とうとう、念願のキンセイランを見ることができました!
薄暗い杉林の中で咲くシャープな花は、まるで宵の明星が
キラリ!と輝くようでした。「金星蘭」とも書くようです
が、納得です。
ずっと見たかったのですが、自生地の手がかりがなく、
探すことすらできていませんでした。 ところがある土曜
日に静岡県の花友さんから電話が入り...「咲いているよ!
すぐ来れば間に合う。 来週だと遅いかも!」と。
以前キンセイランが見たいとお伝えしたことがあったの
ですが、それを覚えていて下さったのです。 しかもなん
と、キンセイランを見つけられたその場から電話して下さ
ったのです! 花友さんに深謝いたします。 持つべきも
のは、心優しき花友さんです!
このチャンスを逃したら、次は早くて1年後。 場所は
やや遠いが、日帰りできない距離ではない! ということ
で急遽、翌日に見に行くことにしたのです。
高さは40cmほどでした。 およそ30〜50cmに
なるようです。花はまばらに6個咲いていて、茎頂
の1個はまだ咲き始めでした。
Hiroは「優しい感じのランだね」と言いましたが、
私は「キリッとして、カッチョイイ!」と思いまし
た。 感じ方は人それぞれですね。
葉や茎はなんとなくひょろひょろしていますが、花は気品に
満ち溢れ、堂々としていて、とても魅力的です。 唇弁以外の
花被片は、黄色というより黄緑色に近い。「金精蘭」の金は黄
色っぽい色が由来だと思いますが、生育する薄暗い環境も考慮
すると、やはり「金星蘭」と書くのが相応しい気もしました。
逆光気味に見ると萼片が透き通るように輝き、美しい。
萼片の長さは1.5〜2.0cm。 側花弁は萼片よりやや短く、
細い。 唇弁は基部が暗紫色で、全体としては白く、基
部から急に幅広くなり、3裂します。 側裂片は小さめ。
中裂片はやや角張った楕円形で、先端は尖ります。
順光での撮影です。 クリックして拡大してみて下さい、
唇弁の構造の複雑さがわかると思います。 唇弁の中央の
薄い黄色の部分は、とさか状のひだですが、図鑑にはこれ
が3条あると書いてありました。 でもその両側にも不規則
な形をした小さな裂片が見えます。 次の写真でもっとよく
見てみましょう。
斜め横から見ると... 「とさか状のひだ」は中央の3条の
両脇にも、とても小さいながら2条づつ見えました。 これ
らも含めると7条あることになりますね! この「ひだ」が
唇弁を複雑な形に見せているのだと思います。
もう一つ気づいたことがあります。 このように斜めから
見ると、蕊柱の先端部が凹んで見えます。 ここには花粉塊
があるはずなので、おそらく訪れた昆虫の背中にくっついて
持ち運ばれた後の状態なのでしょう。
上の写真は花の横顔です。 距は短く5mmほど。
苞は披針形で長さ1〜2cm。 花柄子房にねじれは
見られないので、キンセイランは「標準タイプ」で
はなく、「ストレート・唇弁下側タイプ」とします。
花の後姿です。 側花弁の基部が後方に巻き込んで筒状になっ
ているのがわかります。 子房の稜には微毛が生えていました。
図鑑には「葉は3〜5個つく」とありましたが、この株は10個
ほどつけていました。 広披針形で長さ15〜30cm、幅1.5〜3.
5cmで、先は尖ります。 脈が目立ち、縁はやや波打っていて、
毛はありません。
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この素晴らしい植物が、いつまでもここで花を咲かせ続けることを願わずにいられません。 数を減らし、絶滅が危惧される状態になってしまった原因は、自生地の開発や環境の遷移もありますが、主原因は園芸目的の採集とも呼ばれる「盗掘」です。
植物の生きる目的はただ一つ、子孫をできるだけ増やすことです。 できるだけ多くの子孫を、できるだけ広範囲に繁栄させたい。 これが植物の生きる唯一無二の目的です。 そんな彼らが限定された場所にしかいないのは、その環境でしか生きることができないからです。 他の場所でも生きられるなら、もっと多くの場所で見ることができるはずです。
持ち帰っても絶対に育ちません。 植木鉢の上で無残に枯らすことになるのは必至なので、絶対に持ち帰ってはなりません。 それよりも彼らが選んだ環境に出向き、最高に美しい姿を鑑賞しましょう!(見つけるのは大変なんですけどね)
2013.07.19 掲載
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牧野貧太郎 (火曜日, 31 3月 2015 18:00)
キンセイラン。土佐では大変な事になっております。
山主が木を出す為に、どうしても、林道が必要とのことで、調べてみますに、
なんとそこに、キンセイランの群生地があるのです。
さてどうしたものか?愛好家の方が、移設しか方法が無いと決断しまして、100株程を、自生地に似た環境地へ移設したのですが。心配で、牧野植物園の方に、見てもらわないと、とても安心できない。当然ランの専門の先生を案内したのが昨日の事です。結果、多分、大丈夫でしょう。との、見解をを聞き、一息ついてる。と言うことです。土佐の山は深い。高知市から往復10時間もかかります。
hanasanpo (火曜日, 31 3月 2015 21:29)
キンセイランが、100株とは! そんな場所が、まだ四国には残っているのですね! しかし、移植先でこれからも生きられるのか、心配です。 移植先にもすでにキンセイランがいたのなら、心配は薄らぎますが... なんとか生き延びて、願わくば数を増やしてほしいものです。
牧野貧太郎 (木曜日, 18 6月 2015 10:33)
移植は成功らしく。2、30株に花を付けています。
本来の繁殖地には、何100株が残されています。
そこがどうなっているか、見たいと申し出るに、ブルトーザーで押して、道を
作っている段階で、土砂崩れが起こり、行けない状態だそうです。
残念。しかしもっと残念なことは、帰り途に、先生が知ってる、珍しらしい
花の、群生地に寄ることにしたのですが、ビシビシと除草剤が散布され全滅です。
全滅の花のなまえは忘れました。それは先生の落胆を隠さない、寂しそうな顔に
先生の年齢を見たからです。
キンセイランは流石、海老根の女王と呼ばれるだけ有って、見事でです。
山は泣きますか?泣きます。
先生の年齢
hanasanpo (金曜日, 19 6月 2015 07:59)
移植後にも花を咲かせたとのこと、よかったですね!
新しい場所に根付き、来年以降も花を咲かせる と保証された訳ではないと
思いますが、まずは第一段階クリア!ですね。
移植に携わった方々のご尽力の賜物と思います。
除草剤で全滅させられた花は、何だったのでしょうね?
何であったにせよ、とても残念なことです。
先生が落胆された気持ちがよくわかります。
牧野貧太郎 (土曜日, 20 6月 2015 11:56)
「高知県では此処でしか自生地を見たことが無い」先生の落胆を意味する、野草の
名前はヤマタツナミソウです。平野さんのご指摘の通りキンセイランは、移植して2,3年は花を付けますが、それ以後が心配です。その特性を利用して、盗掘して売られていますが。もっての他です。いくら指摘しても不埒な者はいなくなりません。キン(金「カネ」)に目ががくらんで、うる方も、買う方も、無くなりません
いくら愛しても、自分の物にはなり得ません。
hanasanpo (日曜日, 21 6月 2015 16:51)
高知県で唯一と思われる自生地が、除草剤で全滅させられるとは、なんともやりきれない思いですね。そんなことで貴重な自生地が失われるのは、本当に残念なことです。
希少な植物は法的な罰則を強化しないと少なくならないのではと思っています。
盗掘した者はもちろん、売った者・買った者・そして所持している者も処罰の対象にしないと、減らないと思います。悲しいことですが、良心の無い人の良心に訴えるのは、無駄な行為だと思うようになりました。