関東地方西南部の丘陵や低山の林内に生える、常緑の多年草です。 茎は黒紫色で地を這い、葉には長い柄があります。 和名は東京都の多摩丘陵で発見されたことに由来します。 花期は3〜4月。 関東地方西南部に自生するのは、本種とカンアオイ(カントウカンアオイ)、そしてランヨウアオイの3種のみといわれています。
葉は卵円形〜広楕円形で、長さは5〜12cm。 基部は深い心形となり、表面は暗緑色で鈍い光沢があります。 白色または淡緑色の斑点があることが多いです。 葉の表面の脈は凹みますが、それが著しく目立つというほどではありません。 葉の縁にはやや密に、表面にはごくまばらに微毛が有りました。 とても短い毛なので、写真ではわかりにくいかも知れません。
1つの株は大人の手と比べると、だいたいこんな大きさです。 花は葉をかき分けないと見えないことが多いです。 花は地面に接するほど低い位置につきます。 半ば埋もれるようにして咲いていることもあります。 色合いはかなり地味な暗紫褐色です。
花は直径約3cmで、葉柄の基部につきます。 萼は3裂し、裂片は卵状三角形で、大きく波打つのが特徴です。 萼裂片の内面には、短毛が密生しています。 萼筒の入口には環状のつばがあり、その外側の白っぽくブツブツした多数の突起がとても印象的です。
雄しべは12個、花柱は6個あります。 花柱の上部は2裂しません。 また図鑑には「花柱の先は、やや鉤形(かぎがた)に曲がる」とあるのですが、それが明確にわかる写真はまだ撮影できていません。 上の写真で萼筒開口部の中に見える白っぽく線状の部分が花柱の先と思いますが、上から見ているので、鉤形に曲がった様子は明確にはわかりません。
花の側面です。 図鑑には「萼筒は先がやや開いた筒型」とありました。 しかしあまり開いたように見える花は少なく、観察した花はほぼ筒型に見えました。 写真「花の側面-4」を見るとわかりますが、萼裂片の外側には毛がありません。
花の側面の写真は良いものがなかったので、数で補おうと4枚並べました。 小さいですがクリックすれば拡大します(スマホはタップとピンチイン・アウトで拡大縮小)。
葉柄の色は暗紫色〜淡緑色と変化に富みます。
2020年4月14日に、国立科学博物館 植物研究部 多様性解析・保全グループ研究主管の奥山雄大先生が、日本の植物多様性を代表するカンアオイ類ほぼ全種の進化の道筋を解明したとする論文を発表されました(2020年4月14日刊行のAnnals of Botany誌(イギリスの植物学国際誌・電子板)に掲載(発表)。 興味がある方は、下の紹介ページや、奥山先生ご自身による動画をご欄になってみてはいかがでしょうか。 カンアオイの仲間に興味がある方は、必見です(最終閲覧:2020.05.14)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000047048.html
https://www.asahi.com/and_M/pressrelease/pre_11750198/
奥山先生には、当サイトに掲載した4種のチャルメルソウ属(コシノチャルメルソウ、コチャルメルソウ、タキミチャルメルソウ、ミカワチャルメルソウ)のページを見ていただいたり、また多くの論文を参考にさせていただくなど、大変お世話になっております。 今回日本のカンアオイ属についての大変な研究成果を発表されたと知り、さっそく当ページとカンアオイ属のいくつかのページに情報を追加させていただきました。
2015.11.15 掲載
2020.05.14 国立科学博物館 奥山雄大先生の論文の情報と動画を追加
ナカジマ (火曜日, 13 4月 2021 11:47)
初めてご連絡します。
当方の近くの山が太陽光発電システムの設置のため、今年から開発&皆伐の憂き目に見舞われます。その山中に、タマノカンアオイが無数(1万株以上)に自生していますが保護をするにしても、大量にある為人力が足りません。
もし宜しければ返信をお願い申し上げます。
造成場所のすべての植物に関して、採集許可は、私が太陽光発電設備の事業者から頂いて居ます。
場所は埼玉県飯能市南部に成ります。
返信が頂けましたら、詳しい情報をお伝えします。
ナカジマ (火曜日, 13 4月 2021 11:50)
追伸、
こちらはメール等で連絡出来ないので、このコメント欄に返信下さい。申し訳ありません。
Ken (火曜日, 13 4月 2021 12:26)
あまり報道されませんが、太陽光発電システムの環境へのインパクトは大きいですね。 当サイトの「ごあいさつ」のページからメールをお送りいただけます(公開されません)。