ヤマトグサ
大和草 アカネ科 ヤマトグサ属
Theligonum japonicum Okubo et Makino
(= Cynocrambe japonica (Okubo et Makino) Makino )
日本固有種
見たかった花をようやく見ることができました。 数日前、花の大先輩の情報を頼りに静岡県に探しに行ったときは、探し方が悪かったせいか発見できず、空振りに終ってしまいました。 諦めきれず、連休の最終日に筑波山に行き、一日探しまわって、陽が沈む少し前にようやくその姿を見ることができました。
100〜120個ほど固まっていました。 しかし柄を伸ばし花をつけている個体はたった4〜5個ほど。 見たことがなかったため、葉を見たときは別の植物かと思いました。 念のため撮っておこうかとしゃがんで見て、初めてふわふわ風にそよぐ雄しべが目に入り、ヤマトグサとわかったのです。 運がよかったです。狙いをつけていた場所とは異なる、意外な所にいたのです。
思っていたより小さく、思っていたとおり地味な花でした。
しかしこの花は記念すべき花なのです。 日本の植物学の父
と言われる牧野富太郎先生が発見し、日本人として初の新種
報告であることからこの和名「大和草」を命名されたのです。
1889年、牧野先生が27歳のときです。
「大和草」とは「日本の草」の意味です。 牧野先生の思
いが伝わって来る気がします。 学名は発表当初は Cynocr-
ambe japonicum Makino でしたが、現在では Theligonum japonicum Okubo et Makino が通用しており、ネットで
検索しても後者の表示が多いです。 牧野先生の著作「牧野
新日本植物圖鑑」(昭和36年発行)には両方の学名が載っ
ています。
雄花が開花する直前と思われる状態です。 この株は
高さ10cmほど。 茎の片側に白く短い毛が生えます。
葉は対生し、卵円形で全縁、全体に微毛があります。
薄黄緑色の円柱形のものがつぼみです。 開くと外側に
くるくると反り返る、萼片3個からできています。
ヤマトグサは風媒花です。 花弁はありません。 同じ
株に雄花と雌花をつけます。 雌花は小さく「これです」
と示せる写真が撮れませんでした(もしかするとどれかの
写真に写っているかも知れません)。
たくさん垂れ下がっているものが、雄しべです。 20本
くらい?ありそうです。 白い花糸はとても細いです。
薄黄色を帯びた葯は線形です。
風媒花だからなのでしょうか? 花糸がとても細い
ので、雄しべは僅かな風が吹いてもふわふわと揺れま
す。 上の写真を撮影中にかすかに風が来たら、下の
写真のように雄しべが右にたなびきました。
山中の樹の下に生える多年草。 高さは15cm程度。 地下茎は細く短く、ひげ根を出す。 茎は直立し先端に花をつける。 花が終わると下部の側枝が伸びて地を這い、その先に新芽をつくる。 葉は対生し葉柄があり、膜質の葉間托葉があり、卵円形で全縁、微毛がある。 花のすぐ下の苞は互生し狭卵形で葉状の苞となる。 4〜5月頃、淡緑色で風媒の単性花をつける。 雄花は節ごとに1〜2個つき、苞と対生しほとんど柄がない。 雌花は苞腋または葉腋につき小さくて柄はなく、下部は扁平で子房状、緑色で尾毛があり、上部は側面に片寄って線状となり、花中から横に傾いて1個の大きな花柱が出る。
(参考文献:「牧野 新日本植物圖鑑」初版 p.136「やまとぐさ」)
2011.05.09 掲載
2013.10.06 APG体系準拠に伴いヤマトグサ科からアカネ科に変更
ヤマトグサの掲載ページ
Dairy-Hiroダス
流れ星 (木曜日, 25 8月 2011 06:32)
地元高知にいながらようやく今年開花がみられました。(散策歴は4年)
株は幾度も見ていたのにです。1時間車で行けばいやっというほどあるので来年はきれいな花と雌花を見たいと思っています。
しかし、撮影には苦労しますね。コオロギランの方がもっと難しいのですけど・・横倉山では今、開花していますよ。
hanasanpo (木曜日, 25 8月 2011 21:45)
このページにコメントを入れてくれる方は現れるのだろうかと思っていましたが、さすが流れ星さんですね!
きっと牧野植物園にも何度も行かれているのでしょうね。
コオロギラン、ホームページで拝見しました。ものすごく小さなランですね。
大きさだけでいうとホンゴウソウといい勝負?(ホンゴウソウも拝見しました。すごく花つきがいいですね!)
自生地はとても限定されているようですが、いつか見てみたいものです。
流れ星 (木曜日, 25 8月 2011 23:42)
格安航空便利用とか高速バスだとひとっとびですよ
是非訪問ししてください。
コオロギランは今ちょうどなので県外から花好ききます。
牧野植物園は近くなので自転車で行けます。
観察会にもしばしば参加です。
ヤマワキオゴケを見てくださるとうれしいです。(ガガイモ科大好きです)
子供2人とも東京なので高尾とか昭和記念公園とか花のあるところばかり行っていますよ。
hanasanpo (金曜日, 26 8月 2011 22:13)
ヤマワキオゴケ、拝見しました。長い花柄が目立ち、ちょっと他のガガイモ科と趣が違いますね。
高知県と徳島県の固有種ですか。環境省レッドリストで絶滅危惧種1A類に指定された、激レア種なのですね。
四国は本当に未見の花の宝庫のように思えます。作戦を練って、訪問したいと思います。
ガガイモ科で見たことのある花は... ガガイモ、クサタチバナ、タチガシワ、そして先日初めて見ることができたコバノカモメヅル、かな?
ASA (土曜日, 16 5月 2020 12:57)
いつも行く筑波山 初めて知った珍しいヤマト草 クルマムグラの葉と似ていますか?
写真がとてもキレイ� 説明がとても分かり易いです。野反湖やその他の場所で参考にしています。
HiroKen (土曜日, 16 5月 2020 15:49)
ASAさん、いらっしゃいませ。 お褒めの言葉をいただき、ありがたいです。
ヤマトグサの葉は対生するのに対し、クルマムグラの葉は普通6個が輪生しますので、葉は似ていないかなあと思います。 もし一つの葉だけを見たら、少し似ているかも知れませんね。
さちこ (火曜日, 27 4月 2021 23:47)
今頃になってのコメントですみません
ヤマトグサは近くの金剛山では登山口から山頂までどこでも見られる野草です
毎年雌花を見つけられるかなと楽しみにしているのですが
中々確信をもってこれがそうと言いきれません
先日咲いているのを見つけ 帰ってから何枚かの写真を拡大して見ていたところ
白いと思っていた雄花が紫褐色なのです
白もありますがまるですすがくっついたようです
牧野図鑑を見ても 雄花の色の事は書いてありません
これは 花さんぽさんが解明してくれるかもと ページを開いた次第です
これは葯なんでしょうか
いままで何度も写しているのですがこのようなのは初めてです
Ken (水曜日, 28 4月 2021 18:54)
見られた花の写真を見ていないのでなんとも言えませんが、こちら「花の日記」さんのページが参考になりそうですよ。
http://nannjyamonnjya.blog68.fc2.com/blog-entry-1923.html
こちらに「花粉をを出し終えた葯の色は紫褐色」と書かれ写真も掲載されています。
さちこ (水曜日, 28 4月 2021 20:29)
さっそくありがとうございます
花の日記さん見せていただきました
あの写真そのものです
この時期いつも見ていたのに あのような状態は初めてでした
雌花も雄花の一段下の葉柄に着くと思っていました
次行くときはもう少ししっかり見ないと!
ありがとうございました
Ken (水曜日, 28 4月 2021 23:12)
疑問が解けてよかったですね。花はとても小さいので、細かい部分を観察するのは、少し大変ですね。ルーペが必要かも?
kappe (火曜日, 18 7月 2023 07:26)
昨日、朝ドラの影響で近くのヤマトグサを見に行きました。
花の咲く頃とは違って長くツルを伸ばしていて、これだったかな?と思うくらいでした。
Ken (水曜日, 19 7月 2023 09:26)
花の時期以外はあまり目にしていませんでしたが、ツルを伸ばすのですね。情報をありがとうございます。
km (金曜日, 19 1月 2024 08:25)
先日四国から送っていただいたヤマトグサ増殖品育てることにしました。小さな野ノ花好き。ヤマトグサは気付かずに通り過ぎてしまいそうです。
ちょっと見た目には好きなアポイカラマツに似てる気がします。
Ken (木曜日, 08 2月 2024 11:39)
kmさま
コメント到着メールを見逃してしまい、反応が大変遅くなり申し訳ございません。
ヤマトグサは本当に地味なので、たとえ知っていたとしても気づかないこともありそうですね。アポイカラマツは見たことがないのですが、ネットで調べましたら、確かに雰囲気が似ていますね。