日差しが心地よく、高原の爽やかな風がそよそよと吹いていました。 うつぶせに体を横たえて腕を差し出しこんな写真を撮っていたら、地面は乾いてほんのり暖かいし、遠くの小鳥たちの声なども聞こえてきて、ふいに睡魔に襲われました。 そのまましばらく昼寝しちゃおうかと思ったほど、気持ちの良い日でした。
キキョウは以前は珍しい花ではなく、身近な植物であったそうです。 しかし乱獲や草地の管理放棄、自生地の環境の遷移で数を減らし続けているようです。 公園などに植えられたものを見ることはありますが、自生するものはなかなか見ることができません。 ここはスキー場で、毎年必ず草刈りが行われるため、自生できる環境が維持されていると推測します。
#2 若い蕾です。 色はまだ白っぽいです。
#3 開花直前の蕾です。 「風船」は横方向にも広がり、
色も濃くなりました。花弁の縁がお互いにくっついたまま
膨らんでいく姿は、紙風船を連想しました。 英名はなん
とそのものズバリの balloon flower です。 「風船花」
とは言い得て妙です。
Hiroが幼少の頃には、家の近くにたくさん咲き、蕾を潰
して遊んだそうです。 指でつまむとプシュッと音がして
花弁のつなぎ目が裂けて潰れるそうです。 勢い良く潰す
と、ポン!と音がしたとか。 かわいそうなので、試しま
せんでした。
#4 花弁と花弁の接合部が一部離れ、開花し始めました。
花弁の接合部分には、白っぽく細かい毛が生えています。
この毛が絡み合って、花が十分成熟するまで花弁が開か
ぬよう、つなぎとめていたのでしょうか? 花弁をつなぎ
留めておく仕組みに興味が湧きます。
#5 #4よりも少し開花が進んだ花です。
花弁の裂け目から、しべが見えます。
#6 完全に開花して間もない花です。 暗紫色の脈が美しい。
#7 キキョウは雌雄同花ですが、雄性先熟です。 雄しべの葯
(クリーム色の部分)は十分成熟し、膨らんでいます。 一部
で花粉もこぼれ始めています。 花に訪れた昆虫に花粉を渡す
ことができる状態になろうとしています。 一方、中央の白っ
ぽく、細かな毛が生えている雌しべは、未成熟で柱頭を閉じて
います。これは自分の花粉を受粉してしまう「自家受粉」を避
ける巧妙な仕組みです。
キキョウは、雄性先熟がわかりやすい花であるようです。
さて、花はこの後どうなるのでしょう? 雄性期から雌性期に
移行する様子と、雌性期の花の様子を観察しました。
#8,#9 雄性期が終わり、雌性期に入ろうとしている花です。
雄しべは花粉を出しきり、倒れて雌しべから離れています。
一方、雌しべは成熟が進み、柱頭が裂け始めました。 見え
にくい場合は写真をクリックして拡大してください。
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#10 雌性期のしべです。 雄しべは干からびたようになり、
倒れこんでいます。 雌しべは十分成熟し、柱頭が5つに裂
けました。 いつでも他の花の花粉を受粉可能な状態です。
#11 柱頭が美しかったので、もう1枚。びっしりと
微毛に覆われ、上質なビロードのようです。 花粉を
付け易くするためなのでしょうか。
#12 花柱根元付近にフォーカスしてみました。花糸の
根元には、半透明の細毛がたくさん生えていました。
#14 葉は長さ4〜7cm、葉柄はほとんどありません。
狭卵形で、先は尖り、鋭い鋸歯があります。 互生しま
すが、3〜4輪生する場合もあるようです。
キキョウ
日当たりのよい草地に生える高さ0.5〜1.0mの多年草。太く黄白色の根があり、地中に深く伸びる。茎の先に直径4〜5cmの鐘型で青紫色の花を数個つける。花期は7〜9月。北海道〜九州に分布。園芸用の採集、草地植生の遷移、草地の開発が主原因で数を減らしている。全国の総個体数は約2万個体と推定される(2007年)。平均減少率は約60%、100年後の絶滅確率はほぼ100%であり、危機的状況にある。[参考サイト]
2011.10.15 掲載
キキョウが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス