2012年5月26日。 ホテイランは翌日、南アルプスでを観察する計画は立てていました。 ここ八ヶ岳山麓では、別の花がお目当てだったのです。 その花は無事見つかり・・・他にも咲いていないかと周辺を探索していると、目の隅に誰かの視線を感じました。 その方向を見て目を凝らすと・・・周りの風景には一切無い、鮮やかな色彩が目に飛び込んで来ました。 ホテイランです! 先ほどは布袋様の視線を感じたのでした。
上の写真は斜め後方より陽が射し、唇弁の背後の距が透けて見えます。 こんな姿を見ることができて幸運でした。
ホテイランは2010年に長野県内の2ヶ所で初めて見ることができました。 1箇所は人から教わり、もう1箇所はネットなどの情報で調べたものです。 いずれも自生地として有名らしく、多くの方が観察に訪れていました。
しかし今回偶然見つけた場所は、ほとんど人に知られていない場所であると思います。 周辺には踏み跡など、人が立ち入った形跡がまったくありませんでした。 私たちが時間をかけて観察している間も、その場所への行き帰りも、人に出会うことはありませんでした。 希少な花の自生地を発見できたことは、かなり嬉しいです。 広大な八ヶ岳の山麓には、他にもまだひっそりとこのような場所が残されているのかも知れません。
見渡せる範囲で10株近くが点々と咲いていました。 その一つ一つを見て歩きたい衝動に駆られました。 しかし地面を見ると、まだ花茎を出していないホテイランの葉が多数ありました。 周辺一帯、花の数の何倍もありそうす。 注意して歩を進めたとしても、落ち葉に隠れた葉を踏みつけてしまう恐れが高いと判断しました。
こんな無垢な自生地を自分たちで傷つけたくありません。 奥に立ち入るのはやめました。 一番手前の花の近くに腰を下ろし、そこから見える範囲で観察することにしたのです。 一つの花をとても近くで見ることができたら、残りは遠くから眺めるだけでも十分です。
布袋様のお顔のアップです。「高山植物の貴婦人」と呼ぶには
似つかわしくない、おヒゲを生やしていらっしゃいますね。
図鑑ではこのおヒゲを「房毛」と称していました。 3つに
分かれて生えています。 はっきりはわかりませんが、1つの
房にはおよそ30本ほどの毛が生えているように見えました。
ホテイランの葉の裏側は、紫色を帯びています。
翌日再訪した、以前訪れたことのある別の自生地にて。
まだ健在でした。
2012.06.06 掲載