンデジを差し込んで撮影。 勘で
画角を決めますが、何度やっても花が中心に来ません。
ピントも甘いですね。 しかし葯の色がまだ淡く、花
がフレッシュであることがわかります。
この写真も液晶画面を見ずに勘で撮影。 やはり画角がズレてしまいましたが、ピントは合いました。 なかなか美しいではないですか!
(クロンキスト体系の)イチヤクソウ科の花の雄しべは花弁の数の倍あるので、10個です。 先端(というか後端というかなのですが)に孔が開いているのが見えるでしょうか。 見えにくいかも知れませんね。 次の写真で見えると思います。
Hiroが花冠を真横から撮影していました。 雄しべの花糸が反転している様子がわかるでしょうか。 葯の先端部は花の中心に向かって強く反転しています。 反転したことにより、葯の下部が上になります。 しかしそのとき花が下を向いていれば、葯の下部も下側になります。 そして十分に花粉が成熟すると、葯室の下部先端に孔が開き、そこから花粉がこぼれ落ちます。 その下には...花柱があるので、花粉が降り注ぎ、自家受粉することになります。
よく見る他の花は葯室の側壁が縦に裂けますが(縦裂)、このように葯室の一部に小孔が開く裂開を孔開と呼ぶそうです。 ツツジ科の多くやナス科ナス属 、ヒメハギ科ヒメハギ属に見られるそうです。
(参考サイト:Botany WEBの「雄しべ」)
オオウメガサソウをたくさん見ることができ、満足できる花さんぽでした。
2012.06.20 掲載
中途半端 (水曜日, 20 6月 2012 12:18)
オオウメガサソウ、名前もはじめて聞きました。
奇麗ですね~
六甲山でウメガサソウの自生地を2箇所知っています。
悲しい事に一箇所、昨日雨の中覗いて見ると土が盛られていました。石仏を納めた小さな石で造った社があるのですが、盛り土をしてツツジが植えられていました。残念です。
hanasanpo (水曜日, 20 6月 2012 14:29)
中途半端さん、ありがとうございます。
オオウメガサソウは北米やヨーロッパにも分布するそうですが、
日本では今回訪れた茨城県が南限とされていて、かつ、世界的に
見ても最南端であるそうですよ。
六甲山のウメガサソウは、本当に残念でしたね。
似た経験があります。群馬県の野反湖という場所で、たった
1ヶ所だけあったウメガサソウの咲く場所が、昨年、林道の
工事で土砂の下敷きになってしまっていました。その地では他に
ウメガサソウの報告は皆無であったので、かなりがっかりした
覚えがあります。
BOGGY (水曜日, 20 6月 2012 16:54)
今日は。
ネットの良い所は、こうして自分の居住地に無い花を知ったり、見られることですね。
ウメガサソウもオオウメガサソウも、名前を聞くのも初めてです。
じっくり拝見させて貰いました。ありがとう。
今週末は、山仲間の企画で、穂高連峰の麓の標高1500m前後の林道に花探しに行くというので、参加しようと思っています。
ここは野生のランが多い場所なので何が見られるか楽しみです。
hanasanpo (水曜日, 20 6月 2012 18:16)
BOGGYさん、こんにちは!
リクエストをいただきましたので、ウメガサソウのページも
作ることにしました。(してないって?(^^))
今週末のご予定、とても気になります。
林道ということは、車で行けちゃうのでしょうか?
私たちは、車で行けて、少し歩いたらすぐに花が見つかっちゃった
という極楽パターンが大好きな、超軟弱者夫婦です。
しかも大好きな野生ラン! もう興味津津でございます。
BOGGYさんが素晴らしいランたちに出会えますよう、お祈りいたします!
(後で成果をお教え下さい)
みすちる (木曜日, 21 6月 2012 05:27)
わたしも初めて聞く名前、可愛い花なんですね。
立ち入り禁止の場所でしか見られないのは寂しいですが、守ってあげないといけないのですね。
hanasanpo (木曜日, 21 6月 2012 07:46)
腰を下ろしてゆっくり眺めたくなるような、可憐な花でしたよ。
咲いている松林も、植物が豊富でとても雰囲気がよい場所でした。
以前このあたりは陸上自衛隊の射爆場であったそうです。その他の場所も原子力発電所など、一般人が近づいたり安易な開発ができない場所に残っているようです。
人間による開発で生育地を狭められ、でも人間の作った施設のおかげで守られもし・・
人間に翻弄されてしまっているのが、ちょっとかわいそうですね。
OKSガイド、『有』岡田製作所 (水曜日, 27 5月 2015 23:35)
自分もオオ梅傘を見に行ったことがあります、この花は確かアカマツと共生関係で育つのではないかとおもっています、共生関係では金襴銀欄が良く知られていますが、自分のうちは雑木庭園で椎木が沢山植えてあり金襴は100本も咲きます、紅花イチヤク草も、ツツジと共生関係で育ちます。このオオ梅傘のページは良く出来ていて感心します。
hanasanpo (水曜日, 27 5月 2015 23:46)
アカマツとの関係もご教授いただき、ありがとうございました。
またページをお褒めいただき、ありがとうございます。
植物は単独では生きられず、他の植物や菌類などとの複雑な相互関係の上に、生活環境が成り立っているのでしょうね。
ネット上には情報がたくさんあるのかも知れませんが、当サイトにおいては、自生地の詳細な場所を記載しないと決めた植物のページにおいては、閲覧者の方のコメントにも入れないよう、お願いしています。
このためごめんなさい、大変失礼ながら、場所の記述部分を削除させていただきました。ご理解いただきたく。