目的の半分は場所の事前確認で訪れたのですが、いくつか
咲き出していてくれました。 お初の花です。
花が少なく寂しい感じに見えますが、花期には少し早すぎ
たためです。 もう少しするとこの湿地を埋め尽くすほど
たくさん咲く・・かも?です。
国内では唯一、愛知県の限定された地域に自生するとされてきました。
環境省の生物多様性検索システムでは、今でも愛知県のみで確認となっ
ています(あれは情報が古いですが)。
栃木県では、1955年に宇都宮市で採集された標本を最後に絶滅したと
されていました。 ところが半世紀を経た2006年に、圃(ほ)場整備事業
の生態系調査中に本種が偶然発見されたそうです(公式発表は2007年6
月)。 専門家によると、今まで細々と生き延びていたものが「再発見」
されたのか、地中で休眠していた種子がなんらかの要因で発芽した「再
出現」であるのかは、わからないとのことです。
再発見でも再出現でも、非常に希少な種であることに違いはな
いので、なんとか生育できる環境が維持されることを願います。
図鑑によると「茎は円柱形で無毛、赤みを帯び、とくに下部は鮮やかな
赤色となる」とありましたが、全体的にさほど赤みを帯びない株も多く見
られました。これも栄養状態などが関係するのかも知れません。
図鑑のとおり、茎が赤みを帯びて
いる個体もちゃんといました。
図鑑に記載がありませんでしたが、蕾の状態で花柱が突き出していることに気づきました。 雌性先熟なのでしょうか? 開花した花の径は1cmほど。 開花した花では花柱は目立ちませんでした。 花冠が長いせいかも知れませんが、もし雌性先熟だとすると、役目を終えて倒れ気味になっているのかも知れません。
サクラソウ科の花は自家受粉を防ぐために雄しべが長いタイプと雌しべが長いタイプがありますが、本種もそのような特徴があるのかも知れません。 他の株ももっと念入りに調べれば、花柱が飛び出していない蕾もみつかったかも知れませんね。 来年以降の宿題です。
その他図鑑に記載がなかった項目として、線形の萼片の先端が赤くなることに気づきましたが、これは栄養状態や気候の変動を受けている可能性もあるので、本種の特徴として述べてよいかは不明です。
花糸は花弁と同じく白色で、無毛。 葯と花粉は淡黄色でした。 葯の裂開部の断面部と思われる部分がやや朱色がかった赤色をしており、この花の美しさにかなり貢献していると感じました。
今回は花の時期には早すぎ、この状態がトウサワトラノオだと思われてしまうとちょっとかわいそう。 いつか花が盛んな時期に再訪し、写真を追加したいと思います。 それまで元気でいておくれよ〜!
トウサワトラノオ
休耕田や湿地など水分が十分ある場所に生える多年草。茎は高さ20〜40cmで普通は分岐しないが、ときに上方で少数の枝を分ける。葉は倒披針形またはへら形で先端は鈍く長さ2〜4cm、幅5〜8mmで、基部は狭まり短い柄となる。花冠は5裂し白色で直径約1cm、裂片の先はとがる。萼片は倒披針形、長さ8〜10mm 愛知県と栃木県の限定された地域に隔離分布。花期は4月下旬〜5月中旬。
名の由来は本種が中国にも分布することから「唐」の国の湿った「沢」に咲く「虎の尾」のような花、から来たようです。 ネットでは「悼沢虎の尾」とされているサイトも見受けられましたが、どれも名の由来については触れられていなかったので、「悼」の字の由来が不明でした。そこで当サイトでは「唐沢虎の尾」としました。
2012.05.12 掲載
トウサワトラノオが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス
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