常緑樹林内に生える、常緑の多年草です。 高さは10cmほど。 静岡県の中西部と山梨県の南部に分布します。 花期は9〜11月。 環境省が絶滅危機1B類に指定しています。 花柱が鉤形に強く反曲することが、和名の由来です。 萼筒口からそれが観察できるとよいのですが...
葉は卵形〜卵状楕円形で、長さは5〜10cm、幅4〜7cm。
葉の模様には変異があるようです。 上の株は雲紋が出ていました。
これは葉の雲紋が無いタイプ。
本種は、ギフチョウの幼虫の食草としても知られています。
図鑑の載っている写真に近い姿の葉もありました。
念のため葉の寸法を測ってみました。 長さは約9cm、幅は約9.5cm。 あれ、長さより幅が長い。 たまたま横長の葉を選んでしまったようです。
葉の表面は、葉脈の凹みがあまり目立ちません。 とても細かい毛が、まばらに生えています。 ポインターを写真の上に置くと白い枠部分が拡大します(スマホはタップ)。 見えにくいですが、白っぽい短毛がなんとか見えるでしょうか?
葉の裏面の様子です。 毛はないように見えます。
カギガタアオイの花です。 完全に地面に接するか、わずかに離れる程度の低い位置につきます。 大きさは萼裂片の差し渡しで1.8cmほど(実測値。 n=1)。 萼裂片は卵状三角形で、ここでは不規則に反り返ったり、湾曲したりしていました。
花がとても地味なカンアオイ属の中にあっても、この花は地味さが際立っているように感じました。 暗い色や変わった形のために地面と同化して、よーく見ないと咲いているのさえわからない。 「もう、誰にも見つけてもらわなくたっていいよ!」と開き直っているかのようです。
萼裂片の内側には毛が密生しています。 萼筒開口部の周りには、白っぽい突起が多数あります。 以上の特徴は、タマノカンアオイやシモダカンアオイを連想させました。 ただし、突起の並び方や数は異なっているように思えます。 近縁と思われる、まだ見ぬアマギカンアオイはどうなのでしょうか?
さて萼筒の中を覗くと、本種の最大の特徴である、鉤形の花柱が見えます。 花柱は全部で6個あるのですが、その一部が見えています。 その中でも、なんとか鉤形であることがわかる花柱の根本付近を、矢印で示しました。 その先端部分を見ると、外側に(写真では上方向に)強く反曲しているのがわかるでしょうか?
花を分解すればもっと明確にわかるのですが、当サイトのポリシーでそれはできません。 虫食いなどで横から萼筒内が見える花はないかと探したのですが、残念ながらありませんでした。
上の写真ではあまりよく見えませんが、萼筒は筒形〜鐘状筒形
をしています。 この花はまだ苞葉が残っていました(矢印部)。
リングライトなどを使い、なんとか萼筒内が見えないか、いろいろ試しました。
正面からですが、なんとか花柱が鉤形に曲がっている様子を観察できました。 萼筒の内面には、縦に15〜18本の隆起線と横の隆起線があり格子状になっているはずですが、それを見ることはできませんでした。
自生地が非常に限定されなかなか出逢うことができない花ですが、今回は運良く初対面を果たし、じっくり観察することができました。
2015.12.26 掲載