8月4日 千畳敷カール p.2/3
クロユリは、今回一番見たかった憧れの高山植物の一つ。 これまでは文字通り「高嶺の花」だったのです。 元気に咲いている姿を見ることができました。 ユリ科ですがユリ属ではなく、バイモ属となります。 高さは10〜30cmほど。 3〜5枚の葉が輪生状に、2〜3段付きます。 しかし...思っていたほど黒くない。 外側は暗褐色に黄色っぽい斑点があり、内側は更に黄色く見えます。 クロユリというからには、もっと黒いのかと思っていました。 地域差か? 後で調べると、北海道に咲くものはクロユリと呼ぶに相応しく黒いようだとわかりました。
クロユリの花には両性花と雄花の2種類があるそうです。 2つ花をつける個体は雄花・雄花、雄花・両性花、両性花・両性花の、多様な組み合わせが見られるそうです。 ところで、バイモ属と言えば、コシノコバイモやミノコバイモなどがあります。 なるほど、花の様子は杯型でうつむき加減に咲き、ユリ属の花よりコシノコバイモに近い感じですね。
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現地で長年ここ駒ヶ岳の花を観察している人が作られた図鑑を買ったら「中央アルプスにはシナノオトギリしかいない」と断言されていたので、それを信じてシナノオトギリとします。 しかしシナノオトギリが葉の縁にしか黒点がないとされていますが、この花は葉の中央付近にもやや不明瞭ながら黒点が認められる(右上の写真を拡大するとわかります)。 つまり、イワオトギリの特徴も有しているようなのです。 花の同定は本当に難しいですね。
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ミヤマゼンコは、セリ科エゾシシウド属の植物です。 高山型のセリ科植物はよく似ているので同定が大変。 中部地方に咲く日本固有種。 葉は2-5回3出羽状複葉で、鋭い鋸歯があります。 小さくかわいい花は、花弁が内向きにカールしています。 「ゼンコ」は漢方になるセリ科の薬草だそうです。
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ツートンカラーのイブキトラノオ? ムカゴトラノオは、とても印象的な色使いです。 花序の上半分は白い花が、下半分は赤茶けたムカゴがつきます。 花はまだ蕾です。 ムカゴとは栄養繁殖体のことで、無性生殖で次の世代を繁殖させるための器官です。
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タカネヨモギは華やかな高山植物の中では地味な部類で、こんな花に注目できるのはなんとなくツウっぽいなと勝手に思います。 葉は3回羽状複葉で細かく裂けるのが特徴。 花は直径1cmほどで、舌状花はありません。
オンタデの茎は太く直立、葉は長さ8〜15cm。 根は2m以上深く張るらしいです。 雌雄異株。名は「御岳山のタデ」から付けられたそうです。 カールではそこかしこに見られました。
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さて次は、黄色くてちょっと雰囲気が似ていて、名前もこんがらかりそうな花を集めてみました。 シナノキンバイ、ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲです。 いずれも高山植物です。 出会う花がほとんど初対面なので、目移りしてしまいます。 観察と撮影に時間がかかり、遅々として先に進めません...
シナノキンバイは、高山の雪渓が溶けた後の湿った草原に生えます。 高山植物の定番のような花だそうですが、高山に来たことがないので初めて見ました。 5〜7枚の大きな花弁に見えるのは、実は蕚片です。 これはキンポウゲ科の特徴です。 花弁は退化し、細いヘラのような形で、雄しべより短いことが、良く似たキンバイソウとの相違点です。 キンバイソウの花弁は、雄しべの外側に、雄しべより太く長く直立します。 そのキンバイソウは、前日に霧ヶ峰の八島ヶ原湿原で初めて見ることができました(>こちら)。
ミヤマキンバイは、高山の礫地や草地に生える多年草です。 3小葉はキジムシロ属の特徴が出て、バラ科の植物であることがすぐにわかります。 中心付近がややみかん色がかった、丸っこい花弁がかわいらしい。 先に雌しべが成熟し、後から雄しべが成熟し花粉を出します。 自家受粉を防ぐシステムで、雌性先熟といいます。
ミヤマキンポウゲの花の大きさは1.5-2.0cm。 光沢があり、平地に咲くウマノアシガタを連想させます。 キンポウゲ科なので、この花も花弁に見えるのは蕚片です。 茎の高さは20-50cmほど。 葉は大きく3つに裂け、さらに細かく深く裂けて、特徴的です。
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