2. ニリンソウの形態や葉
花のつきかたの話が先行してしまいましたが、もう一度全体を見直してみます。 ニリンソウは、落ち葉が積もったような環境に生育することが多いです。 落葉の層に覆われた地表面から1〜2cmの深さに、根茎があります(*6)。 根茎は横に這い、多肉質で長さは5cm程度、まばらにひげ根を出し、ときに匐枝となって伸び出します(*2,*12)。 根茎の先端に数個の根出葉(根生葉)と、1〜3本の花茎を束生し、茎頂に1〜3個の白い花をつけます(*1,*2)。 全体にまばらに毛が生えます。
#11は標準的な個体です。 花はひとつに見えますが、第1花の花柄の基部に第2花のツボミがあります。 長い柄がある2個の根出葉、輪生した3個の茎葉と2個の花を有する1本の花茎より成ります(根出葉の柄は角度的に見えません)。 根出葉、茎葉ともに艶はありません。 3個の茎葉は花茎を取り巻くようにつき、全体として1個の葉のように見え、根出葉に似た形ですが、柄がないことが特徴です。 これはサンリンソウなどとの識別点になります。
写真#11で茎葉について説明しましたが、図鑑・文献によりこの葉の表現が少し違うことに気がつきました。 下に使用した図鑑・文献の茎葉についての表現をまとめました。
図鑑*1:総包葉は3個で茎の先にあり無柄で3裂し、歯牙縁がある。
図鑑*2:茎葉は3枚が輪生し、無柄で深く欠刻する。
図鑑*3:茎葉は3個輪生し、無柄。
図鑑*4:茎葉は3個が輪生し、柄はない。
図鑑*12:茎葉は3個輪生し柄はない。
文献*5:1枚の総苞葉(文の前後省略)
文献*6:茎葉(総包葉)は3枚が輪生し、無柄で深く欠刻する。
文献*5が「1枚」と述べていることを除けば、どれも述べられていることは同じで、異なるのは「茎葉」か「総苞(葉)」という用語です。 もちろんどちらも正しく、図鑑*2のイチリンソウ属の解説では「茎は分岐せず1輪の茎葉を輪生する(このような茎葉輪はしばしば総苞とよばれる」とあります。
要するに茎葉ではあるが、茎の先に輪生状についている場合は、総苞(葉)とも呼びますよ、ということだと解釈しました。 次に根出葉を見ます。
#13はニリンソウの根出葉です。 左は裂片の間の隙間が広い葉で、右は隙間がなく見える葉です。 どちらの状態もよく見かけます。 葉の表面には淡白色の班が入ることが多いです。
全体的には、五角形状です。 図鑑では「根出葉は3全裂する。 側裂片はさらに2裂し、裂片は羽状に切れこむ」とあります(*4)。 側裂片については「さらに2深裂し」と表現した方がよさそうです。 図鑑の解説は明快なのですが、筆者はいつも実物を見るとよくわからなくなるので、部位毎に着色してみました。
葉は3全裂しますが、中央の裂片を中裂片、左右の裂片を側裂片と呼びます。 着色なしが中裂片、薄い赤色で着色したのは左の側裂片、薄い青色は右の側裂片です。 これを見ながら図鑑の解説を読むと、とてもわかりやすくなりました。
改めて眺めると、わざわざ手間をかけて説明画像を作る必要もなかったかな〜?と一瞬思いましたが、いやいや、色分けしてわかりやすくなったからそう感じるのであって、やはり作ってよかったと思います。
しかしこの葉の形、同じキンポウゲ科で猛毒をを持つヤマトリカブトの葉によく似ています。 有毒であることがほとんどのキンポウゲ科の植物において、ニリンソウは例外的に毒性が弱く、茹でてから水にさらすと毒性が消えるそうです。 このためニリンソウの若葉を山菜として食べる地方もあるそうですが... ヤマトリカブトは似た環境に生育し、混生していることもあります。 実際に誤食による重症の中毒事例もあるようです(*10 ,*11)。 本当に注意が必要だと思います。
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