ワニグチソウ

 

鰐口草 キジカクシ科 アマドコロ属

Polygonatum involucratum

 ワニグチソウ (鰐口草) キジカクシ科 アマドコロ属  2012.05.31 東京都 高尾山
ワニグチソウ (鰐口草) キジカクシ科 アマドコロ属 2012.05.31 東京都

 

 山野の林内に生える、高さ20〜40cmの多年草。

茎の上部には稜角があります。 遠目にはミヤマナ

ルコユリに似ていますが、花柄にミヤマナルコユリ

にはない特徴的な苞があるなど、ずいぶん違います。

 

ワニグチソウの葉
 ワニグチソウの葉

 

葉は互生し、長さ5〜10cmで全縁、

先端はややとがり葉脈が目立ちます。

 

ワニグチソウ 2012.05.31 東京都 高尾山

 

葉腋から垂れ下がる花柄の先に2個の苞がつき、その内側に抱かれる

ように淡緑色の花が2個つきます。 花は筒状花で長さ2.0〜2.5cm。

 

ワニグチソウ 2012.05.31 東京都 高尾山

 

 花はこのようになっています。 半開した2個の包葉が

特徴的です。 鰐口とは、社寺の軒先に吊るされ、お参り

の時に布縄で打ち鳴らして神仏に来意を伝える凡音具です。

おそらく見たことがない人はいないでしょう。 ワニグチ

ソウの名の由来は、包葉がその鰐口に似ていることからつ

けられたそうです。

 

 しかし... 私にはどうしても似ているようには見えません。

たしかに鰐口は横から見ると切れ目があり、鈴を平たく潰

したような形をしていますが... だからと言ってこの苞が

鰐口に似ているとは思えないのでした...。

 

ワニグチソウ 2012.05.31 東京都 高尾山

 

 筒状花は下部が太い「下膨れ型」です。 まだ先端が

開いていません。 やや暗い林縁でしたが、上の写真は

リングライトを使ったので花の質感が出せたと思います。

あ、上側の花の右の苞の下に小さな虫が隠れていますね。

 

ワニグチソウ 2012.05.31 東京都 高尾山

 

 一つだけ開いている花がありました! これを見ると6

個の花被片が根本から合着し、先端部分で6裂している

のがよくわかります。 柱頭が花被片より若干飛び出し

ています。 すぐ下に雄しべの葯が見えます。 内部に

隠れて見えませんが、花糸は先端近くまで合着し、軟毛

はないそうです。 6裂した花被片の先端に、白っぽい

短毛?のように見えるものがあります。 これは何でし

ょう?

 

ワニグチソウ 2012.05.31 東京都 高尾山

 

 もっと寄ってみます。 裂片先端にある白いものは

「短毛」ではないようです。 花柱先端部の白っぽい

ものと似ています。 もしかして、花粉? いえ、葯

はまだ裂けていないように見えます。 何かな? お

わかりになる方がいたら、教えていただけると嬉しい

です。

 

ワニグチソウ 2012.05.31 東京都 高尾山

 

 少し奥にある、放射状の6個の支柱のようなものは何でしょう? 花の基部から細長く伸びる花糸が、ちゃんと花の中心に来るようにガイドする機能を持っているのではと想像しました。

 

 高尾山には、ワニグチソウとミヤマナルコユリの交雑種と言われるタカオワニグチソウがいます。 苞は3個あり、花を包むのではなくやや反り返るようになり、花はワニグチソウより細く、色も白っぽくなるようです。 今回ミヤマナルコユリは周辺に多くいましたが、タカオワニグチソウには出会えませんでした。いつか見てみたいものです。

 

 今回は山で出会った方のおかげで、花を見ることができました。 オオバウマノスズクサを観察していたときにやっていらした、ウエスタンハットを被った大竹まこと似の男性。 とても感じのよい方で、いろいろ為になるお話を聞かせてくれました。 しかもご親切にもワニグチソウ自生地の情報を教えてくれたのです。 最初にオオバウマノスズクサの自生地を教えて下さった年配の紳士といい、この方といい、今日はよい方たちに出会えて幸運です。 おかげで探し回ることなく、ワニグチソウに初対面を果たせました。 そう、分布は北海道から九州までと広いのですが、今までお目にかかっていなかったのです。

 


2012.06.08 掲載

2013.10.08 APG分類体系準拠に伴い、ユリ科からキジカクシ科に変更

2018.04.11 鰐口・凡音具の説明のため外部リンク追加、苞の図示など少修正

 

 

コメント: 6 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    草刈りとしお「ペンネーム」 (金曜日, 08 7月 2016 21:00)

    実家から車で10分程度の山で「勝手に草刈りボランティア」をしています。 その山でこの花に出会いました。見ても名前も分からず、図鑑で名前を知りこのホームページにたどり着きました。 こちら北海道には名前の分からない草花が多く有り、この花もその一つ。 熊笹を刈、山を登って行くとこうして突然出会えるのが楽しいですね。

  • #2

    HiroKen (日曜日, 10 7月 2016 02:59)

    コメントをありがとうございます。ワニグチソウ、北海道でも咲いているのですね。
    草刈りボランティア、ご苦労様です。ササがはびこると、他の植物の花が見られなくなってしまいますよね。

  • #3

    つくしちゃん (木曜日, 28 5月 2020 15:32)

    昨日、コロナ自粛が解除になり、大垂水峠から小仏城山に行く途中で、鰐口草を生まれて始めて見ました。葉っぱの下に花が咲いているから、初心者の私には見つけられません。近くにいた若い女性に教えていただきました。とても可愛くて可憐な花に出会い、今までの暗いニュースの中、癒やされました。

  • #4

    Ken (木曜日, 28 5月 2020 19:06)

    ワニグチソウに出会えて、よかったですね! 私たちもお山を歩きたい気持ちでいっぱいです。

  • #5

    すみれ (金曜日, 29 5月 2020 20:06)

    学校の生物の授業で
    ワニグチソウが、校内に咲いていたと教えてもらいました。
    5月18日に花を見つけたそうです。
    月曜日でも、まだ花を観られるでしょうか?

  • #6

    Ken (金曜日, 29 5月 2020 20:31)

    うーん、10日前に咲いていたとすると、ちょっと厳しいかも知れませんね。でも、花が咲き終わった後の姿を見ることも、その植物の一生を知る上で重要なことだと思いますよ。花はなくとも葉は観察できますしね。 それと、同じ場所に咲くものでも、少し時期をずらして咲くことがあるので、もし学校に複数の株があったなら、のんびり屋さんの株の花がまだ残っているかも知れませんよ。

 

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  2012年5月31日 高尾山花探しの巻