ユキノシタ

 

雪の下 ユキノシタ科 ユキノシタ属

Saxifraga stolonifera Meerb.

#1 ユキノシタ 2018.05.19 東京都
#1 ユキノシタ  2018.05.19 東京都

 

 本州から四国・九州まで、薄暗く湿った場所に生えます。 ユキノシタ属の中では、最もよく目にする植物であるかも知れません。 庭先で栽培されている姿を見かけることも少なくありません。 このためあまり真剣に写真を撮ったことがなく、このページをつくる際には少し困りました。

 

#2 ユキノシタの葉  2017.04.13 東京都羽村市
#2 ユキノシタの葉  2017.04.13 東京都羽村市

 

 根出葉は束生し、長さ3〜10cmの柄があります。 葉は腎円形で、基部は心形。 表面は暗緑色で、脈に沿って白斑があり、これが本種の特徴の一つです。  裏面は暗紫色を帯びます。 また葉や茎には、赤褐色の粗い毛が生えます。

 

 ユキノシタの名の由来は諸説あるようですが、図鑑(*1)によれば、「葉が常緑で白斑があるのを、表面に雪が積もった状態に見立てて名付けられたという」と書かれていました。

 

#3 ユキノシタの走出枝  2007.05.12 東京都八王子市
#3 ユキノシタの走出枝  2007.05.12 東京都八王子市

 

 種子による種子繁殖だけでなく、多数の走出枝を出して、その先端に新苗を生ずる栄養繁殖でも増えます。 上の写真で、紫色の糸状で縱橫に伸びているのが、走出枝です。 たくさん写っているのですが、細くてわかりにくいかも知れないので、そのいくつかを矢印で示しました。

 

#4 林下に群生するユキノシタ  2003.06.08 東京都調布市
#4 林下に群生するユキノシタ  2003.06.08 東京都調布市
#5 群生するユキノシタ  2015.05.31 愛知県
#5 群生するユキノシタ  2015.05.31 愛知県

 

条件がよいと、#4、#5のように大きな群生を形成します。

 

#6 ユキノシタ  2015.05.31 愛知県
#6 ユキノシタ  2015.05.31 愛知県

 

 花茎は高さ20〜50cmで、円錐状の集散花序に、ややまばらに花をつけます。

 (上の写真の株は、やや花期のピークを過ぎてしまっています)

 

#7 ユキノシタの花  2007.06.24 群馬県吾妻郡
#7 ユキノシタの花  2007.06.24 群馬県吾妻郡
#8 ユキノシタの花 見頃の状態  2007.06.24 群馬県吾妻郡
#8 ユキノシタの花 見頃の状態  2007.06.24 群馬県吾妻郡

 

ユキノシタの花期は5月〜6月。 多数の花を咲かせると、とても賑やかな感じです。

 

#9 ユキノシタの花の正面  2007.06.24 群馬県吾妻郡
#9 ユキノシタの花の正面  2007.06.24 群馬県吾妻郡

 

 ユキノシタの花はあまり大きくはないですが、近寄ってよく見ると、とても美しい花であることがわかります。 見かけたら、ぜひ花に顔を近づけて、じっくり観察してみて下さい。 正面からの写真#9で花の各部を説明します。

 

①上部に3つの小さな花弁があります。 卵形で、長さは約3mm。 先端はとがり、

 基部は浅い心形となり、短い「爪」があります。 トランプのスペード♠のマーク

 に似てなくもありません。

 この小さな花弁の上側2/3は淡紅色で、その中に不規則な形の濃紅色の斑紋があり

 ます。 下側1/3はほぼ白色で、その中にの濃黄色の斑紋があります。 濃紅色の

 斑紋は、似た花であるハルユキノシタには、ありません。

 

②下側の2つの花弁は披針形で、上側の3花弁よりずっと大きく、長さが1〜2cmあり

 ます。 大きさは多少、不揃いです。 上側3花弁が色彩豊かなのに対して、潔い

 ほどの純白。 上側3花弁との色彩のコントラストが素晴らしい。

 

③雄しべは10個あり、長さは約5mmで、開花後徐々に放射状になります。 花糸は

 白色で、先端が基部よりやや太くなります。 裂開前の葯は、優しい淡紅色。

 

④ユキノシタの子房は上位で、上部は濃黃色の花盤に囲まれています。 花の中心に

 あるこの大きく目立つ花盤が、また美しい。

 

⑤2本の花柱は直立し、長さは約4mmです。 開花直後は短く、雄しべが花粉を出し

 切り、葯が脱落する頃には、長く伸長します。

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#10 花の正面-拡大
#10 花の正面-拡大

 

 上側3花弁の「爪」を示そうとして拡大してみましたが、雄しべに隠れて見えませんでした。 矢印の部分に、短い爪部があります。 似た花であるハルユキノシタの爪部は、もう少し長く目立ちました。

 

#11 ユキノシタの上側3花弁の濃紅色の斑紋にご注目  2007.06.24 群馬県吾妻郡
#11 上側3花弁の濃紅色の斑紋にご注目  2007.06.24 群馬県吾妻郡
#12 ユキノシタの濃紅色の斑紋は、花によりすべて異なります。 2007.06.24 群馬県吾妻郡
#12 濃紅色の斑紋は、花によりすべて異なります。 2007.06.24 群馬県吾妻郡

 

 ところで、上側3花弁にある濃紅色の斑紋の形は、花によりすべて異なります。 同じ株の花でも異なるのです。 みんな同じように見えても、実はそれぞれが個性を持つ花なのでした。 次回花に出逢えたら、ちょっと立ち止まって観察してみてはいかがでしょうか。

 

#13 ユキノシタの花の側面  2015.05.31 愛知県
#13 ユキノシタの花の側面  2015.05.31 愛知県

 

 萼裂片(矢印部)は卵状長楕円形で、長さ約3〜4mm。 花が咲くと反り返ります。 花柄や花序の枝には、紅紫色の腺毛が生えます。

 

 

 ずっと以前より知っていたユキノシタ。 あまりに簡単に見ることができることで、逆に詳しく見たことがありませんでした。 今回改めて詳細を確認し、とても美しい花であることを再認識しました。 

 

#14 ユキノシタの変わり花 下側下弁が3個あり、雄しべは12個ありました。 2018.05.19 東京都
#14 ユキノシタの変わり花 下側下弁が3個あり、雄しべは12個ありました。 2018.05.19 東京都

< 引用・参考文献、及び外部サイト >

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*1 日本の野生植物 草本 Ⅱ 離弁花類

   平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.171

 

*2 山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花 増補改訂新板

   http://www.yamakei.co.jp/products/2811070210.html

   山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.287

 

*3 ツユクサの庭  ユキノシタの花

     http://tuyukusa-life.la.coocan.jp/Saxifraga%20stolonifera.htm

   

※ 外部サイトは、それぞれの運営者の都合により、変更・削除されることがあります。

 

 

2017.05.26 掲載

2018.05.19 写真#1を入れ替え、写真#14を追加した。

 

 

コメント: 6 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    ゆき (木曜日, 01 6月 2017 21:57)

    こんばんは、hiroさん、Kenさん、よく聞くユキノシタ、細分化してみると、可愛らしい、お花ですね、直接的とカメラのレンズごしの繊細な、美しさに、あらためて、感動しました、ユキノシタ、大文字草、ジンジソウ、イズノシマ大文字草など、個々の進化と住み分け、勉強に、なります。ありがとうございます。

  • #2

    Ken (木曜日, 01 6月 2017 23:00)

    ゆきさん、こんばんは。各ページともボリュームがありますが、見ていただきまして、ありがとうございます。今回は自分の復習も兼ねて、それぞれの特徴がわかるようなページを作ってみました。
    実はあと1種、作成中です。ホシザキユキノシタ。この花は飛び抜けて変わっているので、面白いです。

  • #3

    しょうちゃん (金曜日, 20 3月 2020 18:35)

    ゆきのした、花の拡大を、見て、こんなに、綺麗だった‼️驚きました�

  • #4

    HiroKen (土曜日, 21 3月 2020 21:28)

    身近な植物の花も、近寄ってじっくり観察すると、その思わぬ美しさに驚くことがあります。ユキノシタもそんな植物の一つかも知れませんね。

  • #5

    きょうこ (木曜日, 28 5月 2020 08:51)

    いや~、もう、こんなにじっくり観察したのは�で、いぜんより大文字草好きですが、雪の下のほうが、妖精みたいで可愛いのに…、と思ってたどまりでしたが、此度のごあないで、益々、フアンになり、朝から立派に咲いてる鉢植えを観察です。ありがとうございました。

  • #6

    Ken (木曜日, 28 5月 2020 09:48)

    ユキノシタは比較的簡単に見ることができる花なので、あまり注目されない傾向があるかも知れませんが、このページを見て改めてその魅力に気付く方も多いようです。じっくり観察することも大事ですね。