山地やふもとの林縁に生える、高さ10~30cmの多年草です(*4)。 径4cmほどの白い花を1個つけます。 ニリンソウなどより全体的に大きく花も一回り以上大きいので目立ちます。 本州・四国・九州の暖帯上部~温帯に分布(*2)。 花期は4〜5月。
地下の根茎は横に這い、しばしば匐枝を出して栄養繁殖で増えて群生します。
和名は茎の上に1個の花がつくからです。 確かにほとんどの場合は1個の花しかつけませんが、十分に生育した株は、ニリンソウのように2個の花をつけることがあります。 #3の左側でくっつくように咲いている花は、同じ株から出ています... 花茎の基部が見えないからわからないじゃないかと? それでは右端の花をご覧下さい。 花は1個落ちてしまっていますが、花柄は確かに右端の花と同じ場所から出ています。
写真#4も2個の花をつけたイチリンソウです。 ニリンソウでは3花の個体は珍しくないので、イチリンソウでも2花の個体はそう珍しくないのかも知れません。
花のすぐ下にある葉は茎葉で、総苞ともいわれます。 次の写真で少し詳しく説明します。
根出葉(根生葉)は、根茎の先から出るので、花茎の基部からは少し離れた場所に出ます。 ニリンソウのように花茎と同じ場所から葉柄が出ないことが特徴です。 上の写真では、地面付近にある少し小さな葉が根出葉です。 長い柄がありますが、写真では落ち葉に隠れて見えません。 根出葉は1〜2回3出複葉で、小葉は羽状に深裂し、裂片は欠刻します(*2,*3)。
蛇足ですが、使用している図鑑のひとつ「山に咲く花」(*4)の解説では、「根生葉はない」と言い切っています。 花茎と同じ場所には出ないですが、根生葉(根出葉)はあります。 誤解を与える表現なので、修正されることを望みます。
#6は#5の一部を拡大したものです。 茎葉には矢印で指し示した部分の柄があります。 柄の基部は多少鞘状に広がっています(*2)。 ニリンソウの茎葉には柄がなく、葉は茎に直接ついているので、重要な識別ポイントです。 尚、ニリンソウにある小さな苞はありませんでした。
写真#7はイチリンソウとニリンソウの茎葉の形状比較です。 それぞれ3個輪生する茎葉の1個のみを示しています。 形状の比較だけで、大きさの比較はできません。
形状のイメージを掴んでいただく目的で掲載しました。 葉は筆者が任意に選んだもので、それぞれの種の標準的な形状であるかの保証はできません。 また画像編集の過程で多少歪が出ている可能性があります。
花の径は3〜4cmで、2cm前後のニリンソウと比べると明らかに大きく、見間違えることはなさそうです。 他のイチリンソウ属の植物と同様に花弁はなく、萼片が花弁の役割を担います。 本種の萼片は楕円形で白色ですが、裏面は紫色を帯びることがあります。 萼片の数はふつう5〜6個です。
雄しべの葯は淡黄色で、白色の萼に映えて美しい。 図鑑(*4)には「雄しべ雌しべとも多数」とありました。 「多数」って何個だ?!と思い数えてみました。 #9の花においては、雄しべ約105個、雌しべは見える部分を数えて倍にし、推定52個でした。 確かに多数です。
イチリンソウの花の後ろ姿です。 紫色というより、ほんのりピンクがかって優しいイメージ。 正面の華やかさや力強さとは、ちょっと違う印象でした。
< 参考・引用させていただいた文献・図鑑や外部サイト(順不同・敬称略) >
文献・図鑑などの著作物や、個人・法人のWEBサイトには著作権があることをご理解の上、ご利用下さい。
*1 牧野 新日本植物圖鑑 北隆館 1961年6月30日初版発行 p.176
*2 日本の野生植物 草本2 離弁花類 平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.69
*3 山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花 山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.235
*4 山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花 山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.238
*5 Plants Index Japan 捕れたてドットコム 比較画像 イチリンソウの仲間(本州以西編)
※ 外部サイトは、それぞれの運営者の都合により、変更・削除されることがあります。
最終閲覧:2018.04.28
2018.04.28 掲載