南信州の天竜川の河原で、とても変わった野菊を見ることが
できました。 舌状花が、筒状になっているのです。 このよ
うなキク科の植物は初めて見ました。
キク科の植物の花は、多数の小さな花... 小花(しょうか)の
集まりです。 中心部には筒状の形の筒状花が集まり、周辺部
には平たい形の舌状花が並び、頭花(頭状花序)を形成します
(註1)。 舌状花も根元付近は短い筒状になっているのですが、
この花の舌状花は、先端付近まで筒状になっているのです。
舌状花が筒状なので細く見え、まるで幼児の描く「お日様」
のように見えます。 ただしかなり変化が多く、不完全に筒
状になったもの、筒状にならず不規則に切れ込んだもの、通
常の舌状花に見えるもの、など個体により様々で、同一個体
で異なる状態の花をつけているものも多数ありました。 と
ても不安定で、形状が定まっていないようです。 そのよう
な中で、上の若い個体は、30個近くつけたすべて頭花の舌状
花が、完全な筒状になっていました。
この個体の頭花は、舌状花の先端が4〜5裂
していました。 先端部の裂け方は様々です。
ヤマジノギクの変種とされています。 上の
頭花の舌状花は先端が深く裂け、その結果、筒
状の部分は短くなっています。
上側の頭花は通常と変わらないような舌状花を
つけています。 一方、下側の頭花の舌状花は基
部付近まで深裂し、その結果、多くの舌状花をつ
けているように見えます。
高さは50〜150cmほど。 水際より少し離れた、地盤が
安定していそうな場所に多くいました。 一時は大変数を
減らしたそうですが、河原の基盤整備や外来植物の駆除作
業で、数を回復して来ているそうです。 しかし分布域は
極めて限られているので、継続的な保全活動が行われない
と、絶えてしまう危険性が高そうです。
茎には毛が多い。
茎葉も毛が多い。 全体として、やや毛深い感じでした。
根生葉は開花期には枯れるようで、成熟した大型の
個体には、残っていませんでした。 若い小型の個体
には、わずかに残っていました。
果実期の頭花。 冠毛は明るい薄茶色でやや目立ち
ます。 舌状花は変冠毛とのことですが、この写真で
はよくわかりません。
註1)筒状花だけで舌状花がない種類(アザミなど)、舌状花だけで筒状花がない
種類(タンポポなど)もあります。
2013.11.15 掲載
大嶋久雄 (日曜日, 20 10月 2019 22:45)
67.8年前中学1年の時クラブ活動に郷土調査班があって今の豊丘村小学校の横を
流れる虻川の土手にいっぱい咲いているのを見つけました。花びら珍しいとのことで
担当の先生が牧野富太郎先生にお聞きしたらつつざき山路野菊と命名されたと聞いて
います。過日、発見した場所を探したが見つかりませんでした。
HiroKenのKen (日曜日, 20 10月 2019 23:16)
大嶋久雄様
コメントをありがとうございます。牧野富太郎先生がご存命のときのお話を聞かせていただきまして、大変感動しております。川の土手にいっぱい咲いている光景が目に浮かびます。私たちが2013年に見ることができた場所は、その場所から近い場所です。今は絶滅危惧にも指定され、67、8年前とは比べ物にならないほど数を減らしてしまっていると思いますが、元気に咲く花たちを見ることができました。ここに詳細な場所を書くことはできませんが、できればご案内したい気持ちです。