かのんさん撮影の写真を追加しました。
念願のカザグルマを偶然見つけることができました。 カザグルマであろうと思われる花は以前にも見たことがありますが、なんとなく園芸品種であるか、人が植えたものかも知れないという疑念を抱かせるものでした。 今回の花はそのような印象はなく、周辺の環境を見てもわざわざ植えるような場所とは考えにくく、野生種である可能性がとても高いと感じました。
和名は花の形を子供のおもちゃの風車(かざぐるま)に見立てたものです。 上の写真では下側の花がまだ開ききってない状態ですが、本当に風車にそっくりです。
いろいろな植物が密生した場所でした。 カザグルマは
ツル性です。 他の植物にしっかりからみついていました。
当日は雨だったので推測になりますが、ここは午前中は日
の光がしっかり当たり、午後は山の陰になりそうな場所で
した。 地面は湿った感じです。
Hiroは雨の中を時速40kmで走る車の中から、この花を
見つけました。 「カザグルマなんて、咲いてないかね〜」
などと冗談を言い合っていた後だったので、びっくりしま
した。 思わず「でかしたぞ!」と言ってしまいました。
道が狭い山陰から急に開けるような場所だったので、手前
方向からは見えません。 一人で運転していたら、間違い
なく見逃していたでしょう。
花の径は12cmほどもありとても大きいですが、エレガントで、高貴な感じも受ける花です。 白い花弁に見えるのは萼片で、花弁はありません。 カザグルマの萼片の数は基本は8個ですが、極めて変異の多い花なので8個とは限らず、6〜13個であることが多いそうです。 上の花の萼片は7個でした。
力強さを感じます。 女王の風格です。 やはり、原種と思えます。 この花を探しに、自生の情報があった群馬県の川原湯温泉に行ったりしました。 それが、今まで何度も通ったことのある、足利市の県道脇にいた。 足利市にはHiroの実家があります。 「灯台下暗し」とはこのこと。 どうして今まで気づかなかったのだろう?
雄しべの数は「たくさん」です。 できる限り数えてみようと思いましたが、中心部で重なっている部分が数えられず、途中で止めました。 100個位あるかも?知れません。 花糸はややクリーム色がかった白色で、扁平な形をしています。 丸い筒状だったものを、押し潰してたいらにした感じ。 葯は暗紫色で、先端が細くなり、ややとがった印象です。
花粉は、扁平な葯のエッジの部分から出てきているように見えます。
雌しべは雄しべより短く、微かにクリーム色がかった白色です。
雌しべの数も、多そうです。
花の裏側です。 これを見て「立派な花弁に見える
ものは、やはり萼片なのだなあ」と納得です。
(写真は右に90度回転させています)
カザグルマの葉です。 他の植物に複雑に絡みついていたので、最初はどこに葉がついているのかわからず。 花から指で触って茎を下にたどり、これが葉とわかりました。 茎の上部のためか、花の大きさと比べると葉はちっこいです。写真9の葉で、長さ4〜5cmです。茎の中部〜下部の葉はもっと大きいようです。
開花し始めた若い花です。 萼片が薄く緑色がかっていました。
このページの写真の多くは、白い萼片をホワイトバランス補正の白の基準として使用しました。 それほどこの花の色はPureな白だと思います。
写真10 では、右下の花を白の基準としています。 したがって、お使いのパソコン画面で右下の花が「白」に見えたら、中心の花の薄緑色も思惑通りに再現されているものと思います。
今気づいたのですが、写真3の花は萼片が8個ありました。 大きめに写した 写真11 を掲載します。 同じ場所でも、株により萼片の数に違いが生ずるのですね。 これも新たな発見です。
県道脇でアクセスが非常に容易、夜はおそらく極端に人通りの少なくなりそうな場所です。 盗掘が心配です。 昔は多くの場所で咲いていたのでしょうが、今や準絶滅危惧種です(環境省レッドリスト、栃木県とも)。 人間の開発や盗掘、環境の悪化に耐え、辛うじて生き延びているのです。
「来年も見に来るからね。頑張って生き延びるんだよ」そう花に語りかけて、帰路につきました。
カザグルマ
本州、四国、九州の林縁や原野に生える、落葉性のつる植物。 茎は褐色で木質化し、細く長く伸びる。 葉は3〜5個の小葉からなる複葉で、葉柄は長く、これで他の植物などのからみつく。 花期は4〜5月。
2011.05.31 掲載
2011.06.02 かのんさん撮影の写真と、新たな疑問?を追加
いつも当サイトを訪れてくれているかのんさんが、私たちが見た花と同じ花を観察され、写真を送ってくれました! 私たちが見てから、4日後(正確には96時間と30分後)の写真で、花がどう変わったのかが、よくわかります。
かのんさんに本サイトで使用することを快諾していただけたので、写真を掲載させていただきます。(かのんさん、ありがとうございます!)
4日後の写真を見て、あることに気づいたのです。 正しいか、間違っているかわからないのですが... まずは写真をご覧下さい。
写真12は、写真1・2、4〜7 の4日後の姿です。 萼片の縁が薄茶色に変色し始めています。 カザグルマの花の見頃の期間は、それほど長くないのだとわかりました。 完全に開花後、元気な姿を保つのは3〜4日間なのかも知れません。これについては、たくさん見ている方のご意見をお聞きしたいところです。
気になるのは「しべ」です。 写真12と写真1を見比べると、外周部の雄しべが外側に倒れ、小さかった雌しべが大きくなって雄しべから突き出ています。もしかするとカザグルマの花は雌雄異熟で、雄性先熟なのでは? と思ったのです。
念のため書きますと「雌雄異熟」とは雌しべと雄しべの成熟する時期が異なるということです。「雄性先熟」は、雄しべの方が雌しべより先に成熟するという意味です。(雌しべが先なら「雌性先熟」といいます)
カザグルマの花は以下のプロセスを経て咲くのではないかと推測しました。 以下はシロウトの勝手な推測であることをお断りしておきます。
1.雄しべが先に成熟し、葯から花粉を出す。 この時点では雌しべは未熟で
小さく、雄しべの中に隠れるようにしている。
2.雄しべが役目を終えると、外側に倒れて、雌しべから離れる。
3.雌しべが成熟して大きくなり、受粉できる状態になる。
雄しべが雌しべから離れるのも、雌しべが後から成熟するのも、自家受粉を避けたいからに違いありません。
「雌雄異熟」の花は、たくさんあります。 たとえばハルリンドウは上で述べたのと同じく、雄性先熟であることが知られています。 本サイトのハルリンドウのページでも述べていますので、もし興味があればどうぞ。
さらに気づいたことがあります。
写真13は、開花直後の写真10の花の4日後の姿です。 まだ若い花ですが、外周部の雄しべは、雌しべから離れるように倒れ始めています。 注目すべきは、中心部、つまり雌しべに近いところにいる雄しべが、花粉を出していないことです。
シロウトの私は、また勝手な想像を膨らませました。 つまり、たくさんある雄しべはすべて同じではなく、2種類あると思うのです。
外周部の雄しべは、多くの花の雄しべと同じように、花粉を出して送粉者(昆虫)に花粉を渡すことが最大の役割です。 それに対して内周部の雄しべは花粉を出さずに、外周部の雄しべが出す花粉を雌しべが自家受粉しないようにブロックする役割があるのではないでしょうか?
花粉を出す雄しべと雌しべは、至近距離に位置します。 小さな花粉をブロックするためには、「花粉ブロッカー」の雄しべを密生させて、強固な「壁」を作る必要があります。 だから、カザグルマの雄しべはこんなに数が多いのではないでしょうか?(100個以上ありそう)
カザグルマには、花弁がありません。 白い大きな花弁状のものは、萼片です。 残されたのは雄しべと雌しべのみで、これだけでなんとか自家受粉を防ぐ仕組みを作り上げたのではないでしょうか? そう考えると、カザグルマは高度に進化した植物と言えるのかも知れません。
シロウトの勝手な夢想にお付き合いいただき、ありがとうございました。
写真14は、茎の下部(中部かな?)の葉と茎です。 私たちが撮影した茎の上部の葉の近辺では、茎の毛が良く見えませんでした(写真9)。 しかしこの写真では茎に白い毛が密生しているのがわかります。「茎に毛がある」が正しいですね。
2010年に群馬県川原湯温泉で見ることができた花を追加。
写真15、16は、2010.05.29に群馬県の川原湯温泉で撮影したものです。 川原湯温泉はご存知の通り八ッ場ダム建設のためダム湖底に沈む運命にありましたが、政権を取った民主党がダム建設中止をマニュフェストに盛り込んでいたため、今後の展開は不透明です。
それはともかく、以前より川原湯温泉近辺でカザグルマが自生するとの情報は得ていたので、気合を入れて探しに行ったのですが、呆気無く見つかってしまいました。 しかし見つけた場所が狭い温泉街にひしめく旅館や民家の庭先であったので(廃屋でしたが)、園芸種ではないかと疑いを持ち、ホームページへの掲載は差し控えていました。
しかしその後、同じ地で花の大先輩が撮られた写真(もちろん自生種)などと比較しあまり差異はないと判断し、掲載することにしました。 完全に自生のものではないかも知れませんが、少なくとも園芸種ではなく、近隣の山から移植したものではないかと想像しています。
斎藤啓治 #9
(水曜日, 24 5月 2017 18:20)
一昨日から一斉にカザグルマが咲き始めました。数か所に群生地があり、日陰にしっかりとした花でまとめています。今回知ったことは、開花まえの蕾の姿です。ラッキョウのようなそれでいて白い高貴な感じがしました。ここ岐阜県の中津川市の蛭川地内にある「東山温泉」の周囲にはこの数日間人知れぬ楽しさを毎日頂けるものと、昨年の不作を補うように、包んでくれることでしょう。
カザグルマの季節ですね。蕾の姿は、まだ見たことがありません。もしよろしければ、画像掲示板でお見せ下さい。
関連ページ:Dairy-Hiroダス 2011.05.28
2011.06.02 掲載
2011.06.04 かのんさん撮影の写真を追加
2011.06.09 川原湯温泉のカザグルマを追加
カザグルマが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス
これらも キンポウゲ科センニンソウ属
中途半端@兵庫 (水曜日, 01 6月 2011 06:33)
立派なカザグルマですね。出会った時は舞い上がったでしょう。想像できます。自分も今年初めて自生のカザグルマを見る事が出来ました。2株咲いていましたが、それぞれ貧相な株で花は一輪ずつ。野池脇で地面は湿って手入れが行き届いた山際で日はよく当ります、年に数度草刈りがされているようです。そんな訳で大きな株にはならないのだろうと思われます。
hanasanpo (水曜日, 01 6月 2011 07:22)
ありがとうございます。
まさかあんな場所に咲いているとは、思ってもいませんでした。
特殊な環境には見えないので、想像していたよりも自生ポイントは
多いのかも知れません。 地元の方にとっては昔から裏山にある
見慣れた花で、気に留めてもいないのかも知れません。
来年は近辺の里山をもっと詳しく探索してみようと思います。
かのん (土曜日, 04 6月 2011 06:07)
写真を使って頂き、嬉しいような恥ずかしいような^^
hirokenさんの植物に対する真摯な姿勢と研究熱心さには、いつも頭が下がります。
それにしても本当に、メシベを中心付近のオシベがブロックしているように見えますね。
こういう風に植物の不思議に接すると、同じ花を何度でも観察し、最後まで見届けたくなりますね。
hanasanpo (日曜日, 05 6月 2011 01:05)
かのんさんのおかげで、いろいろな面から考察することができましたよ。ありがとうございます。
以前は花が元気に咲いている時ばかり追い求めていましたが、花芽の時からつぼみ、開花〜終わりまでの状態、そして果実や越冬する姿... 花の一生を通して見るようになって、ものすごく観察の幅と面白さが増しました。
今日は渡良瀬遊水地に行って、始めて観察会に参加して来ました! 見たかったタチスミレに出会えました! 明日にでも写真をアップしたいと思います。
yuu (水曜日, 21 5月 2014 06:55)
かざぐるまの記事拝見し 感動しています カザグルマに見せられた一人ではありますが ただ喜んでいるだけの自分との差に ショックを受けています が
hanasanpo さんのような方に難しい観察はお願いして これからも楽しんでゆきます
hanasanpo (水曜日, 21 5月 2014 21:29)
コメントをありがとうございます。
花を観察する方法は人それぞれですが、花を愛でる心は皆同じ と思いたいですね。
長野の小林一茶 (月曜日, 24 4月 2017 23:17)
昨年川原湯温泉に行きましたがダム工事の規制あり先に進めませんでした。まだカザグルマは見れてないです自生のカザグルマ是非見てみたいです
HiroKen (火曜日, 25 4月 2017 04:14)
川原湯温泉は残念なことですね。貴重な自生地が失われてしまうようです。カザグルマは数は少なく滅多に出逢えませんが、林縁などにいる白花はよく目立つので、諦めずに探してみて下さい。