埼玉県・茨城県・岩手県の限定された山地に生育する、高さ20〜60cmの多年草です。 洋岸に咲くスカシユリから分化し、山地生となった変種とされています。 埼玉県の武甲山で発見されたので、学名が bukosanense となっています。
石灰岩地を好みます。 武甲山では北側に石灰岩地が分布しますが、山の形が変わるほどの大規模な石灰岩の採掘が行われており、絶滅に近い状態であるようです。 また自生地は採掘場となっているので立ち入り禁止で近づけません。
ここ茨城県では、奥久慈などの山地に散在していますが、いずれも人や動物が近づけない断崖絶壁にのみ残っているとのことです。 古くから園芸目的や食用で採取され、また鹿の食害の被害にも遭い、人や動物が近づける場所ではほとんどなくなり、危機的に数を減らしたようです。
上の写真は袋田の滝の展望台から撮影したものです。 花までの距離は15mほど。
遠くの断崖絶壁に点々と咲いている姿が見えました。 ほとんど垂直の崖で、高さも100m以上ありそうです。 表面は崩れやすそうに見え、人はおろか鹿や猿でも近づくことはできないでしょう。
茎は岩場から垂れ下がり、花は上向きに咲かせます。
葉は線形で、母種のスカシユリよりずっと細いです。
あまり人が立ち入らなさそうな場所に行ったら、幸運にも数メー
トル上に咲いている株を見つけました。 花被片が強く反り返るこ
とも本種の特徴ですが、それがよくわかりました。
頭上10mほどのところにいた株です。 葉の細さがわかります。
花被片の間は間隔が空き、花の向こうが透けて見えることが「透百
合」の名の由来ですが、ミヤマスカシユリは母種のスカシユリより
更に広く間隔が空いているように見えました。 希少な植物を見る
ことができ、満足の花さんぽでした。
同じ日、茨城県の海岸で母種のスカシユリを見ることができました。 花は花被片の間の隙間が狭く、あまり透けて見えませんね。 葉はミヤマスカシユリよりずっと幅が広く、厚く、そしておそらく硬いです。
2014.12.15 掲載
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