山地や亜高山の落葉樹林内に生える、高さ15〜30cmの多年草です。 本州中部以北と北海道の温帯上部~亜寒帯に分布します(*2,*3)。 花期は5〜7月。 和名は1本の茎に3個の花をつけることから来ています。
根茎は太く短く、数個の根出葉と1〜3本の花茎を束生します。 また根茎は匐枝を出して繁殖し、しばしば群生します(*2)。
花はいつも1本ほ花茎に3個つくとは限らず、1〜4個をつけます。 それぞれの花は時間差をおいて順番に成長し、同時には咲きません。 その理由については、ニリンソウのこの項をご参照下さい。
写真#3では2本の茎葉からそれぞれ3個の花をつけています。 最初に咲いた花(第1花)はすでに果実になり、第2花・第3花が花として残っている状態です。 花柄の長さも異なり、先に成長した花の花茎が長い。
#5の一人で咲いていた個体の写真で形態を説明します。 地面近くにあるいくつかの大きな葉は根出葉(根生葉)です。 根茎から花茎と同じ場所に束生します。 長い柄がありますが、写真では陰になってしまいよく見えません。 根出葉は3出複葉で、各小葉には短い柄があり、側小葉はさらに2深裂します。 各片はやや2回羽状に欠刻します(*2)。 ニリンソウの葉に見られるような、白っぽい斑紋はありません。
この個体では、花茎は1本だけです。 茎頂に白い花を1個つけます。 花のすぐ下にある葉は、茎葉です(総苞とも呼ばれます)。 次の写真で茎葉を詳しく見ます。
#6はサンリンソウをほぼ真上から見たものです(#5とは別の個体)。 茎葉(総苞)は3個あり、輪生状につきます。 茎葉には柄があり、3深裂し、裂片はさらに2〜3裂します。 柄があることで、柄がないニリンソウと区別できます。
茎葉のつけ根には、茎葉よりかなり小さい苞が1対〜数個あります。 この苞はニリンソウでも観察されましたが、イチリンソウではありませんでした。 ニリンソウのこの項で述べましたが、どの図鑑も苞について解説する気はないようです。
花柄は茎葉・苞と同じ場所から出ます。 写真では花茎を途中で切っています。また1個の花は画面外にあり見えません。
#7は、サンリンソウとイチリンソウ・ニリンソウの茎葉の形状比較です。 それぞれ3個輪生する茎葉の1個のみを示しています。 形状の比較だけで、大きさの比較はできません。
形状のイメージを掴んでいただく目的で掲載しました。 葉は筆者が任意に選んだもので、それぞれの種の標準的な形状であるかの保証はできません。 また画像編集の過程で多少歪が出ている可能性があります。
サンリンソウの花は径が1.5cmほどで、ニリンソウと同じかやや小さい。 花弁はなく、花弁状の白色の部分は萼片です。 萼片が花弁の役割を担っています。
萼片は卵形で、ふつう5個ですが、6個の花も珍しくありません。 #8は若い花で、花糸が短く・立ち上がっており、花の中心の雌しべの近くに集まっているように見えます。 #9は成熟した花で、花糸はやや伸びて、外側に倒れて雌しべから離れているように見えました。
図鑑(*2)には「雄しべは多数で黄色、雌しべはやや少数で微毛のある子房がある」とありました。「多数って、何個? やや少数って、何個?」と思い、例により数えてみました。 結果は#8:雄しべ51個・雌しべ8個、#9:雄しべ41個。雌しべ12個でした。 雄しべは確かに多数ですが、雌しべはそれよりかなり少ないと言えると思います。
撮影情報:
#8:2008.06.14 栃木県日光市 alt=1530m付近
#9:2014.06.01 長野県松本市 alt=1370m付近
#10はサンリンソウの花の側面です。 萼片の外面には短毛が生えます。 手前や右側の萼片に生えているのが見えるでしょうか? 花柄にも屈毛がまばらに生えていました。
#11は受粉が成功し、子房が膨らんだ花です。 緑色のソーセージのような部分が子房です。 子房には微毛が生えている(*1)とのことですが... 画質の悪化を覚悟で激トリミングしたのが#12です。 たしかに、微毛があるような...。
< 参考・引用させていただいた文献・図鑑や外部サイト(順不同・敬称略) >
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*1 牧野 新日本植物圖鑑 北隆館 1961年6月30日初版発行 p.178
*2 日本の野生植物 草本2 離弁花類 平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.69
*3 山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花 山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.238
*4 Plants Index Japan 捕れたてドットコム 比較画像 イチリンソウの仲間(本州以西編)
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最終閲覧:2018.04.28
2018.04.28 掲載