牧野富太郎氏と並んで日本の植物分類学の基礎を築いた植物学者、大井次三郎氏が1929年に野反湖(当時は野反池)の湖畔で発見しました(発表は1930年)。 名前に「野反」を冠する、唯一の植物です。 「野反湖」は「のぞりこ」と濁りますが和名は「のそり〜」となっています。 学名もnosorienseですね。(勝手な想像ですが、大井氏は発見地の野反池を「のそりいけ」と呼ぶと勘違いされたのでは?)
ミヤマヒナホシクサの変種で、現在は野反湖と群馬県北部のもう1箇所のみで確認されているそうです。 環境省レッドリストには記載がありませんが、群馬県が絶滅危惧I類に指定している、希少植物です。
上の写真に写っている地面の穴は、人の踏み跡です。 地面がとても柔らかいので、深い穴になっています。 おそらく釣り人が歩いた跡だと思いますが、あちこちに踏み跡がありました。 あまり多くの人が来る場所ではないのですが、立ち入り制限などはないので、ちょっと心配な状況です。
高さは2~8cmほどで、花も小さいので目立ちません。 注意して見ていないと見過ごしてしまいそうです。 葉は長さ1.5~3cmで、幅は1.5~3mmと細く、ロゼット状になります。 花茎の先に直径2~4.5mm頭花をつけます。
気付いたことがあります。 花茎は20本ほど出ているのですが、1本を除き、外側に倒れてしまっています。 中心の1本のみ花茎が太く、長さも他より長いのです。 花も大きいように見え、明らかに他とは違うのです。 大きめの株はみなこのようになっていました。
中心部の太い花茎は、他とは違う、選ばれたものなのでしょうか? たくさん花茎を出すが、その中で一番強いものだけに栄養を集中させるとか...? 他のホシクサ属はどうなのでしょう? このことについていろいろ調べてみましたが、解は得られませんでした。 どなたかご存知の方は、ぜひお教え下さい。
頭花には雌花と雄花がつきます。 雌花の萼は内面に長毛があり外面は無毛、そして雌花の花弁の内面に長毛があることが、本種の特徴だそうです。 写真ではまったくわかりません。 花を分解して顕微鏡で観察しないとわからないのかも知れません。
野反湖はダム湖であるので、人間の都合により水位が上下します。 このことにも大きく影響され、年により出現率が増減します。 2011年は多数観察できたと、野反湖の友人・中村一雄さんより聞きました。
参考文献
花かおる野反湖 中村一雄 撮影・著 ほおずき書籍
参考サイト(最終閲覧日:2012年1月23日)
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2012.01.23 掲載
2018.01.01 参考サイトの消失などに対応した修正