フサタヌキモ

 

房狸藻 タヌキモ科 タヌキモ属

Utricularia dimorphantha

日本固有種  絶滅危惧1B類(Endangered)

 フサタヌキモ (房狸藻)  2012.07.28 新潟県
 フサタヌキモ (房狸藻)  2012.07.28 新潟県

 

 溜池からちょこんと顔を出した、かわいい花を見ました。

フサタヌキモです。 タヌキモ属は、池や水田、流れの緩い

小川などに生える、浮遊性の食虫植物です。 根はありませ

ん。 水中の葉に捕虫嚢(ほちゅうのう)と呼ばれる半透明

の袋状の器官をつけ、ミジンコなどの微生物を捉えて、栄養

分を吸収します。

 

 今回出会えたフサタヌキモは、捕虫嚢が非常に少ないこと

が特徴です。 その上とても小さいので、水上から観察する

ことはできませんでした(というかあまり注目しなかった)。

 

 開発や人間の生活にともなう水質汚濁のためにほとんどの

自生地で消滅し、自生地は秋田・新潟・岐阜県などでたった

数ヵ所しか残っていないそうで、絶滅寸前の種です。

.

 フサタヌキモの自生地の様子  溜池の右領域
 フサタヌキモの自生地の様子  溜池の右領域

 

 初めに見つけた場所は、細長い溜池の右側の領域で、このようにヒシに覆われていました。 フサタヌキモの数は少なく、ヒシの葉の間から遠慮がちに花を咲かせていました。 ヒシが多すぎて負けてしまっているのでしょう。

 

 溜池の途中に水辺の木が水面近くまで枝を伸しているため日照が遮られる領域があり、そこにはヒシもフサタヌキモもいませんでした。

 

 フサタヌキモ自生地の様子  溜池の左領域
 フサタヌキモ自生地の様子  溜池の左領域

 

 ところがその先の溜池の左端には、上の写真のようにフサタヌキモがたくさんいたのです! そしてなぜかヒシはまったく見当たりません。

 

 思うに、ヒシは溜池の右側で発生し勢力を拡大していったが、木で日照を遮られた領域では生きられず、その手前に留まった。 しかしフサタヌキモは浮遊性なのでプカプカ浮きながら暗い領域を通り抜けることができ、ヒシのいない明るい場所で勢力が拡大できた...。 なーんて勝手に想像を膨らませたりしました。

 

フサタヌキモ

 

長さ7〜14cmの花軸の先に数個の花をつけます。

 

フサタヌキモ
フサタヌキモ

 

 花冠は上唇と下唇に別れます。 下唇がすぼまった個体と、横に広がっている個体がいました。 下唇の基部はぽっこり膨らみ、赤い条があります。 距は下唇の下にあり前方に突き出すのですが、下唇より短いので見えていません。

 

フサタヌキモの閉鎖花

 

 花には水上で咲く開放花と、水中茎の数節おきにつく

閉鎖花の2種類があるのも特徴です。 閉鎖花は開花せ

ず、蕾の状態のまま自家受粉します。

 

多くの生き物を育む溜池

 

 溜池は多くの生き物を育んでいました。 いろいろな種類のトンボが飛び交い、カエルがジャンプしザリガニが這いまわる... キイトトンボが産卵していたり、ヒシの葉の上にショウリョウバッタの赤ちゃんがいたり... 昔はこんな溜池が全国にたくさんあったのでしょうね。

 

 タヌキモの捕虫嚢
 タヌキモの捕虫嚢

 

 最後に上の2枚の写真は、以前ある場所で撮影した、水槽の中のタヌキモです。 半透明の風船のようなものが捕虫嚢です。 フサタヌキモの捕虫嚢とは数や大きさ、形状も違うかも知れませんが、「捕虫嚢」と言われてもなかなかイメージが湧かないと思うので、ご参考で掲載しました。

 

2012.08.30 掲載

 

 

コメント: 5 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    あひる (金曜日, 31 8月 2012 10:22)

    おはようございます。あいかわらず暑いですね。
    涼しい風が吹きだすまで、あとひと頑張りですね。
    フサタヌキモ
    なまえから、ふさふさしたタヌキのしっぽを連想しましたが、ちょっと違ったみたいです(笑)
    この子も、頂にちょこんとお花をつけて、かわいいですね。
    プカプカと飄々と、窮地をすり抜けて! こういう生き方いいですねぇ。
    ヒシの上のショウリョウバッタちゃん。
    餌もなさそうなのに、なぜにここへ。
    お花と会話しているようにも見えますね。
    補虫嚢って、あぶくみたいなんですね。貴重な写真ありがとうございます。

  • #2

    hanasanpo (金曜日, 31 8月 2012 21:18)

    あひるさ〜ん、こんばんは~

    ホント、まだまだ暑いですねえ! もうそろそろ、涼しくなってほしいものですよね。

    フサタヌキモの「フサ」は、水中の葉が細裂して房状に見えることに拠るようです。
    でも葉をつまんで水から引き上げたら、きっとショボ〜ンと1本にまとまってしまうのでしょうね!(笑)

    多くの生き物がいる場所は本当に楽しいです。 ネコのようにみゃ~みゃ~と鳴くカエルもいて驚きました。
    トンボももっと撮影したかったのですが、飛んでいるトンボは撮れない!
    こんな場所がもっとたくさんできればいいのになあ。

    次回フサタヌキモを見る機会があったら、必ず捕虫嚢をじっくり観察してみたいと思います。

  • #3

    BOGGY (月曜日, 03 9月 2012 11:51)

    今日は。
    フサタヌキモの存在を始めて知りました。
    先日のナツエビネの観察の帰りに、山室湿原に寄ってみましたが、ここで始めて黄色のミミカキグサ?を見つけました。
    今ここでフサタヌキモをみると、花の形も良く似ています。一枚しかないので、花の詳細がわかりませんが、どうなのでしょうね。
    まあ似た花は沢山あるので、これも似ているだけかもしれまんね。
    花の写真、HPのURLに書いておきましたが・・。

  • #4

    hanasanpo (月曜日, 03 9月 2012 16:18)

    BOGGYさん、こんにちは!

    お写真拝見しました。 ミミカキグサに間違いないと思いますよ。
    山室湿原にもいるのですね。 フサタヌキモと同じ科・属なので似ていますね。
    ご参考まで、以前おくちゃんに案内していただいた湿原で見ることができた、ミミカキグサをこの下に掲載しました。
    小さいですが、よく見るとなかなか味わい深い花だと思います。

  • #5

    BOGGY (月曜日, 03 9月 2012 23:56)

    今晩は。
    ミミカキグサとフサタヌキモは親戚なんですね。
    どおりで似ているわけですよね。
    一つ勉強しました。
    ありがとう。

 ミミカキグサ  2010.08.28 岐阜県
 ミミカキグサ  2010.08.28 岐阜県
ミミカキグサ
 ミミカキグサ  2010.08.28 岐阜県

 

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