11月23日 太東崎
2008年11月後半の日曜日。 この時期はもう花も少ないですが、晴天に誘われて千葉県に遊びに行くことにしました。 細かな目的地は定めません。 今回は東京湾アクアラインを使いました。 この自動車専用道は、長さ14kmの内、神奈川県川崎市側から9.6kmは海底トンネルで、残り4.4km、千葉県木更津市までは海上の橋梁となります。 トンネルから海上に出る部分に人工島のパーキングエリア「海ほたる」があります。 食事処もあるので、ここで一休み。
海の上の白い三角の建造物は、海底トンネルの換気施設の人工島で、「風の塔」の名があります。 トンネル部分のほぼ中央に位置するそうです。 海と空の間に分厚く広がる薄茶色の層は... スモッグ?
海底トンネルを掘削したシールドマシンの、直径14メートルのカッターフェイスの実物大モニュメント。 周囲にいる人と比べると、その巨大さがわかります。 こんな巨大なものを回転させて、ゴリゴリ掘り進んだとは、スゴイ!
よく晴れていますが、東京湾のど真ん中のせいか、風が強かった。
海ほたるから木更津市に向けて、アクアブリッジと呼ばれる橋梁が伸びます。日本で一番長い橋梁だそうです(2008年11月現在)。
木更津に着くとそのまま房総半島を横断し、太平洋側の九十九里浜に出てみました。 私Kenは以前茂原市に住んでいたことがあるので、このあたりは勝手知ったる場所なのです。 茂原を過ぎ、ほぼ真っ直ぐに東に9kmほど走ると、長生村の一松(ひとつまつ)海岸に出ます。 茂原に住んでいたころは、よくここに海を見に来たものです。 広々として気持ちがいい。 夜になると、本物のウミホタルが見られたのです。 夜、波打ち際に立つと、サブ〜ン!と波が白く砕け散る部分が、薄緑色にボワ〜と光るのです。 あれはきっとウミホタルだったに違いない。
一松海岸。 何年ぶりだろう? 懐かしい感じ。 やはり九十九里浜は広大です。 夏には海水浴場として賑わいますが、 遊泳可能なエリアは限られています。 非常に遠浅で波も穏やかに見えるのですが、場所によっては強い離岸流 (引き波)が発生し危険なのです。 地元ではこの波をミヨ(水脈と書く)と呼び、恐れられているのです(怪談か?)。
トベラは、海岸に沿って延々と続く松の防風林の縁に生えていました。 きっと今までもどこかで目にしていたのでしょうが、ちゃんと調べて名前がわかったのは初めてなので、初対面としちゃいます。 和名は「扉の木」の意味で、節分の頃、この枝を扉に挟み魔除けにするといいます(初耳)。 トビラノキ→トビラ→トベラ と訛ってこの名になったと。 樹高は、林内では4mほどにもなるそうです。 今回見たものは2.5mほどでした。
トベラは、本州北部から沖縄の海岸に分布する、常緑広葉樹低木です。 生育する環境により、陽葉/陰葉をつけます。 今回見ることができたのは、強い陽射しが当たる場所で見られる、陽葉。 葉は垂直近くに立ち上がり、幅が狭く、革質で厚く、鮮やかな緑色で表面に強い光沢があります。
葉縁が裏側に強く反り返り、葉の横断面が凸型になっています。 垂直近くに立った葉は日光を正面から受けるのを避けることができ、葉の凸型の形状は飛行機の主翼の断面形状に似て、表面の方が裏面より空気の流れが速くなり、それだけ葉の表面が冷やされ易くなります。 これは海岸という特殊な環境に生きる植物の、熱を逃がす工夫の一つのようです。
果実は朔果で、果皮は堅く、種は赤朱色の粘液で包まれていました。 さて、陽葉に対する陰葉は、やや暗い林下で多いそうです。 葉の幅が広く、草質で薄く、濃緑色で表面に光沢はなく、葉縁が反転することは少ないと。 光が弱い環境下で葉緑素を増やし、葉の面積を広くすることで、光合成の成果を稼いでいるようです。 トベラの陰葉も、いつか見てみたいものです。
「花はいないね〜、もっと南下してみるかい?」ということで、太平洋を横目に海岸沿いに南下。 しばらく行くと小さな岬の上の高台に、灯台が見えて来ました。 周りはこんもりした森に囲まれているようで、何か花がいそうです。 行ってみることにしました。 狭く急な坂道を登ると、急に開けた場所に出ました。 いすみ市にある、太東崎(たいとうさき)です。 灯台があります。
岬から南方を望む。 のどかな風景が続く。 町村合併でいすみ市になりましたが、以前は岬町といいました。 前の名前の方が合っているし、情緒があるなあ。
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いた! しかもお初の花のイソギク! 灯台近くの散策路脇にいました。 まず葉の白い縁取りに目がいきます。 そして舌状花がなく、筒状花のみの頭花。 千葉県犬吠崎から、静岡県の御前崎に至る海岸という、比較的狭い地域に分布し、崖地や岩場に生育する多年草です。 観賞用として人気があり、盛んに栽培されているので、それらが野生化したものが各地で見られることもあるそうです。
葉は厚く、裏は毛が密生して銀白色に見えます。 それが葉の縁まで続くので、表から見て白い縁取りがあるように見えるのです。 白い毛は海岸の強烈な陽射しによる地面からの照り返しを反射し、温度上昇を和らげる目的でしょう。
海岸の植物は、紫外線、高温、乾燥、強風、そして塩分など、植物
体に様々な悪影響を与える要因から身を守るために、いろいろな手段
を講じています。 今後は海洋性植物も勉強しようかな!
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コハマギクも初対面! 関東地方以北から北海道の、主に太平洋岸に
生える多年草。 花はハマギクに似ますが、本種の方が小さいのでこの
名がつきました。 葉はまったく異なり、さじ型で浅く3〜5裂し、長い
葉柄があります。 いかにも野菊っぽい花です。
太東崎より太平洋を望む。ここは標高わずか60mほどですが、遮るものがないので眺めが良いのです。
整地し新しく木を植えた場所に「映画 ポストマン 撮影場所」と書かれた案内板が。 どんな映画だったのかな。
今回の花さんぽは、種類は少ないが初めての花も見ることができて、満足、満足。 灯台のそばに、崖を下る急な階段があり、「海浜植物群落」という案内板を見つけました。 非常に気になったのですが、日没のため今回は散策を断念。 来年のお楽しみが一つ増えました。 地元の海鮮料理を食べ、再度アクアラインを使って帰宅しました。
2008年の花さんぽは、これにてお終いです。 2009年板につづく! と言いたいとことですが、2009年版は未作成です。 遠くないいつか、ぜひこのホームページに掲載したいと思います。 次のページは、2010年の花さんぽです。
2015.11.14 掲載
( 2008年当時のレポートを基に作成し直しました )