昨年(2010年)の11月に高尾山にキチジョウソウを見に行ったときに、偶然ツルギキョウの果実を見つけました。 まだ見たことがない花でしたし、なかなか出逢うことのできない希少種なので、見つけたHiroは「来年は花が見れる!」と大変喜んでいました。 ところが今年、花の時期にワクワクしながら訪れると、なんと自生地はきれいに草刈りされていて、葉すら見つけることができませんでした。
残念無念ですが諦め切れず、翌週ある文献の情報を頼りに、栃木県の低山に探索に行きました。 現地の到着し目的の場所をあちらこちらと探索するも、見つからず。 地元の方に尋ねてみたら「そんな花、聞いたことも見たこともない」と言われてしまいました。 その日は他には見慣れた花しか収穫がなく、うなだれて帰宅。
今年も見ることができないのか? 数日間悶々としていましたが、最後の望みをかけて、福島県の花友さんに尋ねてみました。 この花友さんは、数日前にツルギキョウの写真をホームページに掲載されていたのです。 快く場所を教えていただけましたが、それを見て驚いた! なんと私たちが探索したのと同じ場所で、しかも同じ日、私たちが訪れる数十分前までそこにいらっしゃったのでした!
その週の週末、再度現地に向かい探索。 いただいた情報のおかげで、目的の花に対面することができました。 急斜面、道もない、深い藪の中。 薮蚊の総攻撃は覚悟の上でしたが、マムシやスズメバチに遭遇する危険性も感じました。実際、一匹のアシナガバチ(スズメバチ科)にしつこくつきまとわれました。
観察後にわかりましたが、前の週に私たちは直線で20mほどのところまで近づいていたのでした。 時間や交通費を費やして花を見に行ったのに、目的の花が見られる・見られないの差が出たのは、私たちに情熱というか、ハングリーさというか、そういったものが足りなかったからだと思いました。 反省しきり、です。
ツルギキョウは、薄暗い林下で高さ2mほどの低木に絡みついていました。 開花前の状態、開花した花、果実と、すべての状態をみることができましたが、見頃な花は2つだけでした。 でも花を見ることができたので大満足です!
花はツルニンジンなどより小さく、長さは12mmほどです。 花弁は白く、花の内部に濃い紫色の部分がにじませたように広がり、大変美しい花でした。
#3 ツルギキョウもキキョウと同じく、雄性先熟です。 同じような状態の花しか見ることができませんでしたが、柱頭が開いていないのでまだ雄性期にあると思います。 花は下向きに咲きます。 #3は内部を観察するために手で茎を持ち上げて撮影したものです。
#4 花は葉腋から1個づつ出ます。 花冠は普通5裂し、
中ほどまで裂けます。 先端はとがり、反り返ります。
萼裂片は広披針形、全縁で先端はややとがります。
#5 葉は卵心形で長さ3〜5cm位、葉柄は長く
2〜6cmあります。対生・互生の両方あるよう
です。先端はとがらず、丸みを帯びています。
#7 果実もでき始めていました。 直径1cmほど。
熟すと#8のように赤紫色になり、目立ちます。
#8は2010年に高尾山で見つけた果実です。 草刈りされてしまい。この株の花を見ることは、もうできないのかも知れません...。 果実は、蒴果(さくか)ではなく液果であることが、大きな特徴です。 この中に多数の小さく褐色の種子が入っています。
ツルギキョウ
関東地方以西の山地にやや稀に生える、つる性の多年草。ツルニンジンやバアソブに似ているが、花はやや小さい。蒴果でなく液果であるのが大きな特徴。花期は8〜10月。森林の伐採、道路工事、植生の遷移などが原因で数を減らしており、全国の総個体数は推計約700(2007年)。平均減少率は約30%、100年後の絶滅確率は約96%で、危機的状況にある。[ 参考サイト]
2011.10.17 掲載
2018.01.02 削除された外部サイトへのリンクを削除
将軍 (火曜日, 29 11月 2011 08:25)
始めまして。高尾で花散策をしています。いつもの事ながら草刈りには困っています。高尾山はツルギキョウに関わらず多くの種類の野草の宝庫ですよ。
hanasanpo (火曜日, 29 11月 2011 22:33)
将軍さん、いらっしゃいませ!
見たかった花が刈られてしまっているとガッカリしますが、草刈りが
行われているからこそ見ることができる植物もいるのかな?とも思い、
複雑な心境です。
高尾山は非常に花が豊富なのは間違いないと思いますが、何度も空振り
している花も多いです。 スズサイコ、サワルリソウ、ツチアケビ...
などなど。 機会がありましたら、コッソリ情報をお教えいただけると
嬉しいです。
ぜひまたお立ち寄りください。
将軍 (金曜日, 02 12月 2011 17:05)
こんばんは。確かにラインナップされた花は咲いている場所は少ないですね。私のブログは高尾三昧(零細社長の徒然草 平成版)です。高尾散策の日にアップしています。参考になれば。
hanasanpo (金曜日, 02 12月 2011 23:03)
将軍さん
ブログ名をお聞きして思い出しました! 私たちはきっと将軍さんに
お会いしたことがあります! 今年の5月22日、私たちがヨウラクラン
の撮影をしていたときに、話しかけて下さった方では?
確かシルバーのコンパクトデジカメをお持ちだったと思います。
その後、近くの川の畔を歩きながら、少しお話しをしました。
エビネの自生地のことや、ランが盗掘でなくなってしまうことなど...
星の数ほどある花のサイトの中から当サイトを訪れていただき、
どうもありがとうございます。 あの後、うっかり失念して
おりましたが、ブログを拝見しました。とても参考になりそうなので、
これからちょくちょくお邪魔させていただきます。
花も素晴らしいですが、ウォーキングもスゴイですね。引き締まった
お体の印象でしたが、毎日のウォーキングの賜物でしょうか?
今後もよろしくお願いします。
将軍 (土曜日, 03 12月 2011 22:47)
こんばんは。私も憶えています。私のブログで取り上げたこともありますが、今年も盗掘、ちょん切り、悪戯と散々でした。都の職員の顔を見る度に文句を言っています。そんな理由から皆口が固くなかなか見ず知らずの方に花の場所は教えないと思います。さぞかし閉鎖的だと思われるでしょうね。ただ何回も(毎週)花の咲く場所で顔を合わせ知り合いができれば高尾の奥深さを知っていただけるようになると思います。私達の評価の基準はよく高尾を歩いている事(距離、回数)そこで先輩達に認められると貴重な情報を教えていただけるようになります。各散策路(特に1号路)紅葉台、一丁平そこを観察するだけでかなりの花に出会えますよ。例えばエビネも良く見ればありますよ。
hanasanpo (土曜日, 03 12月 2011 23:32)
貴重な情報をありがとうございます。高尾山には私たちがまだ見ぬ多くの花がいると思われるので、今後も散策したいと思います。
盗掘は、残念ながらもはや人の良心に訴えてもダメなのではないかと思い始めています。もっと強力な法律などで罰則を課して縛らないと、なくならない気がします。自生地での盗掘はもちろん、ネットでの売買も問題と思います。そんな法律は無い方がよいのですが、何も講じないと改善しない気がします。開発や環境の遷移の影響も大きいと思いますが、ある地域で危機に瀕した植物に「トドメを刺す」のはやはり盗掘ではないでしょうか。高尾山は非常に植物の種類が多く、かつ都心からも近く多くの人が押し寄せるという特異な場所であにも関わらず、国定公園にもなっていません。「特別区」のようなものを設定して貴重な植物を守ることが必要なのではないでしょうか...。
流れ星 (月曜日, 27 8月 2012 17:03)
ツルギキョウが昨日開花したそうです。
それも自宅から近くの車で行き・歩いてすぐの場所です。幾株もあります。
昨年種が沢山あったので育てているところですが順調に育っています。
生育数が少ないとはしっていましたが栽培は簡単なよう。
環境を整え増やしていければと思います。
此方で減少しているのは人の手が入らなくなり陽当たりが悪くなるのが主原因のようです
hanasanpo (月曜日, 27 8月 2012 22:08)
ご覧になってはいないと思いますが「ごあいさつ」のページの「花観察ポリシー」にあるように、私たちは野山に咲く植物(もちろん種子も)を採集しないので、それを育てるといことは有り得ないのですね。
他のサイトでもたまに「種子がたくさんあったので... 少しいただきました」とかありますが、見た目の種子がすべて発芽する訳ではないと思います。 たとえ1000個の種子があったとしても、発芽率が0.1%ならば、1個が発芽できるかどうかです...。
特に、数を減らしていると公的にも発表されている植物は、観察すら気を使いますね。生き延びるチャンスを自分たちの手で減らしたくないので、種子を採集することは有り得ないですね(そもそも山野草を育てようという発想がないし)。
角田きょうこ (日曜日, 30 3月 2014 23:55)
横須賀市の大楠山緑地保全区域でもツルギキョウが数株見られます。でも新しくゴミの焼却場ができるので、移植予定のこと。移植で枯れ果てなければ良いのですが。この案を神奈川県も認めそうで悲しい限りです。
hanasanpo (月曜日, 31 3月 2014)
ゴミ焼却場も我々の生活に必要なものですが、何のための緑地保全区域だったのか?と思ってしまいます。すでに自然破壊されてしまったゴルフ場などを買収して用地確保する道はないのだろうか、などとシロウト的に考えてしまいます。きっと莫大な費用がかかるからできない、と言うのでしょうね。植物の生きる目的は、子孫繁栄のみ。できるだけ広範囲に子孫を残したいのに、局所的にしかいない植物は、その環境でしか生きられないからです。行政は安直に「植え替えればいいでしょ」と言いますが、移植後も同じように生育できるのか、非常に懸念されます。移植がうまくいかなかった場合に、行政がその責任を取ったという話は一つも聞いたことがありません。自然環境保全と開発は相反する難しい問題ですが、行政機関がもう少し環境への意識レベルを向上してくれたらと思います。
美和子 (金曜日, 30 10月 2020 22:56)
2,020年10月29日に高尾山へ。蛇滝コースを登る。ツルキキョウが赤い実をつけているのを発見。又ヤマホオズキが青い実をつけているのを途中お会いした方に
教えていただきました。イワタバコの凄い群落を見ることができ、なんと充実した一日だったか。
Ken (土曜日, 31 10月 2020 02:37)
もうツルギキョウは果実をつけているのですね。たくさんの植物を見ることができて、よかったですね。花を見られなくても、果実や葉を確認するだけでも楽しいものですね。