ウメガサソウは、高さ5〜10cmの常緑の草状の小低木で、海岸や山地の林内に生えます。 北海道〜九州に分布。 花の形が梅に似て、下向きにつくことが名の由来だそうです。
この花はなかなか状態がよい時期に見ることができませんでした。 早すぎて蕾であったり、遅すぎてボロボロになっていたり。 しかし福島県にコアツモリソウの観察に行ったときに山道の入口で出迎えてくれたこの花は、フレッシュな美人さんでした。 昨年の蒴果もまだ残っていました。
上の写真は群馬県の六合村(くにむら、現在は中之条町)にある野反湖で2008年に撮影したものです。 ウメガサソウを初めて見たのは、その1年前の2007年7月、まさにこの株でした。 林道脇にラン科の花がいないかと目を凝らしながら歩いているときに見つけました。 私は何の花かわからなかったのですが、Hiroが図鑑で見て覚えていて、すぐに「あっ、ウメガサソウだ!」と叫びました。 時期を過ぎ花はボロボロでしたが、初めて見ることができたことと、その場所が大好きな野反湖であったことがとても嬉しかった思い出があります。
過去に野反湖の花の調査をされた植物の先生のリストにも掲載されてなく、野反湖に咲く花はなんでも知っている中村一雄さんもご存知なかったことから、私たちが野反湖におけるウメガサソウの第一発見者である!と勝手に思うことにしました。 しかし残念なことに、2010年に林道の拡張工事があり、この場所は土砂に埋まってしまったのです。
さて、図鑑には「茎頂に直径1cmほどの白い花を1個、まれに2個つける」とあります。 右の茎には2個花がついています。 運がよいことに、まれな状態を見ることができたのでした!
もう少し「まれな2個つき」を見てみましょう。 左の花は開花していますが、右はまだ蕾です。 花茎には点状の微毛が生えているように見えます。 花に近い部分は赤味がかっています。 萼片は長さ6〜7mmで、先はややとがり、縁は不規則にこまかく裂けます。 萼片はピンっと平開し、花冠から離れています。 近縁のオオウメガサソウの萼片は小さく、長さ2mmほどで、花冠にペッタリ密着していました。
右の蕾は...うわ〜のっぺらぼう! 開花した左の花は直径約1cm。
(クロンキスト体系の 註1)イチヤクソウ科の花の雄しべの数は花弁の2倍です。 なので雄しべは10個。孔開葯なのでぽっかり孔が開いています。 ここから花粉を撒き散らします。 雌しべは全体が緑色で、太く短く、どっしりしています。 太い部分は子房で、柱頭はお皿のようです。 花柱は見えないようです。
ところ変わってこちらは長野県の菅平高原の林。 ウメガサソウと一緒にジンヨウイチヤクソウ、ベニバナイチヤクソウにコイチヤクソウも咲く、イチヤクソウの仲間のパラダイス。 上の写真の左半分は若い個体、右半分にはやや年季の入った個体が写っています。 年を重ねる毎に葉を加えていきます。 ここのウメガサソウの葉は脈の白さが目立ちました。
ウメガサソウの果実は蒴果で、やや扁平な球状です。 あっ、左の写真に1つの花茎に2個蒴果がついているのが写っていますね。 「まれに2個」とは言っても、それほど珍しいことではないのでしょうね。
葉は長さ2.0〜3.5cm。 先端から基部
まで浅くとがった鋸歯があります。
オオウメガサソウは先端から葉の中ほど
までしか鋸歯がありません。
註1)本ホームページの分類はエングラーまたはクロンキスト分類体系に従っていましたが、最新のAPG分類体系に従うことにしました。文は旧分類体系に従って作成したので、そのまま変更後のAPG体系の科に当てはまらない可能性があるものは、( )付きでどの分類体系に従った説明であるかを記載します。
2012.06.23 掲載
2013.09.27 クロンキスト体系からAPG体系への移行に伴い、
イチヤクソウ科からツツジ科へ変更。
ウメガサソウが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス
花さんぽ
かのん (水曜日, 27 6月 2012 09:34)
三年前福島の雄国湿地で、種になったのを写真に撮りましたが、湿地でも咲くのですね。
hanasanpo (水曜日, 27 6月 2012 14:08)
ウメガサソウは、どちらかというと乾いた林下で見ることが多かったですよ。
先日のオオウメガサソウがいた場所でも咲いていて、地表は苔むして湿り気を帯びていましたが、すぐ下は砂地でとても水はけがよいとのことでした。
雄国湿地は訪れたことがありませんが、ニッコウキスゲが見事だそうですね。
くうちやん (木曜日, 12 6月 2014 05:48)
毎日の様に登っている。山で、珍しい白い可愛らしいウメガサソウ見つけて感動しました!
hanasanpo (木曜日, 12 6月 2014 20:54)
ウメガサソウに出会えてよかったですね!
うつむき加減で控えめなところがよいですね。