ハマカキラン

(エゾスズランの別名)

 

浜柿蘭 ラン科 カキラン属

Epipactis papillosa Franch. et Sav. var. sayekiana (Makino) T.Koyama et Asai

絶滅危惧ll類(Vulnerable)

 ハマカキランは、長らくエゾスズラン(別名アオスズラン)の変種として区別されてきましたが、最近の研究で、形態からもDNA情報からも区別できないことが明らかになり、同種となりました(*1)。 従って「ハマカキラン」の名称は、エゾスズランの別名となります。 またエゾスズランと同種とされたことから、次回の環境省のレッドリストの見直しで、絶滅危惧の指定からも外されるものと思われます。

 

 海岸近くに咲くハマカキランが、実は亜高山帯にも咲くエゾスズランと同種であったとは驚きですが、DNA情報で区別できないのであれば、同種で間違いないですね。

 

2017.06.09 追記

 

ハマカキラン 2012.06.17 茨城県
ハマカキラン  2012.06.17 茨城県

 

 ハマカキランは 何度かあちこちの海岸に探索に出かけ、

やっと自生地を見つけることはできたのですが、まだ蕾で

あったりして花を見ることができないでいました。

 

 しかし今年(2012年)、茨城県のある海岸に別の花目

的で訪れた際に偶然見つけ、ようやく開花した花を見るこ

とができたのでした。

 

ハマカキラン 2012.06.17 茨城県
2012.06.17 茨城県

 

 高さは50〜70cmほどになります。 海岸近

くの松林の開けて明るい場所に咲いていました。 


ハマカキラン 2012.06.17 茨城県
2012.06.17 茨城県

 

 エゾスズラン(カキラン属)の海岸型の変種だそうです。

確かに形は似ていますがカキランのように色彩豊かではな

く全体として黄色なので、エゾスズランに近いと思いま

した。 エゾスズランと同種と判明したそうです。

 

 青森県から愛知県に至る太平洋側の海岸のクロマツ林の

中という、限定された場所にしかいません。 人間の開発

により自生地が減少し、大きく数を減らしているそうです。

また東日本大震災の津波で、東北地方では多くの自生地

失われたという記事(岩手日報2011.12.28)もありまし

た。 人間の活動と自然災害の両面から攻め立てられ、こ

の植物の存続が非常に危ぶまれる状態であると思います。

採集などもってのほかです。

 

ハマカキランの花の構造(背萼片、側花弁、側萼片、唇弁、葯帽、花粉魁、蕊柱)
ハマカキランの花の構造

 

 花は20〜30個とカキランの10個程度より多くつけますが、花色が黄緑色のせいか、目立ちません。 地味系のラン、といっても差し支えないでしょう。 ただし、よく見るとなかなか味わい深いランだとも思います。

 

 萼片は狭長卵形で鋭頭、長さは9〜12mmです。 側花弁は卵形で、萼片より短い。 唇弁は花弁と同長、下唇(唇弁の奥側)は半球状楕円形で内部は暗褐色、上唇(唇弁の手前側)は三角形で先端はやや尖ります。

 

ハマカキランの花柄と子房は境界が明確。 花柄にねじれあり。
ハマカキランの花柄と子房は境界が明確。 花柄にねじれあり。

 

 ランは花柄と子房の境界が不明瞭なことが多いので両者を

合わせて「花柄子房」と呼ばれます(単に子房としている図

鑑も多い)。 本種は花柄と子房の色や太さが違うので区別

ができました。 子房は太く緑色で、花柄は細く盛り上がっ

た筋があり、やや赤みを帯びています。

 

 複数の花柄がねじれていることを確認できたので、ハマカ

キランは花柄が180°ねじれて唇弁を花の下側につける「標準

タイプ」のランであると思います。 しかし上の写真の矢印

部のようにねじれが見られない場合もあり、サイハイラン

ように「ストレート・180°ねじれ混在型唇弁下側タイプ」で

ある可能性も捨て切れません。 次回出会えたときには、特

にこの点に着目し観察してみたいと思います。

 

 上の写真では茎に縮れ毛が生えている様子もわかります。

 

ハマカキランの葉
ハマカキランの葉

 

葉は5〜7個互生し、楕円状卵形で、先は

尖ります。長さは7〜12cm、幅2〜4cm。

 

カキラン
エゾスズラン
ハマカキラン

ハマカキラン=エゾスズラン

 


 カキラン属3種を並べてみました。 ハマカキランはエゾスズランの変種という位置付けなので、よく似ていますね。 と同種です。 カキランは明るく目立つ色合いや、立ち上がる背萼片の違いが目立ちます。 和名はそれぞれの専用ページにリンクしています。

 

 

< 引用・参考文献、及び外部サイト >

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*1 日本のラン ハンドブック ①低地・低山編

   http://www.bun-ichi.co.jp//tabid/57/pdid/978-4-8299-8117-7/catid/1/Default.aspx

   文一総合出版 2015年5月1日 初版第1刷 p.62 エゾスズラン

   http://www.bun-ichi.co.jp/ 

 

 

2012.12.11 掲載

2017.06.09 エゾスズランと同種となったことを追記

2017.08.17 エゾスズランの変種であるという記述が残っていたので

      見え消し線で訂正。