「鎌倉のお寺の木にフウランが着生しているらしいから、見に行こうか」などと話していたら、偶然にも鎌倉市ご在住の方からホームページのリンクについて連絡をいただきました。 これは渡りに船と、フウランについてお尋ねしたら、残念ながらまだご覧になっていないとのこと。
しかし、ネットで調べた結果を教えて下さったり、実際に咲いている場所に足を運んで、ホットな開花情報まで教えて下さったのです。 1,2回のメールのやりとりでそこまでして下さる方は、なかなかいません! 本当に感謝です。 七夕で混み合う鎌倉でしたが、いただいた情報のお陰で、まったく迷わずに複数のポイントで花を見ることができました。
上の写真は、あるお寺の庭の木に人の手でつけられ、保護されているものです。 目の高さなのでじっくり観察できました。 素晴らしい香りも嗅ぐこともできましたよ。
上は大きな神社の境内にある、イヌマキの大木についたフウランです。 こちらは野生のものです。 「風蘭」の名の通り、種が風に乗って飛んできて付いたのでしょうか。 着生している太い枝は、地面から10m以上の高さだったと思います。 根を長く伸し、しっかりと木につかまっています。 やはり野生種は逞しさを感じます。
花は... 残念ながらちょっと早過ぎました。 開花にはまだしばらく時間がかかりそうです。 距は、先端が花の基部にくっつきそうなほど、前方に湾曲していました。
別な角度から。 白く長い気根が張り巡らされて
いました。 フウランは、常緑広葉樹林内の樹幹や
岩石上に着生する、常緑の多年草です。 関東地方
南部〜沖縄県に分布し、花期は6〜7月です。
一番上の写真と同じ株に戻ります。 完全に開花した花、
間もなく開花する蕾、まだ距も出ていない若い蕾と、いろ
いろな段階の花がありました。
ものすごく花つきがよいので、この株は園芸的に手を加
えられた品種である可能性が高いです。
葉は分厚く肉質で、断面がV字形になるように窪み、背
面には鋭い稜がありました。 触れてみたらとても硬かっ
たです。
花は純白で大変美しい。 萼片と側花弁は線状披針形で緩く
反り返り、長さ約10mm。 唇弁は長さ7〜8mmで、中部付近
で3裂し、側裂片は小さく、中裂片は狭卵形。 唇弁中央付近に
は突起状の部分がありました。 蕊柱は高さ約2mm、葯は白色
で広卵形とされていますが、上の写真では淡黄色に見えます。
江戸時代より愛好される伝統的園芸品種で、その一群を富貴
蘭(フウキラン)と呼ぶそうです。 今では野生種に出会うの
は難しい状態になってしまっています。 ネットでフウランを
検索すると、園芸種のページがどっさり出てきて、野生種のペ
ージを見つけるのが大変でした。 確かウチョウランも同じ様
だったな。
花茎は長さ3〜10cmで、薄緑色。 花に近い部分ほど
白っぽくなっていました。 距も白色ですが、先端部分
に微かに緑色が入ります。 細長く美しい弧を描いて下
垂し、長さは5cmほど。 花茎や距の曲線も、この花の
美しさの一部だと感じました。
花柄子房にねじれは見えないので、フウランは「スト
レート・唇弁下側タイプ」のランです。
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フウランの情報を下さいました、鎌倉市のイリヤさんに感謝です。 実はイリヤさんのフウランのお写真が大変素晴らしいので、拝借してこのページに掲載させていただくことを申し出ました。 快諾していただけたのですが、やはり人様のお写真をお借りして自分のページを構成するのは適切ではない気がしてきたのでやめます。
イリヤさんのブログでは、鎌倉の四季折々の風景や花が、とても生き生きとした写真で切り取られています。 私には思いつかないような構図のお写真ばかりで、楽しいだけでなく、大変勉強にもなります。 鎌倉に興味がある方もない方も、ぜひ一度ご訪問されてみてはいかがでしょう?
こちらです>> 「今日の鎌倉」
http://web-kamakura.cocolog-nifty.com/blog/
2013.09.04 掲載
<フウランの送粉昆虫に関する情報>
EUROPEAN JOURNAL OF ENTOMOLOGY
2015 Kenji SUETSUGU, Koji TANAKA, Yudai OKUYAMA, Tomohisa YUKAWA
佐藤千秋 (火曜日, 15 3月 2016 18:45)
鎌倉のお寺のフウランは見事ですね。私の家にも二十数年まえに園芸店で買ったフウランがあります。。何度も枯らしそうになりましたが乾燥に驚異的に強く今日まで生き延びできました。通常は5月に花が咲きますが今年は3月中に咲きそうです。フウランはたぶん野生種だと思います。購入したとき中国フウランと書かれた札がありました。
HiroKenのKen (火曜日, 15 3月 2016 22:59)
ありがとうございます。園芸種は守備範囲外ですが、いろいろな種類があるようですね。
小川和子 (金曜日, 15 9月 2017 20:23)
風蘭の記事とても参考になりました。
いけばなを教えています。花のことなら何でも参考にしたいと思います。
つたないブログ「優和のいけばなブログ」ものぞいてみてください。
私の風蘭も大事に育てたいと思います。
Ken (金曜日, 15 9月 2017 21:48)
当サイトをご訪問いただきまして、ありがとうございます。
野山に自然に咲く花以上に美しいものはないと思っておりますので、
大変申し訳ありませんが、いけばなは興味の対象外です。
柴崎 (金曜日, 05 7月 2019 05:13)
風蘭はいいですね。暖かい海辺の古木に着いていますね。風雨の後枯れ枝と共に落ちていることがありますよ。庭に幾株かの風蘭あります、関西より
Ken (金曜日, 05 7月 2019 07:19)
地面に落ちてしまった株はそのままでは朽ちるだけですから、庭の木につけてやればレスキューになりそうですね。
上村 (木曜日, 30 7月 2020 11:52)
夫の実家から、フウランを貰ってきて余り手入れせず野晴らしでしたが、今年は、
沢山蕾が付いていたので、家に入れて見ています。
今まで母からいい香りがする、と言われましたが、全然しないと思っていました。
花が咲き始めたがしないと思っていたら夜になるとそれはそれは、良い香りが漂い、朝はまたしません、何度も繰り返している、不思議な花だとおもて、このページをしらきました。これからは、増やして、育てたいと思います
Ken (木曜日, 30 7月 2020 20:25)
上村さん、貴重なコメントをありがとうございます! 以前より、
・フウランの花が白色なのは、夜暗いときに目立たせるためではないか?
・長い距は、スズメガなど大型の蛾が送粉昆虫だからではないか?
と思っていましたが、夜になると芳香を発するというお話を聞いて、確信が持てました。そこで調べてみたら、やはりスズメガの仲間が送粉昆虫であることが、研究者によって明らかにされていました。2015年に植物研究者の末次健司さんらにより論文が発表されていました。この下に参考文献としてリンクを追加しました。英文の論文ですが、スズメガがフウランに来て長い口吻を伸ばして密を吸っている鮮明な写真があります。
今後ともよろしくお願いいたします。