本州中北部の日本海沿岸の多雪地帯に生える多年草です。 ヤマエンゴサクに似ていますが、全体に細長く、小さい。 高さは10〜15cmほど。 花冠の長さは、ヤマエンゴサクが15〜25mmであるのに対して、ミチノクエンゴサクは10〜13mmしかありません。 ひと目見て「小さい!」と感じました。
新潟県の海岸に近い低山の秘密の花園です。 春の柔らかな陽光が降り注ぐ中で、カタクリ、オオミスミソウ、キクザキイチゲなどと咲いていました。 人が気持ちよいと感じる環境は、植物たちにとっても、元気よく花を咲かせられる環境なのでしょう。
#2はカタクリとのツーショット。 新潟県沿岸部のカタクリの花は、関東の里山に咲くものよりも明らかに花が大きいですが、それを差し引いてもミチノクエンゴサクの小ささが際立ちます。 ヒメヤマエンゴサクの別名にも納得です。 花期は4〜5月です。
スプリング・エフェメラルの花が地面を覆い尽くす花園。 小さいながらもその一員として、しっかり花を咲かせていました。
地下の球形の塊茎から1本の茎を立上げます。 葉は2〜3回3出複葉で、小葉は線形〜楕円形です。 形状には幅があり、一概に「これが標準」といえるものはないと思います。
#5は数え切れないほど多くの株が群生してました。 しかし花茎を上げて花を咲かせている株は、多くはありませんでした。
花冠は細い筒状で、一方が唇形状に開き、一方に距があります。 他のキケマン属の花と比べて小さいですが、気のせいか唇形に開く上弁・下弁の大きさが全体に占める割合が大きいように思えます。
花弁がパッカーンとほぼ平開している花がありました。 上でも述べましたが、ミチノクエンゴサクの花は花冠の長さに対して、唇形の開口部が長いように思えます。
距が細くて短く貧弱な印象であるのに対し、唇形の開口部は立派に見えるのです。 もしこの比率が近縁種と明確に異なるとしたら、識別の手がかりになるかも知れませんね。 最後に、ミチノクエンゴサクの苞について述べます。
苞( 苞葉:ほうよう ともいう)は、花がつぼみのときには、花弁やしべを包み守っています。 開花後は花柄のつけ根の直下にあり、小さな葉のように見えます。 仲間の種によって苞の切れ込み(歯牙、欠刻)の有無があるので、苞は識別ポイントの一つとなります。
しかし本種の場合は少し注意が必要です。 個体により、苞の切れ込みがあったりなかったりするのです。 #9の個体は、青矢印で示した花序上部の苞には切れ込みはありませんが、赤矢印で示した花序下部の苞には切れ込みがあります。 切れ込みの深さは、下の葉ほど深いように見えます。
#10の個体は茎頂部の苞こそ全縁ですが(青矢印)、少し下の苞には、切れ込みがあります(赤矢印)。 茎頂部の苞より大きく目立つので、これに目を奪われて「苞に切れ込みがあるから、これはヤマエンゴサクだね」と判断を誤ってしまう可能性があります。
自分で観察した個体に限定されますが、苞の切れ込みの有無が混在する場合は、必ず花序上部の苞が全縁、下部が切れ込み有りとなっており、その逆はありませんでした。 従って、茎頂部の苞を確認することが重要となります。
#11の個体は6個の苞がすべて全縁です。
全縁の場合は、卵状楕円形で先端は尖ります。
< 参考にさせていただいた図鑑や外部サイト(順不同) >
文献・図鑑などの著作物や、個人・法人のWEBサイトにも著作権があることをご理解の上、ご利用下さい。
*1 日本の野生植物 草本2 離弁花類 平凡社 1982年3月31日 初版第3刷 p.125
*2 山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花 山と渓谷社 2013年3月30日 初版第1刷 p.248
*3 Plants Index Japan(撮れたてドットコム) 比較画面 - エンゴサクの仲間
*4 YList 植物和名ー学名インデックス Papaveraceae(ケシ科)
*7 KOBAIKEIの奥美濃散歩 山の花図鑑 ミチノクエンゴサク
(このサイトはなくなったようです)
※ 外部サイトは、それぞれの運営者の都合により、変更・削除されることがあります。
最終閲覧:2020.05.20
2018.03.28 掲載
ミチノクエンゴサクが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス
花さんぽ