亜高山帯から高山に生える、高さ5〜15cmの多年草です。 本州の中部以北と、北海道に分布します。 花期は5〜6月(*1)。
小さく、繊細な印象を受ける植物です。 花の直径も1cmほどしかなく、イチリンソウ属の中では最小の部類になります。 このことが「姫」の名の由来でしょう。 可憐な白い花を咲かせます。
ちなみに「一華」は「花がひとつ」という意味で、イチリンソウ属の、花が茎の先にひとつだけつく植物の名前に用いられています。 他にはアズマイチゲ、キクザキイチゲ、ハクサンイチゲやユキワリイチゲなどがあります。 またイチゲの名はつきませんが、イチリンソウ、ニリンソウ、サンリンソウなども同じ属の仲間です。
あまり群れることがなく、1株・2株とぽつんと咲くことが多いヒメイチゲですが、ここでは10株近くが集まって咲いていました。
ヒメイチゲは、根生葉と茎葉の形が大きく異なります。 根生葉は地下茎から柄を伸ばし、3出複葉で、広卵形(丸っこい)です。 葉の縁には鈍頭の鋸歯があります。
根生葉と同じ地下茎から、花をつける茎を伸ばします。 花のすぐ下には、短い柄がある3個の茎葉が茎を取り巻くように輪生し、それぞれの小葉は、3全裂します(葉の基部まで3つに裂ける)。 裂けた葉の裂片は細長く、丸っこい根生葉とはずいぶん形が違います。 裂片には鋸歯があります。 次の写真#4もご覧ください。
私たちの経験では、根生葉が見えない場合も少なからずありました。 地面近くで葉を展開するので、落ち葉や他の植物の影に隠れて見えなかった可能性もあります。
また撮影は10年以上前で、正直いいまして、当時は根生葉などあまり気にせずに撮影していた可能性もあります。
#4は上方から撮影したものであり、3個の柄がある茎葉が輪生する様子がわかると思います。 またそれぞれの茎葉は3深裂し、中裂片が側萼片よりも目立って長い。 各裂片の中央あたりより先に、片側数個の鋸歯があります。
この写真は超ピンボケで、本来は人様にお見せできるようなクオリティではありませんが、他に茎葉の様子がよくわかる写真がなかったので掲載することにしました。
#5もピンボケながら、茎葉と根生葉が写り込んでいるので、掲載します。
#6はヒメイチゲの花です。 径は1cmほどと小さい。 花弁はなく、白く長楕円形で花弁状に見える部分は、萼片です。 まるで花弁のように、脈が走っています。萼片は花弁の役割も担っています。 萼片の数は通常5個ですが、写真#3の花は6個あります。 キンポウゲ科の植物では、萼片の数の変異はしばしば起こるようです。
雄しべの葯は白色。 雄しべの個数は、図鑑(*1)では「10数個」とあります。
上の写真の花ではそこまで多くは見えず、8〜9個に見えました。 雌しべの数は「たくさん」です。
ヒメイチゲの果実は痩果で、その集合体が金平糖のような形になります。
上の2枚の写真はヒメイチゲの果実です。 画質の劣化を覚悟で、#8の一部をトリミングしたのが#9です。 拡大した理由は、果実全体に生える白っぽい短毛をお見せしたかったからなのですが... 見えますか? クリック(タップ)すると少し拡大します。 果実の中心部より、周辺部に注目すると短毛が見えるかも知れません。
< 参考・引用させていただいた文献・図鑑や外部サイト(順不同・敬称略) >
文献・図鑑などの著作物や、個人・法人のWEBサイトには著作権があることをご理解の上、ご利用下さい。
*1 山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花 山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.238
2019.05.15 掲載