カギガタアオイ

 

鈎形葵 ウマノスズクサ科 カンアオイ属 カンアオイ節

Asarum curvistigma

日本固有種  絶滅危惧lB類(Endangered)

カギガタアオイ  2015.11.03 山梨県巨摩郡(このページの写真すべて)
 カギガタアオイ  2015.11.03 山梨県巨摩郡(このページの写真すべて)

 

 常緑樹林内に生える、常緑の多年草です。 高さは10cmほど。 静岡県の中西部と山梨県の南部に分布します。 花期は9〜11月。 環境省が絶滅危機1B類に指定しています。 花柱が鉤形に強く反曲することが、和名の由来です。 萼筒口からそれが観察できるとよいのですが...

 

カギガタアオイ

 

葉は卵形〜卵状楕円形で、長さは5〜10cm、幅4〜7cm。

葉の模様には変異があるようです。 上の株は雲紋が出ていました。

 

カギガタアオイ

 

これは葉の雲紋が無いタイプ。

本種は、ギフチョウの幼虫の食草としても知られています。

 

カギガタアオイ

 

図鑑の載っている写真に近い姿の葉もありました。

 


 

 念のため葉の寸法を測ってみました。 長さは約9cm、幅は約9.5cm。 あれ、長さより幅が長い。 たまたま横長の葉を選んでしまったようです。

 

 

 葉の表面は、葉脈の凹みがあまり目立ちません。 とても細かい毛が、まばらに生えています。 ポインターを写真の上に置くと白い枠部分が拡大します(スマホはタップ)。 見えにくいですが、白っぽい短毛がなんとか見えるでしょうか?

 

カギガタアオイの葉の裏面
 葉の裏面

 

葉の裏面の様子です。 毛はないように見えます。

 

カギガタアオイの花
 カギガタアオイの花

 

 カギガタアオイの花です。 完全に地面に接するか、わずかに離れる程度の低い位置につきます。 大きさは萼裂片の差し渡しで1.8cmほど(実測値。 n=1)。 萼裂片は卵状三角形で、ここでは不規則に反り返ったり、湾曲したりしていました。

 

 花がとても地味なカンアオイ属の中にあっても、この花は地味さが際立っているように感じました。 暗い色や変わった形のために地面と同化して、よーく見ないと咲いているのさえわからない。 「もう、誰にも見つけてもらわなくたっていいよ!」と開き直っているかのようです。

 

カギガタアオイの花は花柱上部が外側に反曲する
 花柱上部が外側に反曲する

 

 萼裂片の内側には毛が密生しています。 萼筒開口部の周りには、白っぽい突起が多数あります。 以上の特徴は、タマノカンアオイシモダカンアオイを連想させました。 ただし、突起の並び方や数は異なっているように思えます。 近縁と思われる、まだ見ぬアマギカンアオイはどうなのでしょうか?

 

 さて萼筒の中を覗くと、本種の最大の特徴である、鉤形の花柱が見えます。 花柱は全部で6個あるのですが、その一部が見えています。 その中でも、なんとか鉤形であることがわかる花柱の根本付近を、矢印で示しました。 その先端部分を見ると、外側に(写真では上方向に)強く反曲しているのがわかるでしょうか?

 

 花を分解すればもっと明確にわかるのですが、当サイトのポリシーでそれはできません。 虫食いなどで横から萼筒内が見える花はないかと探したのですが、残念ながらありませんでした。

 

カギガタアオイの花の側面
 カギガタアオイの花の側面

 

 上の写真ではあまりよく見えませんが、萼筒は筒形〜鐘状筒形

をしています。 この花はまだ苞葉が残っていました(矢印部)。

 

雄しべは12個、雌しべの花柱は6個 白っぽく見えるのは裂開した葯の花粉
 雄しべは12個、雌しべの花柱は6個 白っぽく見えるのは裂開した葯の花粉

 

リングライトなどを使い、なんとか萼筒内が見えないか、いろいろ試しました。

 

カギガタアオイの花の正面
 カギガタアオイの花の正面

 

 正面からですが、なんとか花柱が鉤形に曲がっている様子を観察できました。 萼筒の内面には、縦に15〜18本の隆起線と横の隆起線があり格子状になっているはずですが、それを見ることはできませんでした。

 

 自生地が非常に限定されなかなか出逢うことができない花ですが、今回は運良く初対面を果たし、じっくり観察することができました。

 

2015.12.26 掲載