イワウチワ(狭義)

(別名 コイワウチワ、カントウイワウチワ)

 

岩団扇(小岩団扇、関東岩団扇) イワウメ科 イワウチワ属

Shortia uniflora var. kantoensis

日本固有種

イワウチワ 2008.04.27 東京都
イワウチワ 2008.04.27 東京都

 

 今年(2013年)はまだ見ることができていませんが、そろそろ咲き出す時期と思うので、専用ページを作ろうと思い立ちました。

 

イワウチワ 2008.04.27 東京都
2008.04.27 東京都

 

 山地のやや暗い林内に生える、常緑の多年草です。 岩場に生えることが多いとされていますが、岩場ではない場所でも見かけます。 ここは小さなピークの北側の急斜面です。 やや薄暗い林下で、足元はふかふかと柔らかい土で覆われ、コケがたくさん生えていました。

 

イワウチワ 2007.04.30 東京都
イワウチワ 2007.04.30  東京都

 

 花の直径は約3cm、広鐘形で先が5裂し、各片の縁は更に細かく裂け、フリルのようで可愛いです。 色は淡紅色で、白色に近いものからやや色が濃いものまであります。 完全な白花もいるようですが、まだ出会っていません。

 

イワウチワ 2006.05.01
2006.05.01

 

暗い林下では、ちょっと妖艶な感じに。

 

イワウチワ 2007.04.30
2007.04.30

 

日の光に当たると、また違った趣に。

 

イワウチワ 2007.04.30
2007.04.30

 

 雄しべは5個で花冠の裂片と互生の位置につき、花冠の筒部に合着しています。 花糸、葯と花粉はわずかにクリーム色がかった白色。 上の写真の右下の葯は、花粉がなくなって空っぽです。 柱頭はわずかに3裂しているように見えます。

 

イワウチワの仮雄しべ 2007,.04.30
2007,.04.30


花の奥、花冠裂片と対の位置に、5個の仮雄しべが

あります。(Yの字型に見える部分は何かな?)

 

イワウチワの萼と苞 2007.04.30
2007.04.30

 

後ろ姿もなかなか美しい花です。 花の下に2〜

3個の披針形の苞と、5片の卵形の萼があります。

 

 

 葉は仲間の変種と識別する上で最も重要な部分です。 葉は革質で長い柄があり、広円形または広楕円形で先の鈍い鋸歯があり、色が薄い葉脈が目立ちます。葉の先端部はやや扁平になっており、この形状が団扇を連想させます。

 

 イワウチワの葉の基部は心形で、長さより幅が広いのが特徴です。 上の写真の葉の寸法は測定していませんが、写真上で長さと幅の比を求めたところ、1:1.4  でした。 明らかに横長の葉と言えます。 上の写真にマウスのポインターを重ねると以上の説明が図示されます。 しかしこれはあくまでも上の写真の葉での一例であり、この比率が当てはまらない葉も多くあると思います。

 

 

イワウチワの変種について

 

 狭義のイワウチワは、広義のイワウチワの一変種です。 他にも変種があり、それらの分類には諸説あるようです。 本サイトでは、平凡社の「日本の野生植物」などに従い、他の説も参考にして区別することにしました。 しかし少しややこしく、勘違いしている点がありましたらお許し下さい(ご指摘いただけると助かります)。 見たことのあるイワウチワ(狭義)、トクワカソウ、オオイワウチワの3種を掲載します。 またこれらをまとめて広義のイワウチワというようです。

 

 3種の花はどれも同じようで、識別は困難です。 葉の大きさ・形状と、自生地で識別します。  下の表に識別ポイントをまとめました。 3種の特徴は地域ごとの傾向であり、いずれとも識別できない個体も多いようです。

 

  イワウチワ・トクワカソウ・オオイワウチワの相違点

和名

種内分類群名

variant

葉の特徴 分布

イワウチワ(狭義)

(別名コイワウチワ、

 カントウイワウチワ)

kantoensis

基部は深く心形。

葉の長さより幅が広い。

長さ1.8~3.5、幅2~4cm

葉脈が目立つ。

宮城県〜東京都の

太平洋側の山地

トクワカソウ

orbicularis

直径2.5〜3.0cm。

基部は円形~くさび形、

時にわずかに心形。

北陸〜近畿地方

オオイワウチワ

uniflora

直径3〜8cm。

葉の長さと幅はほぼ同長。

基部は心形。

秋田県〜新潟県の

日本海側の山地

 

 この後、トクワカソウとオオイワウチワのページも作成予定です。 3種の葉の比較ができればよいと思っています。

 

2013.04.14 掲載

 

コメント: 6 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    peko (水曜日, 17 4月 2013 06:14)


    大阪時代、随分とトクカワソウにこだわり、探しましたが
    これ!とはっきり言える葉を確認出来ませんでした。
    ページの作成を、楽しみにしております。

  • #2

    hanasanpo (水曜日, 17 4月 2013 21:32)

    pekoさん、こんばんは!

    あまり細かい区別はやめて、一つにまとめてしまおうか?という思いもあったのですが、やはりトクワカソウの葉の形は違うし、オオイワウチワの葉はとても大きいし、別けるべきだな〜と決めました。
    おっしゃる通り、識別が困難な個体も多いですね。混生しているのかも?

    トクワカソウのページ、しばしお待ち下さい。

  • #3

    BOGGY (水曜日, 17 4月 2013 23:19)

    今晩は。
    イワウチワも盛期ですね。岐阜でもアチコチの山で大きな群落が見られます。
    滋賀県の花の山、赤坂山にはトクワカソウの大群落が見られます。
    これから山は無理になっても、傾斜の少ない林道などで野草を見ることは出来ると思います。
    おくちやんスタイルかな?
    明日のBOGGY会は山は中止でランチ会に、メインはソーパ・ディ・ビエント・ペスカドール。スペインの漁師風スープです。初デビューの料理なんですよ。
    いずれブログに載せますね。ではまたね。

  • #4

    hanasanpo (水曜日, 17 4月 2013 23:52)

    BOGGYさん、こんばんは!

    2010年におくちゃんにイワザクラを案内していただいたときに見ることができたトクワカソウの写真を元に、ただ今トクワカソウのページを作成中です。 岐阜県にはイワウチワもいるので、混生しているかも知れず、識別に苦労します。

    お体のこと、Hiroから聞きました。どうかお大事になさって下さいね。

    ソーパ・ディ・ビエント・ペスカドール、Googleで検索したら1つもヒットしませんでした!
    気になる〜! ブログへの掲載、楽しみにしています。 (HiroKenのKen)

  • #5

    ゆき (木曜日, 02 4月 2015 21:58)

    岩うちわの自生地の写真ありがとうございます、可憐な、お花ですね。3変種の作成も、楽しみです。岩うちわとイワカガミ、イチヤクソウ、葉も、また、可愛らしい。

  • #6

    hanasanpo (木曜日, 02 4月 2015 22:33)

    ゆきさん、ご訪問ありがとうございます。イワウメ科の花はどれもかわいいですね。
    3変種を並べての比較もいつかやってみたいと思います。

 

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