コイワザクラに出会えました。初対面です。素晴らしくかわいい花でした。
名前の通り、イワザクラに似ていますが一回り小さい花でした。 イワザクラの花の直径が2.5〜3.0cmであるのに対して1.8〜2.5cmほどです。 葉も、イワザクラが直径3〜7cmであるのに対して、1.5〜4.0cmと小形。 でも小さくても、と〜ってもかわいい花なのでした。
葉も小さくかわいいものです。 腎円形で不規則に浅く裂けます。 図鑑には「浅く5裂する」とありましたが、観察した葉は明瞭に5裂しているようには見えませんでした。 葉の表面には軟毛が生え増す。 これは無毛のイワザクラとの大きな相違点です。 表面はあまり光沢はありませんでしたが、マットだというほどでもありません。
花冠の筒部はイワザクラと比べると短いです。花柄にわずかに毛があり、茎には開出毛が生えていました。下はイワザクラです。
サクラソウ属なので、花柱が突き出した長花柱花と、花柱が見えず雄しべだけ見える短花柱花があります。 この構造は昆虫による送粉の効率を高め、なるべく自家受粉を避けるためです。 写真をクリックすると少し大きく見ることができます。
花は若干疲れかけてきており、時期的にはすこ〜し遅かった
のかな? という印象を受けました。 但しまだ蕾も残ってい
たので、これから咲く花もあるでしょう。 上の写真では葉は
他の植物の歯に隠れてしまっています。
どの花も微妙に形や色合いが異なり、まったく区別もつか
ないほど似ている花はありません。 その中でも上の写真の
花は、花弁基部の白い部分が広く一際個性的でした。
開花直後の花の色は一際濃かったです。
本当に品のよい色です。
コイワザクラでも気になるものが見つかりました。 花冠は筒部から5つに裂け、更に2つに裂けます。 しかしよく見ると、2つに裂けのほぼ中央部に、小さな突起があるのです。 この小突起は、今まで見たことのあるサクラソウ属では、サクラソウ、シナノコザクラ、ヒナザクラ、そして本種の変種であるクモイコザクラには無く、本種とイワザクラにはありました。
いろいろな図鑑やネットで調べても、この小突起に関する記載は見つけられませんでした。 これはいったいなんなのでしょう? 小さな突起ですが、種類によりあったりなかったりなので、気になります。
自生地の様子です。 写真にはあまり写っていませんが、下の方は土砂が崩落し今にも崩れ落ちそうです。 この小さな自生地自体が、かなり危機的状況に陥っていると感じました。 保護活動などは行われていないようです。 下手に余計なことをしてそれが裏目に出るのも困りますが... 何か手を打たないと、遠からず消えてしまうのではないかという恐れを抱きました。
毎年ここにコイワザクラを見に来るのが楽しみという、年配のご夫婦とお話をする機会に恵まれました(いつから通われているのかは聞き逃しました)。 時期が早すぎた年などは、何度も足を運ばれるそうです。 私たちは初めてで過去の状況を知らないので、さぞかし花は減ったのでしょうねとお尋ねすると、意外にもこれまでで一番花が多いとおっしゃいました。 こんなにたくさん咲いているのは見たことがないと。
多くの花が咲いてくれたおかげで私達もたくさんの花を見ることができたのですが、私は逆に不安が頭をよぎりました。 もしかすると自生地の崩壊が近いのを、花たちが感じ取っているのではないでしょうか? なんとか子孫を残そうと、死に物狂いで花を咲かせているのかも知れません。 そう思うと、ますますなんとかしなくてはという思いが強まります(何もできないのですが...)。
コイワザクラ
山地の岩場に生える多年草。葉は柄があり、軟毛が多く、腎円形で直径1.5〜4.0cm。縁は浅く5裂する。高さ5〜10cmの花茎の先に1〜5個の花を散形につける。花冠は赤紫色で直径1.8〜2.5cm。花期は5月。本州(関東地地方西南部)、中部地方南部、紀伊半島に分布。
2012.05.20 掲載
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