タテハチョウ科
アサギマダラ
Parantica sita
浅葱斑蝶 タテハチョウ科 アサギマダラ属
とても美しいチョウです。 夏の時期には野反湖でもよく見ることできます。 あまり忙しく翅を羽ばたかせることはなく、ふわりふわりと滑空しながら飛びます。 ヨツバヒヨドリやアザミなどのキク科の植物が大好きなようで、これらの植物の花に訪れている姿をよく見かけます。 人をあまり恐れないので、一生懸命吸蜜しているときにはそっと近くまで寄って観察することができます。
優しくか弱く見えるアサギマダラですが、実は驚愕する能力を持った、とんでもないチョウなのです。 日本にいるチョウで唯一、「渡り」(長距離移動)をするのです。 この10年ほどの間にかなり詳しくわかってきたようですが、その移動距離はハンパではありません。「3日間で783キロメートルを渡った」とか「山形県の蔵王スキー場から沖縄県の与那国島まで、直線距離で2240キロメートル以上を渡った」ことなどが確認されています。 この小さなチョウのどこにそんなパワーが秘められているのでしょう?
アサギマダラの渡りに関するサイトは多いですが、こちらを参考にさせていただきました。
浅葱色(浅黄色とも書く)は、Wikipediaに「ごく薄い藍色のことである。また、現在は薄い青緑をこう呼ぶこともある」とありました。 この色をパソコンで表示するために、この段落の文字色を浅葱色(16進表記で#00a4ac)にしてみました。 ちょっと濃過ぎますね〜? この色の水彩絵の具を思いっきり水で薄めたら、アサギマダラのステンドグラスのような翅の色になるのかも知れません。
また渡りの話ですが、はるばる沖縄県や台湾へ向かって海を渡る前に、手前の島々でスナビキソウに群がるアサギマダラが目撃されています。 大海原に乗り出す前に蜜でお腹をいっぱいにするのかと思いましたが、観察された方によると、花ではなく大半の個体は、スナビキソウの枯れた葉や傷ついた茎などを盛んに吸っていたそうです。 スナビキソウに何か特別なスタミナ源になるような成分があるのでしょうか?
胸や、顎の下にも斑模様があります。
翅が浅葱色で胸に斑模様があるので
アサギマダラとなったのでしょうね?
2010.12.31 掲載
オオムラサキ
Sasakia charonda
大紫蝶 タテハチョウ科 オオムラサキ属 準絶滅危惧種
上の写真は、養殖されたオオムラサキです。 群馬県のある場所で、オオムラサキを養殖し山に返す活動をされている方々がおり、見学させていただいた時に撮影しました。
日本の国蝶です。 前翅長は50–55mmほどの大型のチョウです。 雄は写真のように光沢のある青紫色の翅をもち、非情に美しく、国蝶に相応しいと思います。 雌は地味な茶色系の色をしています。 養殖なのでサナギから羽化したての個体をじっくり観察できましたが、なんだか弱々しさを感じました。 これより遡ること2年、栃木県で見た野生のオオムラサキが忘れられません。 下の写真です。
2001年7月。 まだ花にもさほど興味を持っていない頃、一人で栃木県佐野市にある、自然公園に行きました。 一汗かいて狭い山頂に着き一服していると、耳元をバサバサと音を立ててかすめて飛び去るものがいました。 目で追うと、木の葉に大きなチョウがとまってこちらを見ています。 これがオオムラサキとの初対面でした。 国蝶であることは知っていましたが、見るのは初めてだったのです。 明らかに威嚇しているようです。 チョウに威嚇されたのは、生まれて初めての体験です。 小さな昆虫ですが... 「勝手にオレの縄張りに入るな!」と言わんばかりの強い意思を感じました。
臨戦態勢に入っていいるオオムラサキ。 他のチョウが山頂に来ると、素早く飛び立って追い払います。 非常に驚いたことに、なんとこのチョウはツバメにまで向かっていったのです。 野生のオオムラサキの、なんという逞しさでしょう!
その時はツバメが1分間に1〜2羽、山頂の高さ数メートルの木をかすめるように飛んでいきました。 オオムラサキはその度に弾かれたように飛び立ち、すごい勢いでツバメに向かっていきました。 チョウは鳥に捕食される存在... ずっとそう思っていたので、鳥に立ち向かっていくチョウの姿を見て、とても驚きました。 あの光景は忘れることができません。
他のオオムラサキの雄がやってきました。 強い羽ばたき(音が聞こえるほど)と滑空を織り交ぜて、激しい空中戦を繰り広げます。 目で追うのも大変なほど素早かったです。
撮影はカメラを大まかな方向に向けて、ひたすら連射して撮りました。
日本の国蝶は、かくも美しく、逞しい。 オオムラサキは、エノキを食樹とする蝶です。 冬は幼虫が木から下りてきて、枯葉の裏で越冬をするという習性を持っています。 かつては関東平野でも多く見られたそうですが、環境の悪化で数を減らしてしまいました。 冬の間に枯葉を掃除されると、オオムラサキの幼虫も気づかれずに一緒に処分されてしまいます。 そんなことにも注意が払われるようになることを願います。
2010.12.31 掲載
-
#1
さすが、上品!きれいですね。
日本の国蝶。小さい体で、威嚇する!
日本にもオオムラサキの様な気概がほしいなぁ。 -
#2
本当におっしゃる通りですね。うなだれてばかりの日本、国蝶を見習え!ってな感じです。野生のオオムラサキは、チョウなのに本当に迫力満点でした。体重比で数万倍?ある私に向かってくるのですから。日本もたかだか人口比13倍の国に弱みを見せちゃいけませんよね。
-
#3
始めまして、アサギマダラの生息地らしく上空を飛来する蝶は、砂引き草の蜜を好む事を知り、週末過ごす畑に育たないか調べている中で、綺麗なブルーの蝶はオオムラサキだと言う事まで知り大変参考に成りました。楽しみが増えました。
有難うございました。
-
#4
コメントをありがとうございます。スナビキソウは海岸近くでないと栽培は難しいかもしれませんね。畑で育てるのであれば、他の農作物に誤って混入しないよう、ご注意ください(有毒植物のため)。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
2011.07.26 追加
2011.09.16 訂正
突然変異(雌雄嵌合体?)のオオムラサキ 発見?!
・・・と思って大騒ぎしていたら、これはコムラサキの雄ですというご指摘をいただきました(下のコメント参照)。調べてみたら似た写真がぞくぞくと見つかりました。大変な早とちりをしていたようで、スミマセン。
下の写真の蝶は、コムラサキの雄です。記事はそのまま残します。
フナバラソウやスズサイコが見たくて富士山の山麓をうろうろしていたら、変わったオオムラサキを見つけました。 雌を追ってちょこちょこ動きまわるのですが、やっと撮れた写真を掲載します。
ご覧の通り、左の翅は青い雄の翅、右は地味な茶色い雌の翅を持っています。 見つけたときは「ああ、たまにはこんなのも生まれるのだろうな」と思いました。 ところが帰宅してネットで調べてみると、もしかすると非常に珍しいものかも知れないとわかりました。
山梨県北杜市の地方新聞「八ヶ岳ジャーナル WEBTODAY」の2006年9月21日版にとても参考となる記事がありました。 記事によると『平成15年6月に群馬県大間々町で発見された突然変異のオオムラサキは「雌雄陥合体オオムラサキ」と呼ばれ、世界的にも珍しいものなので標本を北杜市オオムラサキセンターで展示する』という内容のものでした。
「陥合」って難しい言葉ですね!?「かんごう」と読めばよいのでしょうか? 辞書に載っていませんし、WEBで検索しても上記の記事しか出てきません。 専門用語なのかな? いろいろ調べまくり、どうやら「嵌合」という字が正しいとわかりました。 それにしても見慣れない言葉です。 しかしこれは辞書にあり、意味は「軸と軸受けのように、機械のいろいろな部分がはまり合う関係。 また、その具合」だそうです。 そして検索文字を「雌雄嵌合体」としたら、たくさんヒットしました(よって以後この漢字を使います)。
ウィキペディアによると「雌雄嵌合体」は『雌雄モザイク(gynandro-
morph)ともいい、生物において一つの個体の中に雄の特徴と雌の特徴を持つ部分が、明らかな境界を持って混在していること(モザイク状態)。 性的モザイクと呼ぶこともある』とありました。
先の「八ヶ岳ジャーナル WEBTODAY」の記事によるとオオムラサキの「雌雄嵌合体」は『羽が左と右で雌雄に分かれているだけでなく、生殖器も雌雄両方ある。 ホルモンの誤作動により、オスとメスが同時に成長してしまったのではないかといわれている』のだそうです。
また山梨日日新聞2006年10月12日の記事で、標本を展示した北杜市オオムラサキセンターの話しとして、「雌雄同体のオオムラサキの標本は世界で2例しかない」とあります。
もしかして、激レアなものを見ちゃったのかな? いや、わかりません。 雌雄同体も、いろいろな種類があるのかも? その中でモザイクとか雌雄嵌合体は超珍しいが、他の種類の雌雄同体はさほど珍しくないのかも? 昆虫はドシロウトの私には、まったくわかりません。
誰か教えてくれないかな〜 と期待してもそんな奇特な方が偶然このページをご覧になる確率は非常に低いでしょうね。 でも気になります。 八ヶ岳ジャーナルか、北杜市オオムラサキセンターに問い合わせてみようかな?
そうそう、この彼と言うか彼女というか、雌雄同体君がちょっかいを出していたのが、下のオオムラサキの雌です。 雌にちょっかいを出していたということは、雌雄同体君の中では、男が勝っていたのかな??
(上記にある報道機関の外部サイトの最終閲覧日は、2001.07.26です)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
-
#1
残念ですが、写真の蝶はオオムラサキの雌雄かん合体ではなくてコムラサキの雄ですね。コムラサキの雄は大変きれいで見る方向によってムラサキに光り輝きます。斜めから見ることによって片側だけ光って見えたようです。私は中学のとき生物部の採集について行き、コムラサキがあまりにもきれいだったので採集をはじめました。採集をやめて12年になり、コムラサキもずいぶん見ていませんが、また見てみたいものです。
-
#2
ねむネコさん、コメントをありがとうございます!
超珍しいオオムラサキの雌雄嵌合体ではなかったのは残念ですが、詳しい方のコメントを頂けて嬉しいです。
わかってらっしゃる方は、きっと苦笑いしながら眺めていたことでしょう。さっそく訂正します。
それにしても、ちょっとした光線の加減でずいぶん違った色に見えるのですね。勉強になりました。
また何かお気づきの点がありましたら、ご指摘よろしくお願いします。
クジャクチョウ
Inachis io
孔雀蝶 タテハチョウ科 クジャクチョウ属
上は2005年に初めて見ることができたクジャクチョウです。 標高1500mを超える、野反湖の湖畔でした。 図鑑などで見たことはありましたが、本物は初めて。 翅の模様に驚きました。
4枚の翅の表側前縁に、それぞれ大きな目玉模様があります。 まるで動物の目のようで、こちらを見つめているように見えます。 これは鳥などの捕食動物に対する威嚇の効果を期待してこのようになったのかも知れません。 目玉模様は専門用語で「眼状紋」というそうです。
Wikipediaによると、ヨーロッパから中央アジア、中国、朝鮮半島、日本、樺太、シベリアまで、ユーラシア大陸の温帯、亜寒帯域に広く分布するそうです。日本では滋賀県以北に分布。
前翅の長さは26-32mm。 クジャクチョウの名の由来は目玉模様がクジャクの飾り羽を思わせるからです。 英名 Peakcock butterfly といいますが、Peacock はクジャクのことですから、和名と同じ意味の名前です。
マルバダケブキの花で吸蜜しているのか、休んでいるだけなのか...
鮮やかな表面に対して、翅の裏面は暗褐色で非常に地味です。 翅を閉じてしまうと枯葉のようになり、とたんに目立たなくなります。 これも保護色なのでしょう。
イラクサ科カラムシ属のアカソの葉で休むクジャクチョウです。 やはりこっちを見ているように見えます。
幼虫の食草は、イラクサ科のイラクサ、ホソバイラクサ、エゾイラクサやクワ科のカラハナソウなどです。 アカソもイラクサ科なので食草になるのかな?
2013.09.07 掲載
ツマグロヒョウモン
Argyreus hyperbius
褄黒豹紋蝶 タテハチョウ科 ツマグロヒョウモン属
2008年7月。野反湖で見慣れないチョウを見つけました。後で調べるとツマグロヒョウモンの雌とわかりました。その分布域は、Wikipediaではこのように説明されています。
『日本では南西諸島、九州、四国、本州南西部で見られる。 本州では1980年代まで近畿地方以西でしか見られなかったが、徐々に生息域が北上し1990年代以降には東海地方から関東地方南部、富山県・新潟県の平野部で観察されるようになった。 2002年には北関東でも目撃報告がある。2006年現在、北関東でもほぼ定着し、普通種になりつつある』。
簡単にいうと暖かい地方にしかいなかったチョウが、北の地方に生息域を広げているということなのでしょう。 「北関東でも定着した」そうですが、ここ野反湖は標高1500m以上。 ずいぶん高地にまで進出してきたものです。 やはり温暖化の影響なのでしょうか? ただ、成虫を見ただけなので野反湖近辺で繁殖までできているかは、不明です。
蛇足ですが、我が家のある東京都小平市でも、最近珍しくないほどツマグロヒョウモンを目にすると、Hiroが言っております。
2011年8月。またしても野反湖でツマグロヒョウモンの雌を目撃しました。 今回は吸蜜に夢中で近づいても逃げないので、いろいろな角度から見ることができました。 北関東の亜高山帯でも珍しくないチョウになったのでしょうか?
2011.09.05 掲載
あひる (金曜日, 21 1月 2011 09:20)
やさしい、かわいらしいですね。
オオムラサキとは雰囲気全然違いますね。
どっちもきれい!
スナビキソウ。調べてみました。
きれいなお花ですね。
で、葉っぱ美味しそうやぁ^m^
おひたしにしたら、元気百倍!?
hanasanpo (金曜日, 21 1月 2011)
チョウのページまでご訪問いただき、ありがとうございます!
アサギマダラは本当に美しいチョウで、花から花へふわりふわりと渡っていく姿を見るだけでも心が癒されます。
スナビキソウの葉はおいしそうですが、どうかお試しにならないように!ピロリジジンアルカロイドという肝臓に猛毒となる物質が含まれているそうです。アサギマダラはこれを摂取し体に蓄えるそうです。その理由は敵からの防衛のためであると共に、オスが放出する性フェロモンの原料ともなっているそうです。奥が深いですね〜